第23話 汚れたあたし

なんで急にフキさんに話す気になったんだろう?

気がついたら、ざっくり自分に起きたこと話してた…。


思い出す、いつからあたしはこんなイカれた子だったんだろう?

物心ついたときには、もうパパって呼べる人がいなかった。

だいたいママと二人暮らしだったけど、しょっちゅうちがう彼氏連れ込んでた。

ちっちゃいときはつらかった、だいたいママの彼氏に殴られたり蹴られたりしたから。

ママにとって何番目のオトコかわかんないけど、小学校3年生くらいのときにやってきたパパは優しかった。

「えるちゃん、オレのことパパと呼んでいいからね」

そんなこと言ってくれたの、あのパパだけだった。

これまでのママはオトコ取っ替え引っ換えだったけどやっと一人に落ち着いて、初めて『パパ』と呼べる人ができて嬉しかった。

髪を金に染め、ガタイが良くてカッコいいパパで大好きだった。

なんの仕事してるかよくわかんないけど、

肉体労働で疲れてるはずなのに、いつも遊んでくれた。

クラスメイトのママさんたちからカゲで色々言われても、平気だった。

あのころが一番しあわせだったかもしれない。


いつからだろう、パパのあたしに対する態度が変わったのは…?

小5になったばっかのとき、お風呂から出たらいきなりパパが立ってたことがあった。

なんとなく恥ずかしくてバスタオルで隠そうとしたけど、まにあわなかった。

パパはあたしのカラダをまじまじとガン見し、

『成長してきたな』小声でささやき、すーっと撫でてきた。

優しく撫でられたけど、成長しかけのオッパイはつんと痛み、あたしはカラダを丸めた。

『ごめんな、痛かったか?』今度は下半身に手を伸ばしてきた。

あたしはショックで怖かったけど、同時に不思議な感覚におそわれた。

あたしがちっちゃいときからママは平気でオトコ連れこんでヤってたから、

なんとなく早くから男女カンケーのこと知ってたけど、

そのときはまだ保健体育の授業を受ける直前だったから、それがなにを意味するのかわからなかったし、第一まだ子供のあたしのカラダをなんでさわるのか、ワケわかんなかった。


それからパパはちょくちょくママの目を盗んであたしのカラダをいじりまくってきた。

最初はへんなかんじになるからイヤだったけど、だんだんそれを楽しみに思うようになっていた。

ママには内緒の遊びをしてる…ってかんじもあったけど、

心のどっかですごく悪いことしてるような気もした。


お風呂あがりにさわられてから実際やっちゃうまで、そんなに時間かかんなかった。

小学校5年生の夏休みに入ったばっかのころだった。

そのときのあたし、もうガッコの授業で男女のカラダのちがいや生理のコト習ってた。

ママはあたしが小ちゃかったころからオトコ連れ込んでヤッてたからエッチのコト知ってたケド、それが赤ちゃんできる行為だということ、はじめて結びついた。



『ママはもっと赤ちゃん欲しいの?もしかしてパパはあたしに赤ちゃん産んで欲しいの?』



そのころのあたしはまだおバカだったから性欲のコトよくわかんなかった。



その日ママは夜のお仕事で帰りが遅かった。

暑い日で、友達とプールから帰ってくると家の中にパパがいた。



「あれ?今日お仕事は?」



黒いTシャツに柄モノの短パンから伸びたパパの足はよく日に焼けていて、

ほどよく筋肉がついてカッコよかった。

あたしを見るとニヤっと笑い、抱きついてきた。



「おかえり、えるちゃん」



そう言ってあたしの耳にフーッと息を優しく吹きかけてきた。

それだけでなんだかクラクラしてきた。

あたしは手に持っていた水着の入ったバッグをぽとりと床に落としてしまった。

パパの動作がだんだん激しくなっていった…。

怖かったけど、なんかすごいヘンな気持ちになって、その場にペタリと座り込んでしまった。



「怖くないからね」



パパの鼻息は荒かったけど、優しく声をかけてくる。

そのままあたしのアタマはボーっとしてきて、なにも抵抗ができなくなった。



気がついたら、パパに服を全部脱がされてしまっていた。

あたしは恥ずかしくてカラダを隠し、

パパはそんなあたしを優しく抱きしめた。

怖いと思う反面、大きなカラダに抱かれる安心感…。

大好きな人に求められる嬉しさ反面、なんだかママには悪いと思うキモチ…。

そして、これからするコトはあたしにはまだ早すぎてイケないコトなんだっての、

アタマでわかっていた。



――まだ生理もきてないのにな――



アタマのすみでぼんやり考えたけど、そのうちなにも考えられなくなった…。


コトが終わったあと、かなりショックでただただ怖くて泣くしかなかった。

その日あたしはシャワーを浴びたあと、早く布団に入った。

ママの帰りはだいたい夜中だから待ってらんなかったのもあったけど、

なんだか顔を合わせたくなかった。


次の日あたしは、友達と遊び行く予定をキャンセルした。

その日もママは朝から出かけて家にいなくて、あたしがちょっとヘンってコトに気づいてなかった。


その後ちょくちょくママの目を盗んではパパとのカンケイは続いた、最初あった罪悪感はいつのまにかなくなり、"自分はオトナのオンナになったんだ”とカンちがいするようになっていた。



……なんであのとき、逃げられなかったんだろう?……



モノを考えるチカラがなくなってたように思う。




はじめての生理がきたのは、二学期入ったばっかのころ。



「これからはゴムつけなきゃな」



なんだかパパはガッカリしてた。

このときはもう、赤ちゃん欲しくなくてもヤリたくなるものってわかってて、

デキたらヤバいよねって思ってた。



ママがいないときやってて、そのうちパパはケータイで撮影するようになってた。

ホントはイヤだったけど、やめてと言ったら嫌われそーで怖くて言えなかった。


中学入ってから、他のオトコともやらされるようになった。



「他のオトコともヤッてみないか」



そー言われたときホントはイヤだったけど、

大好きなパパの言うことなら、なんでも聞いたかった。

あとでわかったんだけど、パパはあたしを売っていたみたいで、そのお金でアソんでたらしい…。


ママはあたしとパパのコト、全く気づいてなかった。



「えるちゃん、最近セクシーじゃん!オトコでもデキた?」



ちょっとは気づいたみたいでギクっとしたけど、



「エヘヘ…」



笑ってごまかした。

ママはあたしがフツーに同い年くらいの彼氏できて処女でなくなった、と、思ったみたい。

それから渋谷で一緒にショッピングしたとき、一緒にナンパされんの楽しんだりした。


パパがあたしとの行為を動画に撮って売っていたと知ったとき、すごいショックだった。

わかったのは去年の夏休み。

ケーサツにバレて色々タイヘンなことになった。



「どーいうコトなの!?」



その日転校生でクラスメイトだったコと遊んで家に帰ったら、いきなり鬼のように怖い顔したママに両肩つかまれそのままカベにガンガン打ちつけられた。



「!?」



当然、なんのことかわかんない。

カベに打ちつけられたアタマが痛くて、クラクラした。



家の中にはケーサツがいっぱい来てて、段ボールに色々つめてた。



「お母さん、落ち着いてください。この子は被害者ですよ」



婦人警官があたしを庇ってくれた。



「被害者ヅラすんじゃねーよ、このドロボー猫がっっ!」



ママはそう叫んでまたあたしに飛びかかろうとしたけど、他の警察官に取りおさえられてた。



それからのことはよく覚えてない。

なんか産婦人科で色々検査されたり、警察官だけでなくよくわかんないエラソーな人達に色々質問されたりで、思い出したくない。

気がついたら施設みたいなとこ入れられたけど、なんでかあたしだけ個室だった。


本当は…エンコー常習犯でサギ?みたいな疑いあって、悪質とされ鑑別所へ送るかどうか…って話も出てた。

パパがあたしを売ったお金の売り上げのうちいくらかお小遣いとして受け取ったり、パパに紹介されたオトコとヤリたくないとき逃げていて、それでもパパは事前にお金もらってたりしてたのでここが引っかかってたみたい。

ママと一緒にナンパされたときにお金だけ払わせて逃げたことは後々バレたみたいだけど、あくまでもごはんおごらせただけだったから罪には問われなかったみたい。



「本当にあなたはなにも知らなかったのね?」



弁護士のオバさんに色々きかれ、はじめてひどいことされてたんだってわかった。

あたしとのエッチの動画が公開されてたっての知ったのも、このとき。

弁護士のオバさんに言われたこと信じらんなくて、こっそり調べた。


パパのこと大好きだったからしてたのに、タイトルに『援交女子中学生』とか色々ひどいタイトルつけてて売ってたのが、すごいショックだった。


――これじゃあたし、オモチャあつかいじゃん…――



思い出すと、どっかのオヤジとの行為終わったあと、おこづかいとして万札をヒラヒラとカラダの上に落とされたことあったけど、そのときはヒドいことされてるって思わなかった。



動画のコメ欄もひどかった。


だいたいが“ヤリたい”みたいなコト書いてあったんだけど、あたしのこと知ってる男子らしきモノがあった。



『コイツ知ってるわwまじクソビッチじゃんwww』

『新学期はじまったらやらしてもらうかマワすか』

『なんだアイツ公衆便所かよ』

『キタねーな、ゴミ以下じゃん』



動画の流出で、誰とでもやるオンナって思われてたみたい。

それまでのあたし、ずっと“オトコに求められるいいオンナ”とカンちがいしてたけど、こうなってはじめて“オトコにとって都合の良いオモチャ”扱いされ必要とされてたワケじゃないんだってわかって、恥ずかしさのあまり死にたくなった。



とどめは、唯一トモダチだと思ってたコに『もう連絡してこないで』ってメールきたことだった。

あたしんちにケーサツがきた日も一緒に遊んでたコだった。

あの日トモダチが家出したいって言うから、“神待ち”ススメちゃったんだよね。

マジメなコだったから拒否られたけど、じゃあ…ってことで渋谷でオッサン引っかけてごはんおごらせそのままズラかろうとしたんだよね。

運悪いことに、トモダチは逃げきれずオッサンに捕まっちゃったみたい…。

たまたまトモダチがSNSで知り合ったとかいうおせっかいなオニーサンに助けられ無事だったみたいだけど、すんげー怒ってていくらあやまっても許してもらえなかった。


そのコの最後のメールが忘れらんない。



『動画のこと聞いたよ。信じらんない!絵留美ちゃんがもう処女じゃないって知ってたけど、本当にエンコーしてたなんて…。ハッキリ言ってキモいし汚いよ!だから平気で今日あんなことしたんだね…。おんなじと思われたくないから、もう二度と連絡してこないで!』



ママはすごい気分屋で、機嫌のいいとにだけあたしをかわいがり、あとはスルーって人だった。

だから、パパやオトコに求められるのは、自分が必要とされてるようですごい嬉しかった。

それが単なるハケぐちだったとわかっちゃったときの絶望感、あんなにあたしを求めてきたオトコたちてさえ、内心あたしをバカにしてたのかもって気づいてからが地獄だった。


死にたい、今すぐ…。


フキさんのカラダになってしまった今、

リスカはできない。

でも、もうじき死ねるかもしれないカラダに入れ替わったから、もうじき願いが叶うのかもしれない…。












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