出陣

 ずいぶんと遠くまできた。

 そこには、とてつもなく大きな砂丘と、今までと変わらない綺麗な青色の海が広がっていた。

「やっぱりか」

 僕の予想した通りだった。

「何がやっぱりなのですかマスター?」

サリナが良く分からないって感じで聞いてきた。

「ここまで来たら、さすがに染まっていないと思ってさ」

「たしかにここの海は綺麗な青色ですね」

「ちょっと泳ぎたくなるニャー」

 僕の予想では、モンスターが活動しているのは日の出ている間。そして、ある一定範囲までしか染まっていない。

 その予想は見事に的中していた。

「これが分かって、どのような作戦を考えたのですかマスター?」

 サリナが疑問を投げかけてくる。

 今回のサリナはサポートを徹底してもらおうと思っているので、戦闘は僕とユキで行う予定だ。

「今回は僕とユキで戦闘して、サリナは水中呼吸のサポートをしてもらうよ」

「はい。それは理解しているのですが、水中なのでどのようにモンスターを倒すのかと思いまして」

 モンスターの倒し方はほとんど考えていなかった。

「考えていないのですねマスター」

「すいません」

 とりあえず、奇襲をかけてそこからどうしようか。

「ユキに良い作戦があるニャ」

 今まで、海に目を輝かせていたユキが、作戦を思いついたらしい。

「どんなのかな?」

「船で近くまで行って、モンスター真上に降りていくニャ。そして逃げないようにロープを結んで後は倒すだけニャ!」

 倒し方を考えているのに、一番重要なところがざっくりだった。

「とりあえずロープで逃げないようにするところまでしてみようか。その後は状況に合わせて行動しよう。みんなそれで大丈夫?」

「任せてくださいマスター」

「マスターと一緒に頑張るニャー」

「じゃあ、宿に戻って奇襲の準備をしようか」

 宿に戻って、準備したら倒しに行くか。

 みんなで馬車に乗り込む。

「帰りも安全に任せたぞ」

 馬に言うと、やっぱり言葉が分かっているのか頭を下げて、ゆっくりと走り出した。


「おかえりなさいませ。調査はいかがでしたか?」

 宿の女将さんが出迎えてくれた。

「今日の夜にでも作戦を決行しようかと思います」

 そう伝えると、女将さんは悲しそうな顔をした。

「本当に気を付けてくださいね。命があってこそなので、無理ならすぐに逃げてください。って今から倒しに行くのに、こんな事を言うのは失礼ですかね」

「いえ、心配してくれてありがとうございます。でも絶対に倒してきますので」

 女将さんにそう言って、部屋に戻った。

「さっきのマスターかっこよかったですね」

「思い出されると恥ずかしいんだけど」

「絶対に倒してきますので。マスターかっこいいニャー」

 倒しに行く前から僕が仲間に倒されそうだよ。

「そんな事よりも、準備をしないと」

 とりあえず話を変えよう。

「しかしマスター、準備する事ありますか?」

 はっ!

「無いです...」

 ほぼ手ぶらで来てるし、準備ってもいつもと同じ格好で倒しに行くから、元々準備出来てる状態だった。

「じゃあ、もう少しマスターをいじめるニャー」

 もう、本当にやめてください(泣)


「よし、出発するぞ」

 月が自らの姿を主張する様に、大きく空に輝いている。

「とりあえず、船の所まで行きましょうかマスター」

「ユキ、緊張してきたニャ」

「まだ、敵を見てもないのに緊張するなよ」

 相手の姿が分からないから、緊張するのも無理ないか。

 月明かりに照らされた道を歩く。

「それにしても、よく船を貸してくれたよな」

 沈むかもしれないのに船を貸してくれる。

 よっぽどのお人好しである。

「この街の皆様が、それほど期待しているってことですよマスター」

「お、おう、めちゃくちゃ緊張してきた」

「マスターもユキと一緒だニャ」

 緊張の方向が違う気がするが。

「もう出発だな。みんな絶対に倒してやろうぜ」

 船に到着して、気合を入れ直した。

「マスターが、マスターっぽいニャ」

「珍しく素敵なマスターが見られましたね」

 お前たち、言いたい放題か...

 船に乗り込み、ゆっくりと船が動き出す。

 もちろん操縦はサリナです。僕たちには操縦まったく分からないです。

「さて、これから紅いオーラのモンスターを倒しに行きますか。」

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