調査

「おはようございます。頭の良い皆様ならお分かりかと思いますが、眠れませんでした。って僕は誰に話してるんだろう」

 もうすぐ日の出なのだろう、海が紅く染まってきている。

 左右に柔らかい女の子の感触で、眠れるわけが無い 。

 二人を起さないように、そっと起き上がって海の様子を見に行くことにする。

 宿を出るところで、女将さんに声をかけられた。

「お早いですね、調査にでも行くのですか?」

「まあ、そんなところですかね」

「お気をつけてくださいね。海よりも、あなた達が怪我をしないことが大切ですから」

「ありがとうございます。任せてください、怪我もなく海も取り戻しますので」

 ちょっと格好つけて、宿を出る。

 誰も失う事無く海を取り戻す。

 にしても、どうやって攻撃するかとか考えないと。

 考え込んでいたら、海についた。

「まったく、今日も綺麗に真っ赤だな」

 嫌になるぐらいに綺麗な赤色。ここの世界の海は赤だと言われたら信じてしまいそうだ。

 防波堤に立ち遠くを見ると、何かが跳ねた。

「ん、あれは?」

 少し気になったら調べる。命がかかっているから、そこで妥協するわけにはいかない。

「もし、これが正しいのならアイツはあそこにいる」

 何かが跳ねた場所。

 そこだけ、異常に綺麗な赤に染まっていたのだ。

「俺の予想通りなら、あそこにモンスターが居るはずだ。あと、この水に入っても大丈夫なのかサリナに調べてもらわないとな」

 ある程度の情報収集を出来たので、大人しく引き返す。

 そして宿に帰って、二度寝だ。

 しっかり目が冴えてしまって、寝れるか分からないけど。


「おかえりなさい、大丈夫でしたか?」

 宿に戻ると、女将さんが心配した顔で待っていた。

「はい、大丈夫でした。それに情報収集も出来ましたし」

 すると、女将さんは嬉しそうに。

「そうですか。皆様はこの街で現在唯一の希望です。皆さんが無事に海を取り戻してくれるのを期待してます」

 期待されると、やらかしてしまいそうだな。

「とりあえず、もう一度寝ようかと思います」

「はい、ゆっくりと休んでくださいね」

 女将さんに見送られ部屋に戻る。

「マスターが居ないニャー!」

 部屋の外まで聞こえてくるユキの大声。

「大丈夫ですよユキさん。だいたいどこにいるのかは分かります」

 少し面白いので、部屋の外から聞きてみる。

「ここです!」

 サリナが声を出して、扉を開けた。

「さすがに押し入れには居ないと思うニャー」

「って、どこ探してるんだー!」

 ついつい部屋に突入してしまった。

「やはりマスター、そこにいましたか」

 なに、ドヤ顔してるのさ。全力で押し入れ開けてたよね?

「これは、マスターをおびき出すための罠です(ドヤァ)」

「おお、さすがサリナだニャ。マスターの事、何でもお見通しなんだニャ 」

 えっ、これってサリナの罠なの?

 二度寝する気分にもなれず、このまま作戦会議する事にした。


「とりあえず、今日は少し遠くに行って海がどこまで影響を受けてるか見てみようと思う」

 僕の予想が正しければ、遠くまで影響を受けている事は無いはず。それに、より一層染められた場所、何かが跳ねた場所、それはアイツのいる場所じゃないか。

「わかりましたマスター。でも今日の夜に倒しに行く予定だったのでは?それにしてはハードではないですか?」

 サリナの言っている事は正しかった。

「そうだね。だから、誰か一人でも万全じゃないら今日の奇襲を中止するよ」

 敵に勝つには、まずは情報収集。それから予想外の方法で相手を攻撃する。

 その方法で一番重要なのが、味方のコンディションになる。

「ユキはいつでも万全だニャ」

 なんとも頼もしい発言だが。

「ユキのやる気は嬉しいけど、決行するかは僕が決めるよ。自分じゃ気付かない変化とかもあるからね」

「わかったニャー。じゃあ早く遠くまで行ってみるニャー!お部屋でのんびりも好きだけど、暇になってきたニャ」

 ユキに急かされて、少し離れた海岸を見に行くことにする。

「その前に、朝ごはんを頂こう」

 朝に歩いてきたので、お腹が減った。

「たしか、女将さんが朝食を用意してくれているはずですよマスター」

 パーティー全員で朝ごはんだ。


「みんな準備はできた?」

 部屋に戻り、出る準備をしていた。

「完璧だニャー」

「私ならいつでも準備できてますよ」

 全員が準備できているようだ。

「それでは、情報収集に行きますか」

 と言って来たのは、以前に馬車を返した所。

「おっ、こいつまだここにいたか」

 ここに来る時に借りた馬が、まだこの街にいた。

 馬は僕に気がつくなり、頭を下げて大人しそうに待っていた。

「撫でてくれってことかな?」

 撫でてやると、嬉しそうに目を閉じる。

「今日もコイツのお世話になろうか」

「そうですねマスター。だいぶ懐いてるみたいなので、この子なら頑張ってくれるでしょう」

「ユキもこの子好きだから、賛成だニャー」

 店の人と話して、こいつを借りる事ができた。

「それじゃあ、出発だー!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る