休憩タイム
辺り全体草原である。
ほんとに全体なので、これ以上の表現は出来ない。
そんな草原に少しだけ舗装された道があり、その道を借りた馬車が走っている。
「ほんとに何も無いんだな」
心からその感想が漏れた。
「マスター、何を言っているんですか?草原があるじゃないですか」
僕からすれば逆に草原しかないんだよな。
でも、こんな感じの道も悪くないな。
舗装されたと言っても、馬車が走り続けて固められたような土の道なので、乗り心地は悪いといって良いと思う。
「ところでサリナ、これはどれぐらいまで来たのかな?」
馬を操るサリナは、馬の管理をしてくれている。
「これで約三割来たぐらいですね」
まあ、それぐらいだよな。
僕達が街を出て半日程度なので、ペースは遅くないと思う。
そしてユキは馬車の中で爆睡している。
まったく、どれだけ寝るんだよ。べつに良いんだけどさ。
「マスター、そろそろ休憩をしないと馬が疲れてきています」
馬だって生きているんだから疲れるよな。
「分かった、どこかに馬車を止めて休憩しようか」
先程まで結構な速さで走っていた馬が、徐々にスピードを落として、道から少し離れた所に止まった。
「お疲れさま」
僕はドリンクを取り出してサリナに渡した。
「ありがとうございますマスター。でも、私は口移しで渡して欲しいです」
「全力でお断りします」
僕から受け取ったドリンクを嬉しそうに飲んでるサリナを見ると胸の奥が......
いや、何でもないな。と頭を横に振った。
「どうしたんですかマスター?」
「何でもないよ」
そんな事より、少し休憩をしないとさすがに皆疲れているから(ユキ以外)、ゆっくりと休もう。
「この石キレイだニャー!」
休むって言ってるのに、ユキは周りにある色々なものに興味を持ち、走り回っている。
「まったく、これじゃ休憩にならないな」
そう笑いながら僕の肩に何故かもたれ掛かっているサリナを見た。
「Zzz…」
珍しくサリナが寝ていた。ここまで長かったし、疲れもするよな。
「ゆっくり休んでな」
サリナの膝に、僕の上着を掛けてやった。
最初はサリナに良い感情は抱かなかったが、今では頼りにしてるよ。
陽も段々と落ちて、辺りが暗闇に包まれつつある時、やっとサリナが目覚めた。
「おはよう、サリナよく寝れた?」
「あっ、おはようございま......Zzz…」
バレバレのたぬき寝入りであった。
「サリナ、起きてるのに寝てるふりはダメだと思うよ」
諦めたようにサリナの目が開いた。
「だって寝ていたらマスターに密着しても良いのでは?」
「うん、ダメだよ」
そこでサリナは自分の膝にある上着に気が付いた。
「これはマスターが?」
「疲れただろうから、ちょっとでも疲れを癒して欲しいからさ」
すると、頬を紅くして照れながらも一つだけ質問してきた。
「匂いを嗅いでも良いですか?」
もちろんお断りしましたよ。
誇張でも何でもなく、ほんとにただの草原。
街灯もなく、人間が居るのかも分からない。
しかし、人の手が入っていない事は悪い事ではない。
例えば、自然の素晴らしさとかが良く分かる。
ちなみに二人は今は寝ている。
それなのになぜ僕だけこんなにも早く目が覚めたのかと言うと、陽が出てきて、それにより目が覚めたからだ。
昔の僕はどうだったのだろうか?このように日の出で目が覚める事はあっただろうか?
おそらく無かったであろう。
大自然を前に人間がどうなるのかを言っておこう。
「本当に綺麗だな。それに比べて僕はこんな状態で良いのだろうか?」
そう、大自然を前に人間は無駄に哲学的な事を考えたり、センチメンタルになったりする。
「僕はどんな人間だったのかな?記憶が全部戻ったら現実に戻りたいと思うのかな?」
考えるだけ無駄なのだろうが、目の前に広がる草原と太陽に考えさせられる。
大自然の力は凄いな。
「マスター、おはようございます」
横からサリナの声が聞こえてきた。
「おはよう、サリナ」
サリナも起きた事で、とりあえず朝食にする事にした。
ユキはそのうち起きるだろ。
街を出る前に、こんな時のために携帯食料を買い込んでおいた。
「もしかして、携帯食料を出すためにはサリナに触れなきゃいけないやつかな?」
嫌な予感が......嫌な予感しかしないな。
サリナからの返答はもちろんの事ながら。
「私に預けたのですから、触って頂かないと出てきませんよ」
ですよねー。
何度やっても、やっぱり罪悪感があるんだよな。
そんな僕の気持ちも知らずに、サリナは胸を差し出してくる。
「...どうぞマスター/////」
照れながらもノリノリのサリナである。
僕も男だし覚悟を決めないとな。
「それじゃぁ、触るよ」
二つの山はいつ触っても、フカフカの新雪みたいに手が沈み込む。
「あぁん///マスターの大きいです///」
おいおい、誤解されるような声を出すなよ。
次からは携帯食料を買ったら自分で持っておこう。
そう思いながら、これからの準備を始めた。
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