第4話 包容力のある癒し系女子



 近藤さんは、小さく笑みを浮かべながら続ける。

 包容力を感じる。

 癒し系女子な。


「私ずっと前から一番大事な時では判断を間違えたくないって思ってましたから」

「ええと、それ以上聞いても良い話?」

「はい」


 重たい話だったら、耳塞げるよ。

 という意味で言ってみたのだが、即答されてしまった。


 本人の許可があるなら良いけど。


 これでも俺遠慮はするんだぜ?

 微々たる幅だけど。

 

「実は、小さい時から……子供の頃から後悔がないように生きなさいって両親に言われてきたんです。私生まれる時にちょっと危なかったらしくて、お母さんもお父さんも覚悟してたんです」

「……」

「でも、本当に色んな人が助けてくれて、そのおかげで私は無事に生まれてこれたんです。お母さんとお父さんはその時の事を、何度も奇跡だったんだって言い聞かせてくれて」


 その時の事でも思い出しているのか、近藤さんはどこかへと視線を向ける。


「そのおかげで、こうと決めた事があったら躊躇わないようにしようって思ったんです。私結構直観に基づいて考える事多いんですよ。こう見えて」


 へぇ、そんだったん。

 とてもそんな風には見えなかったし、見えないけどな。


「人知れず、日の当たらないところで頑張ってる人の事が好きなんです。将来も、そういう力になりたいなって」

「立派なもんだな」

「ありがとうございます。でもまだまだですよ」


 嫌々そんな事ないって。

 俺達の年代でそこまで考えてる奴なんていねーよ。

 

 いても、理沙とか水菜とかアルシェぐらいで……。

 あ、結構いたな


 とりあえず近藤さんの両親がとても良い人だと言う事は分かった


 近藤さんは見た目は凄く普通な御嬢さんなんだけど、心構えが何ていうか普通じゃないらしい。


 なんかまぶしいよな。

 

 普通じゃないなんていって、不満垂れてた過去の自分が恰好悪く思えてくる。


「普通なんて、人それぞれだもんな」

「?」

「いや、こっちの話」


 あたりまえの日常であっても、その日常を大切にして、一日一日を生きている人がいるのだ。


「恰好良いぜ、そういう生き方って」


 親指立ててグッドのサインだ。


 とても俺にはできない生き方だ。

 できなかったから、こんな性格なんだけどな。


 でも、そんな生き方に卑屈になったり僻んだりするような事はない。

 それぐらいの成長は俺もしてると思いたいなぁ。


 ……なんて思ってたら、近藤さんは俯いてしまった。

 ちょっと顔が赤いように見えるけど、気のせいだよね?

 隣にいるの俺だし。


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