第2話 ドラゴンライダー
明くる朝――といっても太陽は天球の頂点付近を回るばかりだが――、リオは村のすぐ裏手まで迫る森に出かけた。
カーの森はこの世界では一般的な森林、すなわち
どうやら知らないうちに巣の近くまで踏み込んでしまったらしい。リオは彼らを刺激しないようそろそろと後ずさった。しかし、蜂の無機質な複眼はリオの姿を捉えて離さない。
ふいに後ろから風を切る音が聞こえた。とっさにしゃがみこんだリオの頭上を何かが薙ぐ。
次の瞬間には、蜂は竜尾の一撃に吹き飛ばされバラバラになっていた。
「危ないじゃないか、ヴェル。」
「ぐるるるる〜(リオこそ危なかったんじゃないのか?)」
ウェルリアデスは相棒にそう答えた。
竜はねずみびとの言葉を理解できる生き物だ。しかし発する事はほとんどない。これは身体の構造に依るものである。その代わりかれらは独自の言語を持っている。
リオのようなドラゴンライダーはその唸り声から意味を読み取れる。いや、竜語を解する者のみがその乗り手としての資格を持つのである。
ウェルリアデスは斃した蜂をモグモグとやっている。リオがなんとなく眺めているとそれに気付いた竜が話しかける。
「(食べる?)」
「いや、いいよ。」
「(おいしいのに。)」
「えーっ。」
「(でもねずみびとだって蜂蜜はたべるでしょ?)」
「そうだけど……。」
リオはヴェルの種族の食性は理解しているが、それでもやはりなかなか慣れないものであった。
「ヴェル、そろそろ帰ろう。今日のうちに街に戻らないといけないし。」
「(もう少しのんびりしたかったんだけどなあ。)」
そうは言いつつも、ヴェルは少し嬉しそうだった。この竜は相棒とともに飛ぶことが何よりも楽しいのだ。
カーの村に戻ったリオは簡単に食事を済ませると荷物をまとめ、相棒の背に飛び乗った。
「なんだもう行くのか。忙しないのう。」
様子を見に来たミトはそう言うが、孫はいつもこんな調子だ。
「なに、どうせまたすぐ戻るさ。」
「そうだな。よし、これを持っていきなさい。」
ミトはやや淡い青の結晶のついたペンダントを差し出す。
「じぃちゃん。俺は魔法は使えないんだよ。」
「わしの孫だ、使えないことあるまいよ。今はお守りとでも思って持って行きなさい。」
「はいはい。」
そんなことをいいながらそれでもリオは一応使い方をきいておいた。
デー・ルーの街までは半日かかる。魔法の試行もその間の暇つぶしくらいにはなってくれるだろう。
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