第3話 仲間が一人増えました



 気の迷いでした、何て事にはならなかったらしい。

 後日、近藤さんは正式に抗体組織のエージェントになる事になった。

 意地張ってたってオチにしても、良かったのに。


 意外と根性のあるお嬢さんだったらしい。


 それで彼女は、事務面で活躍する方向で頑張って行くらしい。

 ちょうど先日のごたごたで芋づる式に発覚した、まぎれこんでいた密偵やらなんやらが大量に解雇されたので、その抜けた穴を埋めなければいけなかったみたいだ。

 一応組織としては渡りに船だったらしい。


 そういうわけで最初に助けた俺が、新入りに組織について説明したり建物の中を案内したりする事になった。


 ついこの間入ったばかりの俺がもう先輩になるって言うのも変な感じだな。


 会社みたいな建物の中を、学生二人が歩くってのはちょっと新鮮というか、違和感だけど。

 もうなれた。

 全体からみれば少ないけど、俺達みたいなガキもいないことはないしな。


「えーっと、こっちは視聴覚室だ。たまに外国人のアルシェが居座ってたりして危ないから中には入らないように。トラップとか発動して危ないから」

「はい!」

「で、こっちをまっすぐに行くと食堂。学生の俺達はほぼ使わないとこだけど、長期間任務やるときはお世話になるっぽい。呼び出された時とかも」

「はい! 分かりました」


 案内するとこ説明してくと、元気よくお返事だ。


 張り切ってるなぁ。

 ちょっと緊張してるけど、やる気に満ち溢れてるって感じだ。

 フレッシュな新入社員を相手してる、案内係の気分だ。


 俺の時はあんなんじゃなかったな。

 なんか、最初にみた現実が重すぎて、厨二展開きたーとか素直に喜べなかったし。


 でも、近藤さんも恐ろしい目に遭ったのは同じ名は図何だけど、何でこんな違うんだか。


 俺の周りにいる女子は逞しい子しかいないのかね。


 主要な部屋が途切れた頃合いで、一応先輩っぽく確認をとってみる。


「えーっと、規則の方は覚えてる感じ? 契約書とか書かされただろ? 備品の購入は後でするみたいだって聞いた?」

「大体は大丈夫だと思います、説明された時にメモをとったので」


 おお、優秀だな。

 大人しい上に、優等生か。


 水菜側の人間だな。

 でも、ちょっと自信があるところが違うよな。


 水菜は自分の能力を客観的に見てるところがあるけど、「できるやれる!」ってかんじにはならないし。


 そこまで行って話が途切れたので、前々から気になっていた事を尋ねる。

 

「あー、気を悪くしたら悪いんだけど、即決で組織入って来たけど……何でなんだ」


 むしろ案内よりそっちが本題だ。

 気になって気になってしょうがないったら。


 近藤さんは、質問される事が分かっていた様だ。


「あ、やっぱり不思議ですよね」


 苦笑しながら口を開いた。

 お、結構かわいい。

 いやちゃうんです、そういうアレじゃないんです。

 一般的な感性ですん。


「まあな、自慢じゃねぇけど、俺の時はちょっと悩んだし」


 はい、見栄はりました。

 大分悩んだけどな。

 でも言わない。

 だって男の子だもん。恰好つけたいんだよ。


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