寝起き

「おはようだニャ」

 二人で騒いでいるとユキがやっと目覚めた。

「おはようございますユキ様」

「おはよう、ユキ」

 目覚めたのだが、頭はまだ覚めていないようだ。

「マスター、ユキと結婚するニャ」

 ユキがいきなり抱きついてきた。

「ユキ様、何をなさっているのです?」

 サリナが優しそうな声で言っていた少しが、顔を見てみると笑顔で怒っている。

「サリナちょっと顔が怖いよ」

「マスター、私の顔が怖いですか?」

 その笑顔がこちらに向けられた。

 こちらに向いた瞬間、背筋が震えるような感覚が来た。

「い、いいえ。サリナは今日も可愛いです」

 反射的にそんなことを言っていた。

 人間って命の危険を感じると、無意識に体が反応してしまうものなんだな。

 あんまり嬉しくない経験を、ここでしてしまった。

「マスターもいつまで抱きしめられているつもりですか?」

「あっ、いえ、すぐに退いていただきます」

 再び命の危険を感じたので、ユキを引き離した。

「マスターの温もりが欲しいニャー」

「ユキ様、早く起きてください」

 笑顔の殺気がユキに向く。

「ニャ!?」

 すると、ユキの全身がビシッと伸びた。

 やっぱり、命の危険を感じるとそうなるのか。

「よし、それでサリナ次のモンスターはどこにいるのか情報はあるの?」

 とりあえず仕切り直しと言わんばかりに、モンスターの情報を教えてもらう。

「そうですね、ここから少し行ったところに次の街があり、その街の海が紅くなってるとの情報がありました」

「海が紅くなってる?」

 水って紅く染まる事は無いよな?

 なんで海がそんな色になってるんだ?

「そうですね。海が紅く染まり、そこの漁師が海の中に巨大なモンスターらしき影を見たとの事です」

 恐らくそのモンスターが海を紅く染めたんだろうな。

「その影響で、漁師は海に行くのを恐れているようです」

 そりゃ恐れるわな、海って事は海沿いの街なのか。

「はい正解です。海沿いの街ですね」

 だから心を読むなって。

「じゃあ今日からそこに向けて出発しよう。その街の名前は?」

「ディーダですねマスター」

「じゃあディーダに向けて早速出発だ」

 するとサリナが少し困ったような顔をした。

「あの、マスター、ディーダに行くには少し遠くて、徒歩で行くと一週間はかかってしまいます」

 そんなに遠かったのか。でもそうなったら僕達はどうやって行こうかな、一週間歩くしかないのかな?

「マスターご心配なく、馬車でも借りましょう」

 なるほど、その手があったか。

 でも、心を読むのはやめようか。


「やってきました馬車の店」

 宿を出て店の前にやってきたのは良いが、どれが良い馬なのかまったくわからない。

「マスターが無駄にハイテンションだニャ 」

「そうですね無駄にハイテンションですね」

 二人から無駄と言われて少し萎えた。

「今度は萎えてるニャ」

「マスター萎えてますね」

 まったくなんでこいつらこんなに息がぴったりなんだよ。

 二人からいろいろ言われてもう帰りたい。

「そんな事よりだ、馬を借りるぞ」

 切り替えて二人に言った。

「話を変えたニャ」

「話を変えて逃げましたね」

 だからなんでそんなに息ぴったりなんだよ!

「それでだ、どれがいいの?」

「わからないニャ」

 早速だが異世界に飛ばされた組が戦力外になった。

「残念ながらマスター、私にもわかりません」

 はい、全員が戦力外になりました。

「いらっしゃい、今日は購入ですか?借りにきたのですか?」

 店の中から威勢の良いおっちゃんが出てきて、声をかけてきた。

「僕達、馬車を借りたくて」

 威勢の良いおっちゃんはすこぶる機嫌が良さそうになった。

「借りてくれるのかい、ありがとうよ。どれでも三千コスモだから好きなのを選んでくれ」

 どれでもって数十匹いるぞ。

「あの、選びたいのですが僕達どれがどんな馬なのかあまりわからなくて」

 そう伝えると、おっちゃんは申し訳なさそうに謝ってきた。

「それは、すまないね。この店で一番のおすすめはこいつだよ」

 おっちゃんは黒の馬を連れてきた。

「こいつはな、スピードもスタミナもパワーも最高クラスだ」

 よっぽどおすすめなのだろう、次から次へと馬の良いところを言ってくれる。

「じゃあそれを貸してください」

「はいよ!それじゃあ三千コスモになりますぜ」

 よく考えたら、コスモ取り出すにはサリナのとても立派な二つのプリンに触れないといけないのか。

 サリナの方を見ると、サリナは嬉しそうにしてこちらを見つめていた。

「マスター、ぜひ触ってください」

 何度やっても慣れないな。

「そ、それじゃあ触るよ」

 ゆっくりと手を近付けて、優しく二つの丘に触れた。

「あんっ/////そこは/////」

 チクショー、こうなるから嫌なんだよ。

 その後は、威勢の良いおっちゃんも静かになってしまってた。

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