作戦
「はぁはぁ、まだ出てくるのか?」
もう何体倒したか忘れたモンスターの前で、僕はすこしだるそうに言ってしまった。
「ユキもそろそろ疲れてきたニャー」
そうだよな、さすがにこんなにも大量の敵が出てきては疲労も溜まるってくるよな。
「ねえサリナ、オーラのモンスターまではまだ遠いの?」
「いえ、もう少しで到着する予定なのですが」
「何か問題でも起きたの?」
難しそうな顔をしたサリナを見て、僕は不安になった。
このパーティーで情報を持っているのはサリナだけなので、サリナが僕達にとって希望なのだ。
「いえ、モンスター自体は居るのですがほかの天使の情報によると、ボスが仲間を呼び寄せて非常に戦いにくいと…」
ボスか仲間を呼び寄せる?
もしかして今まで戦ってきたようなモンスターが、ボスとの戦闘中に乱入してくるってことかな?
「マスターの考えで当たってますね。ボス戦闘中に背後から他のモンスターに攻撃される等の邪魔が入るようです」
だから心を(以下略)
「それならユキに良い考えがあるニャー」
疲れても元気なユキを見ていると、こちらまで元気になれるな。
「どんな考えなの?」
僕が聞いてみると、ユキは自信満々に教えてくれた。
「まず、ボスを三人で攻撃するニャ。そこからは、一人は周りのモンスターを倒す、残りの二人でボスと戦うんだニャー」
なるほど、背後から他のモンスターに攻撃される心配が無くなるって事だね。
「良い作戦だね、でも役割はどうやって分けようか?」
ユキの作戦だと、ボスと戦うのはもちろんだが他のモンスターを倒すのはもっと厳しい戦いになりそうだ。
今のモンスターでも、僕とユキではそうとう苦戦するのに、そんな敵がうじゃうじゃと出てくるのをどうやって倒そうか。
「私がやりますよマスター。それと同時に支援魔法でマスターとユキちゃんの能力を底上げします」
ありがたいけど、そうなるとサリナの疲労が…
「御心配ありがとうございますマスター。しかし私達は冒険者の支援が役割ですので、私の事は道具とでも考えていただいて」
「何言ってんだよ!」
サリナが全てを言い終わる前に、つい叫んでしまった。
「サリナは道具なんかじゃないんだよ、かけがえのない僕達の仲間なんだよ。僕の、僕達の大切なパーティーメンバーなんだよ」
「マスター…ありがとうございます。」
サリナの目から少しの雫が落ちていた。
「だとしたら、なおさら私が周りのモンスターを倒します。マスターとユキちゃんがボスを倒してくれると信じて、私は二人がボスに集中できるようにします」
そう言い切ったサリナの眼は、全員無事に帰る事を願うような、いや絶対に無事に帰ると誓っている。
そんなサリナの気持ちに応えるためにも、絶対にみんなで無事に帰る。
今の僕は弱いけど、弱くても出来ることはあるはず。
「いっちょ、こんな理不尽な世界に一発殴り込みますか」
「おおー、マスターかっこいいニャ」
「マスターなら絶対に大丈夫です」
「よっしゃ、ボスを倒しに向かうぞ」
ボスまではもう遠くない、絶対に記憶を取り戻す。
そう心に誓って僕達はボスを倒しに歩きだした。
外からでもわかるほど禍々しい空気の場所があった。
「ここにボスが居るのか?」
あまりの空気に少し怖くなってきた。
「ここにいるようですねマスター」
「なんかすごい空気ニャ」
ここまでの空気なのか、オーラを纏っているモンスターは以前にも見たのだが、比にならないほど空気が重たい。
「二人とも準備は大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「準備完了だニャ」
それじゃあと、僕達はボスの部屋へと足を踏み入れる。
広めの部屋の真ん中、紅いオーラを出しているモンスターが一体だけこちらを見て立っている。
こちらに気がついたのか、僕達をじっと見つめて。
ヴヴォォォォォォ!!
ボスの咆哮で、僕は初めて音に押された。
「サリナ、あいつはタートルウィザードか?姿が同じなんだけど」
あいつはここまで倒してきたタートルウィザードと同じ姿だった。
違うところは、大きさが僕達の二倍から三倍あるってことだ。
今までのタートルウィザードは、僕達と同じぐらいの大きさだった。
「変異したタートルウィザードですね」
「変異するの?」
「オーラを纏った場合を変異と位置付けてます。そして変異すると、攻撃から防御まで全てが強くなります。大きさも変異するものかと」
攻撃も防御も全てが強くなるのか、なんてチートなんだよ。
ヴォォォォォ!
再び叫ぶと周りからモンスターが湧き出てきた。
「仲間を呼び寄せてるニャー」
「くっそー、早く倒さないと。サリナ作戦通りにやるよ」
「わかりましたマスター」
サリナが支援魔法を使ってくれた。
その支援に応えるために、タートルウィザードの頭に向かって全力で剣を振り下ろした。
タートルウィザードは少し苦しそうにに悶えたが、完全に怒らせてしまったようだ。
標的は完全に僕になってしまったようだ。
「痛いニャー!」
武器の音しかしなかった部屋にユキの声が響き渡り、何事かと振り向くとサリナの攻撃で飛ばされたモンスターの武器がユキに当たってしまっていた。
ユキに大した怪我はなさそうだった。
「マスター、危ないです!!」
その声と同時にまずいと思い、再びボスの方に目を向けると、僕の横からボスの爪が猛スピードで迫ってきていた。
ザシュ!
その時、僕は何が起きたのか理解出来なかった。ただ熱さだけが僕の腕を纏う。
何があったのか理解出来たのは、僕の腕から血が出ているのを確認した時だった。
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