第2話 愛しのオオカミさん
お父さまもお母さまも、「狼は人を食べてしまうから、森に行くとき気を付けなさい」なんて言うけれど、そんなのは嘘よ。だって、人を殺すのは人間だって同じだもの。狼だからって危険だと決めつけるのは間違ってるわ。そもそも人間みたいに殺してるんじゃないわ、あっちだって生きるために食べてるだけなのよ? だったら私たちは他の動物を食べるからって避けられたりする? しないでしょう? それに私だって練習したんだから、一人前に猟銃だって使えるもの!悪い狼が出たって、一発で仕留めてあげる!
今日も森へお散歩に出掛けるの。
お母さまったら、私が夜更かししただけでカンカンに怒るのよ! 信じらんない。私だって年頃の女の子よ、夜にゆっくり考えたいこともあるに決まってるじゃない! 月のキレイな夜に、物思いにふけるなんて、それだけで絵本のなかのお話みたい。 夢見る女の子ってカワイイじゃない、やってみたいじゃない! だから、夜も明けきらないうちに家を出たの!もちろん、とびっきり可愛いスカートを着て、おめかししてね。
いつもよりちょっぴり大きな歩幅で、冷たい風を正面から浴びるの。わたしをカッコよく見せてくれてるみたい。スーパースターも逃げ出すくらい、ステキにキマってる! ああ、こんなことならお父さまも誘ってあげてればよかったかしら。きっと私に惚れちゃうわ!
赤い木の実がある道を選んで歩いてたらね、私、出会っちゃったの!運命の相手に!
一目見ただけで運命だってわかったわ。びびびって、鳥肌が立ったわ!
瞳は今まで見たことあるどんな宝石よりもキレイにきらめいて、その毛並みは触ってみたくてウズウズしたわ。鋭いって聞いていた牙は隠れていて、貴方も、まさかこんなところで自分以外がいるなんてってびっくりしてるんでしょう? 私も一緒よ、お揃いね!
誰もがみんな貴方を恐れるの。
誰もがみんな貴方を悪と決めつけるの。
その瞳が映す世界も、その身体の中心で脈打つ心臓も、私たちと同じでしょう?だったら、貴方も優しい心を持ってるわ。
占いでもいってたもの。今日はわたしの世界がガラッと変わる日だって!
頭の固いお父さまにもお母さまにもうんざりなの! よく言うじゃない、えーと……「可愛い子には旅をさせよ」だったかしら。
ねぇねぇ
「オオカミさんオオカミさん、私と、駆け落ちしましょ?」
きっと、どんな絵本より素敵なお話が待ってるわ!
そんなに警戒しないでちょうだい、……あは、やっぱり貴方も温かいのね!
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