第5話 誕生秘話・Ⅳ「訪問者」

 鬼ノ子山の御堂に戻って来たアキラが、いつもの場所に腰掛け、村の夕景を眺めていた。

アキラ「(モノローグ)立派になったな、陽昇…愛…」

 アキラに突然、影が襲い掛かった。アキラは辛うじてかわした。

アキラ「・・・!」


N「襲い掛かる影! アキラはすんでの所でかわしたが…」


 アキラは草叢から影の気配を伺った。

アキラ「(モノローグ)…おがしい…なんも殺気感じね…」

 アキラはさらに気配を伺うが、意を決してゆっくり立ち上がった。紙一重でアキラの体をかすって数本の鋭い刃先が古樹に刺さった。

アキラ「(モノローグ)五寸釘! …これを使いこなせる人間てひば…」

 アキラは怯まず凶器の飛んで来る方向に向かってゆっくり歩き出した。突然、眼前にナイフが飛び出した。一瞬早く、アキラは影の後ろに立った。影の咽喉下にはアキラのナガサが当てられていた。

影  「なしてトドメ刺さねしか…」

アキラ「正体の分がらね者は、むやみに殺生はでぎねべ…それに、おめだば、わざど隙ば作ったべ。一体、何者だ」

影  「鎌沢丈雄どいいます」

アキラ「鎌沢?」

 アキラはナガサを杉鞘に納めた。

丈 雄「あんだは噂どおりの人だしな…私はこの目で確かめたがったえた」

アキラ「なしてオレば確かめる…」

丈 雄「力っこば貸しもらえねべがど思ってな」

アキラ「誰に聞いで、こごさ来た?」

丈 雄「ジッチャだし…私の…」

アキラ「ジッチャって、もしかして滝次郎さんの事でねが?」

丈 雄「んだし…オレ、孫だし!」

アキラ「お孫さんだったしか! しっかり大人になって…」

丈 雄「ジッチャがらマタギラーさんの事…あ、いや、松橋さんの事はワラシの頃がら聞がされで育ぢました。鬼ノ子村マタギに大した若衆わげしゅが入って来たって、めずらしぐジッチャが興奮してだのば覚えでます」

アキラ「飛んでもねった。滝次郎さんごそ、『仕掛けの滝次郎』ちってな、罠を張らひれば右に出る者は居ねがったもんだ」

丈 雄「…んだしか…ジッチャは自分の事はなんも言わねがったがら…」

アキラ「そういう人だでば、あんだのジッチャは…憧れだもんだ。滝次郎さんみでぐなりてなど思ってな」

 アキラは樹木に刺さった五寸釘を抜いた。

アキラ「この “釘ヌキ” の技は?」

丈 雄「ちっちゃいじぎがら、ジッチャに教わりました」

アキラ「んだしか、やっぱり…して、滝次郎さんは元気だしか?」

 丈雄の表情が曇った。

アキラ「どした?」

丈 雄「ジッチャは…オレの弟の六郎ば助けに行ぐって出だまんま帰って来ね」

アキラ「六郎さんば助けに? 六郎さん、どうがしたのが?」

丈 雄「長男のオレがしっかりしねがら…」


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 丈雄の回想。

 丈雄が出掛ける支度をしている弟の六郎と言い争いをしていた。両親があたふたとする中、祖父の滝次郎は釘を研ぎなら無言で聞いていた。丈雄は出て行こうとする六郎の腕を掴んだ。

丈 雄「待でって、六郎!」

六 郎「なんぼ話しっこしたってジェンコ(お金)生まれるわげでもねべ。そったら暇あったら森吉に働きに行ぐほがよっぽどえべ!」

丈 雄「落ぢ着げでば、六郎! 桜庭土建の仕事は、あまりええ噂立ってねえべ! 何人も働きに出で帰って来ねぐなってるべ!」

六 郎「アンチャに行げって喋ってねべ。オレが勝手に行ぐ事だ。このボロ家直すジェンコ稼いだら帰って来るがら」

丈 雄「帰って来れねぐなったらどうするんだ、六郎!」

六 郎「帰って来るでば! しじくんでな、アンチャは!」

 六郎は丈雄の腕を振り解いて出て行った。滝次郎は無表情で釘を研ぎ続けていた。


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 元の鬼ノ子山の御堂。

丈 雄「桜庭の会社に建設現場ば聞いでも何も教えでけねし…六郎の事も “そういう人は働きに来てない” の一点張りで…」

アキラ「それだば不自然だしな」

丈 雄「カッチャもトッチャもショックで毎日ボーっとしてしまって…」

アキラ「気の毒にな…」

丈 雄「六郎ばひとりでやるもんでねがった…」

アキラ「弟さんを捜す当でっこでもあったんだしか?」

丈 雄「なんもねがったども、3日経っても帰らねもんで、ジッチャが捜しに行ったし。そのままジッチャも帰って来ねもんで、警察に届げだども、なんも動いでけねもんで…これ以上、黙ってるわげにも行がねふて、友達に相談したら、一緒に捜しに行くべどいう事になって…」

アキラ「ありがで友達だな」

丈 雄「オレが甘がった…仏さ仕える身でとんでもねごどになってしまった! 取り返しの付がね事になってしまったんだし!」

アキラ「・・・!」

丈 雄「オレ、どうひばえんだが!」

 丈雄はがっくりと座り込んだ。鬼ノ子山の御堂に夕陽が射してきた。クマゲラが御堂の古樹の巣に戻って来て雛に餌を与えた。

アキラ「とにかぐ落ちづいで、何あったがしゃべてみれ、丈雄さん!」

丈 雄「・・・」

アキラ「居ねぐなってがら、どれぐらい経ぢしか?」

丈 雄「一ヶ月経っても音沙汰なしで…一昨日おどで、仕方ねぐ友達三人ど…昔、ジッチャに山菜取りに連れで行ってもらった森吉の東側に…したら山中に巨大な基地みでのがあって…」

アキラ「基地!」

丈 雄「んだし…そごで友達がみんな…」

アキラ「・・・!」


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 丈雄の回想。

 丈雄が三人の友人と森吉山中を歩いていた。

孝 弘「こっちさ来た事ねな」

宣 雄「オレもだ」

文 男「オレだば大分前に営林署の仕事で何回が来たども…何となぐ違うな」

宣 雄「違うって、どう違うえた?」

文 男「そう言われでも何となぐだんてな…」

 孝弘がいきなり前にのめって倒れ、動かなくなった。

丈 雄「孝弘、どした? 躓いだが?」

 宣雄は笑いながら起こしに行った。

宣 雄「ふざけでねで早ぐ起ぎれでば!」

 宣雄が孝弘を仰向けにすると、眉間に開いた小さな穴から血が噴出していた。宣雄は驚き、孝弘をその場に放って後退りした。

丈 雄「みんな草むらさ入れ!」

文 男「なして?」

丈 雄「ええがら急げ!」

 丈雄に続いて一同は草むらに身を沈めた。

丈 雄「…あっこ見でみろ」

 文男と宣雄は、丈雄の指す先に目をやると、樹木の枝に武器らしきものが装備された隠しカメラが作動していた。

文 男「なんだ、あれ?」

宣 雄「あれでやらえだえったべが…」

 丈雄は、腰に下げた携帯の蚊取り線香を獣道に放った。瞬時に光線が当たり、穴が開いて破損した。

丈 雄「熱に反応するみでだな」

文 男「孝弘は汗っかぎだんてな…」

宣 雄「どうする?」

丈 雄「帰るべし…」

文 男「六郎ばどうする?」

丈 雄「孝弘がこんた事に…オレのせいで…おめだぢにまで迷惑掛げでらえね!」

 人の気配がするので、三人は警戒した。ゾクギ団・黄、ピンク、青が配下の戦闘員2人を従えてやって来た。三人は息を殺して潜んだ。戦闘員らは孝弘の遺体を発見すると、辺りを探っていたが、誰も居ないと判断して遺体を運び去った。

文 男「なんだ、あいづら?」

宣 雄「後、つけるべし」

丈 雄「宣雄! 危険過ぎる、帰るべし!」

宣 雄「孝弘の遺体持ってがれで、このまま放っとげねべ!」

文 男「行ぐべし!」

丈 雄「文男、おめまで!」

宣 雄「六郎だば、絶対やぢらに捕まってる」

文 男「生ぎでるべが?」

宣 雄「文男!」

文 男「あ、ごめん!」

宣 雄「丈雄、気持ぢしっかり持でよ!」

丈 雄「宣雄…文男…こんた事に巻き込んでしまって、悪がったな。オレ一人で来えばえがった」

宣 雄「水臭え事言うもんでね! なんも、これだば町全体の問題だ。孝弘の仕返しだって、さねば帰れねべ!」

文 男「急ぐべ! これ以上離さえだら見失ってしまうんて!」

宣 雄「んだな!」

 三人は戦闘員らを追った。山で育った足腰で、間もなく先を行く戦闘員の姿を捉えた。一定の距離を保って後をつけ、巨大な建造物が見えてくる場所まで出た。そこには桜庭土建の社旗にあるクマゲラのデザインの旗がたなびいていた。

丈 雄「あの旗!」

文 男「桜庭土建の旗に似でるな!」

宣 雄「六郎が働いでるどご、間違いなぐ此処だべ」

 厳重な警戒でこれ以上は中に入れそうもなかった。

宣 雄「警戒厳しいな…」

丈 雄「しばらく様子を見るべ」

 三人は近くの茂みに潜んで様子を伺った。

文 男「孝弘の死体…どうなるえったべ」

 丈雄も宣雄も無言だった。

文 男「熊にでもひらえだら…」

宣 雄「今その話、しねくてもええべ!」

丈 雄「なんだ、あれ!」

 建物の一角に作業員らが入って行くのが見えた。

宣 雄「作業員だな! 町の人だぢが一杯えっぺ居る!」

文 男「六郎もあの中に居るべが?」

 一同は作業員たちの中に六郎を探した。

丈 雄「居ねな…」

宣 雄「建物の裏側に回ってみるが?」

文 男「んだな、どっちにしても此処からだば入れそうにねものな」

 丈雄たちは深い藪の中を、基地を遠巻きに進んだ。突然、藪の中の足場が消え、三人は落下した。丈雄だけはすんでのところでツルに摑まって堪えた。下を見るが真っ暗で何も見えない。


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 元の鬼ノ子山の御堂。

丈 雄「そごではぐれでしまって…」

アキラ「やっぱしな…」

丈 雄「え?」

アキラ「よぐ、生ぎで帰れだな、おめ」

丈 雄「松橋さんも知ってるえたしか、あの変な建物!」

アキラ「知ってるも何も…オレの人生をメチャクチャにした化け物だ」

丈 雄「・・・!」

アキラ「それがらどうなった?」

丈 雄「何とが穴がら這い上がって裏さ回ったら、ヘリコプターみでんた工場があって、そごでも知ってる町の人達が沢山働かされで…」

アキラ「弟さんは?」

丈 雄「いだし…生ぎでだし…町の人だぢに交じって働いでる姿ばこの目で確かに!」

 丈雄は声を詰まらせた。

アキラ「滝次郎さんは!」

丈 雄「…探ひねがったし…ジッチャ、居ねくて、こんたら危険なごど、松橋さんに頼めだ義理でだばねったども…」

アキラ「そごまで行げるしが?」

丈 雄「はい! 大丈夫だし!」

アキラ「んだば夜明げに出掛げるべし」

丈 雄「ありがどございます!」


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 日の出前の薄闇の鬼ノ子山で、アキラと丈雄は既に装備を済ませ、御堂で出陣の参拝をしていた。

アキラ「よし、行ぐど!」

丈 雄「はい!」

 二人は御堂を後にした。


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 アキラと丈雄は森吉山に入った。途中に張り巡らされた監視の武器をアキラの誘導で避け、次第に基地に近付いて行った。二人は基地の裏に出た。藪の向こうに見える一角で特殊部隊員を訓練していた。

アキラ「この警備の厳しさではひとり救出するだけでも難しいな。とにかく、中さ入って弟さんを探すべし」

 アキラのリードで二人は難なく基地内に潜入した。暗い通路をマタギの目で進みながら、乾燥したウサギの糞を目印に撒いて行った。ついに人足達が閉じ込められている一角を見つけたが、そこには二人のゾクギ団戦闘員・青、黄が見張りに立っていた。

アキラ「やるしかねべな、丈雄さん」

丈 雄「んだしな」

 五寸釘を握った丈雄の “釘ヌキ” の技が二人の戦闘員の喉元を一瞬で捉えた。アキラと丈雄は絶命して倒れる戦闘員を俊敏に受け止めて、暗がりの隙間に引きづり込んだ。

アキラ「中は独房になってるな…このまま入れば騒ぐ者もいるべ…着換えだ」

 二人は絶命した戦闘員の服装を剥いで着替え、自分たちの衣装を着せた戦闘員を引き摺りながら、独房の中に入って行った。

アキラ「みんな助けてども、手分げして先に弟さんば探すべ」

丈 雄「はい!」

 二人は通路越しに向かい合った独房の小窓を、ひとつひとつ覘きながら進んだ。丈雄が六郎のいる房を見つけた。

丈 雄「松橋さん!」

アキラ「居だが!」

丈 雄「こごだし!」

アキラ「滝次郎さんも居るがもしれねんて助け出す前に他の房も全部見ねばな…」

丈 雄「はい!」

アキラ「おめは、六郎さんの房にこの二人ば入れで、六郎ば出しておいでけれ」

丈 雄「はい!」

 アキラは奥に入って行った。丈雄は奪った鍵で房を開け、急いで戦闘員二人を房の中に運び込んだ。中にはやつれきった六郎が横たわっていた。

丈 雄「六郎!」

六 郎「・・・」

丈 雄「六郎! アンチャだ!」

 六郎はやっと気付いて力なく頷くのが精一杯の様子だった。

丈 雄「今、助けでやるんて、も少し待ってれ!」

 足音がするので、丈雄は房の中から覗いた。巡回らしき二人の戦闘員だ。丈雄は奥に居るアキラを押し殺した声で呼んだ。

丈 雄「アキラさん!」

 並んで歩く二人の戦闘員A、Bが、独房の間の隙間に倒れている戦闘員を発見して近付いて来た。戦闘員Aが手を掛けようとしたその時、倒れている戦闘員姿のアキラの鉄拳がその眉間を捉え、同時に六郎の捕らえられている独房から丈雄の五寸釘が戦闘員Bの眉間を捉えていた。

アキラ「急がねば! 手分げして滝次郎さんば探すべ!」

 全部の独房の小窓を覘いたが、滝次郎の姿は見つからなかった。

アキラ「仕方ねな…兎に角、弟さんば連れて一旦出るべし!」

 六郎のいる独房に戻り、連れ出そうとするが、六郎は一人で歩けない状態までに衰弱していた。

六 郎「アンチャ…勝手な事してごめんしてけれな…オレ、歩げね…オレば置いでジッチャば捜してけれ」

 六郎の必死の懺悔だった。

丈 雄「弱音吐ぐな六郎!」

六 郎「したどもオレのせいで…」

丈 雄「しじくんでな! 早ぐ逃げるべ…そうだ、六郎!」

六 郎「え…」

丈 雄「宣雄どが見ねがったが!」

六 郎「宣雄? 見ねども…宣雄どうがしたが?」

丈 雄「いや、なんでもね」

六 郎「ジッチャもこごに来たえたが?」

アキラ「おめば捜しにな…後で捜すんてとにかぐ、こご出るべし!」

 丈雄は六郎を肩に担いで房から出た。アキラは自分たちの服装をした戦闘員が横たわっている独房に鍵を掛けた。

アキラ「急ぐべし!」

 ウサギの糞を目印に引返し、最後の角を曲がった時、傷を負って脱走を試みているらしき数人の老人たちに出くわした。

老人1「助けで…下さい…」

 二人はその中に滝次郎を探すがいない。

アキラ「あんだがだは!」

老人1「見逃してください! こごから先どう行げばえったが分がらねふて…」

老人2「助けで下さい!」

 戦闘員の服装のアキラたちに助けを乞うのは無理もないと思ったが、アキラたちは助ける意思表示をした。

アキラ「(丈雄に)こんたどごでもだもだしてたら見つかってしまうな…」

丈 雄「とにかく一緒についで来てもらうしか…」

アキラ「(老人たちに)じゃ、一緒に付いで来て!」

老人3「待ってくなんひ! この奥にも仲間がまだ何人が居るんて、こごで待ってでもらえねべが?」

 アキラは迷った。

丈 雄「あの…誰が合川の宣雄ば見でねしか?」

老人2「見だ! 宣雄ば見だ!」

老人3「見だ、見だ! この奥に一緒に居る!」

 アキラに不審が過ぎった。

丈 雄「んだしか!」

アキラ「丈雄さん、先に脱出してもらえるべが? オレ後から追っかけるんて!」

丈 雄「一緒に行ぐんて大丈夫だし!」

アキラ「弟さんにあまり負担掛げねほうが…」

六 郎「心配ねしがら…」

老人3「ほんじねしな! 時間取らひねんて!」

 一同は老人3に促されて奥に向かった。突然、通路の後ろの扉が閉まった。老人たちがゆっくりアキラたちに振り向き、一斉に襲い掛かって来た。アキラはとっさにその老人3を捕まえて盾にし、集団を蹴散らした。

アキラ「どういう事だ?」

 老人1がゾクギ団・黄の姿になった。

ゾクギ・黄「こういう事だ!」

 老人2がゾクギ団・ピンクに…他の老人たちは次々と配下の戦闘員姿になった。

ゾクギ・黄「やれ!」

 戦闘員たちの銃が炸裂した。アキラが盾にしている老人3が銃弾を浴びて、見る見るゾクギ団・青の姿を現した。丈雄が戦闘員たちに五寸釘で応戦。その隙にアキラは、盾にしているゾクギ団・青の腰の銃を引き抜き応戦した。追い詰められながらも、後方の扉まで辿り着き、開けようとするが開かない。すると六郎が…

六 郎「アンチャ、やつの左手…」

 丈雄は、アキラが盾にしているゾクギ団・青の左手に妙な腕輪がはめられているのに気付いた。

丈 雄「アキラさん、そいつの左手がどうとか…」

 アキラがゾクギ団・青の左手首から腕輪を外して丈雄に投げ渡した。

丈 雄「これがどうかしたが、六郎!」

六 郎「あそこさ…」

 六郎は、追い詰められた後ろの扉の取っ手を指差した。丈雄がその腕輪を取っ手に当てるとぴたりと嵌って扉が開いた。盾にしていたゾクギ団・青を突き飛ばし、部屋を脱出すると扉が閉まって戦闘員たちの攻撃が遮断された。アキラたちは通路を急いだ。

ゾクギ・緑「こっちよ!」

 アキラたちが “アッ” となった。前方にゾクギ団・緑が立って手招きをしている。

ゾクギ・緑「こっち、こっち!」

 アキラたちは警戒しながらもゾクギ団・緑に従うしかなかった。ゾクギ団・緑は通路脇の死角になるエリアの前で止まった。

ゾクギ・緑「ここに隠れて待ってで!」

 そう言い残してゾクギ団・緑は通路に出て行った。間もなくゾクギ団・黄たちがすぐ前の通路までやって来た。

ゾクギ・緑「急げ!」

ゾクギ・黄「どっちへ行った!」

ゾクギ・緑「4番通路方向だ!」

 ゾクギ団・黄たちが走り去った。


×     ×     ×    ×    ×    ×    ×


 戻って来たゾクギ団・緑に、アキラはナガサを構えた。

アキラ「どういうごとだ…」

ゾクギ・緑「待って下さい! 私は…」

 ゾクギ団・緑は言葉が続かずがっくりと崩れ落ちた。アキラは自爆に警戒しながら、ゾクギ団・緑の覆面を剥いだ。女だった。

アキラ「おめは!」

女  「助けで…」

アキラ「百合!」

女  「私は…」

 ゾクギ団・緑の女はそのまま気を失った。見ると左足に銃弾を受けた大量出血の痕…


N「ゾクギ団の犠牲になってこの世を去ったはずの百合が…いや、百合とそっくりなこの女の正体は…またしても敵の罠に掛かってしまうのか! マタギラーたちはどうなってしまうのか!」




( 第6話 誕生秘話・Ⅴ「危うし、北秋田市!」 につづく )

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