ひきこもりのうた

閉め切った部屋の八月のよるに

今日初めて雨の降っていた事を知る

外は救急車が走っている空いた窓から

ぽたぽたと雲の歩いてる音がする

  あした僕は八十二円切手を求め

   きっと二ヶ月ぶりに外に出るのです

    久しぶりに鏡の反射を見た

     髭や髪も伸び放題、目やに

      シャワーだって碌に浴びてない

     部屋はゴミだらけ通販の

    段ボール箱が部屋を埋め尽くしている

   伝達にはその容れ物と副産物を伴い

  封筒を部屋じゅうひっくり返して探したよ

   外で酔っ払いのカップルが叫んでる

    薬物なしでは叫べないのか

     隣の部屋から壁の叩く音のする

      唯一のコミュニケーションそういえば

       声を出すのはいつぶりだっけ

      文字を書くのも久々で口は味気ない

     日々の食事を摂るのみに使い

    手は震え目は近くなり胃腸は

   その機能を最小限に留めている

  昼間外に出るのはいつぶりかしら

   太陽が眩しくないといいな月ですら

    僕の肌や目を焼き尽くす勢いで紫外線

     近所の店のLEDライトは壊れているといいな

      履歴書を書かなきゃ来月からアルバイト

       にんげん金が無くては生きてゆけぬ

      弱肉強食の白くて大きな人食主義者が

     浅黒い肌の子供たちを並べて端から犯す

    妄想で空想してそして夢精している

   現実逃避のひとつの手段でモニタ

  脳味噌を焼き尽くして夜も眠れず

 もし夜が明けたら睡眠薬を買いに

  通信販売をしようかな配達員

   になりたかった伝える人に

    誤解ばかりで生きてきた

     齟齬だけで話してきた

      祭り嫌いの人間嫌い

       嫌われてるのは僕

        未来はあるかな

         今となっては

          後悔ばかりがあるから包丁を持って僕は明日

          アルバイトを始めるために生きてゆくために

          調子の狂った祭囃子の雑音を通り抜けながら

          幸福の恋人どもを刺殺し犯し踊り喰いながら

          コンビニエントなストアへと向かって邁進し

          きっと八十二円切手を手に入れてその裏側を

          舌で舐めて封筒の左上に貼り履歴書を入れて

          住所を書き赤い赤いポストに投函するのです

          郵便局員は短銃で武装しており人非人の僕は

          殺されても仕方ないアア睡眠薬が効いてきた

          それとも火酒かしら一緒に飲み下した抗鬱剤

          頭はぐるぐるとして世界は回る回る愛と平和

          雨が降っているのに笑顔の人がいる虹が出る

          いっぽうで晴れているのに仏頂面の辛気臭い

          涙も枯れてる人間が独り嗚咽しておりそれは


                  埃まみれの姿見に映る僕だ

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