世界の仕組み

「はぁ〜、少し回復した」

「ユキも回復したニャー」

 二人揃って、至福の顔をしていた。

 ここで、疑問に思っていた事をサリナに聞いてみる。

「サリナ、僕達はこれからどうしたらいいの?」

 記憶を取り戻すにしても、その記憶を持っているモンスターが居ないと、戻す記憶が無い。

「はい、マスター。始まりの草原には、ボスが一体います。そのボスが紅いオーラを纏っていると聞いております。」

 サリナの言うオーラとは、僕達の記憶を持っているとオーラを纏うらしい。

 どうやら、この草原に一体いるらしいので、倒しに行かないと。

「しかし、マスター。武器の使い方をある程度習得しないと厳しいです。それに、魔法も使いこなせないと、相手は属性魔法を使ってきますので、それも厳しいかと思います」

 草原に座りながら話を聞いていると、突然モンスターがこちらに向かって走ってきた。

「おいおい、アイツは何だよ。めっちゃこっちに向かって走ってくるじゃねーか」

 そこには、目が一つしかない、角の生えたゴリラみたいなモンスターが走ってきている。

「あれは、サイクロプスでございます。マスター、そこまで強くないので、簡単に倒せると思います」

 とは言うものの、こっちには記憶喪失の青年、獣耳の幼女、よくわからない天使の三人。

 これで、勝てるのか?

 モンスターが近付いてくる。覚悟を決めて、戦うことにした。

 武器は、さっき店で買った物しか持っていない。ユキは、弓を持っているが、これが強いのかはわからない。そして、サリナは、全く何も持っていない。

「ユキ、その弓使えるか?」

「ニャ?使えるニャー」

「その弓で、先にアイツにダメージを与えてくれ」

「任せるニャー」

 ユキが矢を手に持ち、ギリギリと弓がしなる。

 ビシュと、弓から放たれた矢が飛んでいく。

「ウガァァァァ!」

 ユキによって放たれた矢は、モンスターの肩に命中した。

 サイクロプスは一瞬動きを止めたが、また走ってきた。

「僕が攻撃に行くから、ユキは援護してくれ」

「わかったニャー」

 そう言うと、僕はサイクロプス目がけて走る。

 お互いの攻撃が当たる距離、僕の剣と、サイクロプスの棍棒、どちらも近接武器で、お互いに近い距離で戦闘する。

 ドカーン!

「うぉ、危ないな」

 辛うじて、サイクロプスの振り下ろしてきた棍棒をかわした。

 かわした瞬間に、後ろから二本目の矢が飛んできた。

 その矢は、先ほど当たった肩の逆側の腕に命中した。

 少しだけサイクロプスの動きが止まったので、その隙に僕は、全力でサイクロプスの体を切りつけた。

 サイクロプスは唸り声を上げながら、倒れて動かなくなった。


 サイクロプスを倒すと、倒したサイクロプスが消えて、白い玉に変わった。

 その玉は、自然とサリナの体に入っていった。

「さすがですマスター」

 どうやら、勝てたみたいだ。

 緊張からヘトヘトになっていた。

「サリナ、きみに白い玉が入って行ったけど、あれってコスモなの?」

 この世界の通貨【コスモ】、僕はそれを買い物の時に見たが、同じような玉がさっき、サリナの中に吸い込まれていった。

「そうでございます。マスター達がモンスターを倒すと、モンスターがコスモに変わります。そしてそのコスモは、付き添いの天使の持っているボックスへと自然と入るようになっております」

 なるほど、付き添いの天使に預けるのか。

 でもそれって、何かアイテムを買う時は、必ずサリナの胸に……

 そんな事は無いと信じるが、一応聞いておくか。

「それってさ、買い物をする時は、必ずサリナの胸に触れなきゃいけないの?」

「はい、マスター。そうでございます」

 うわぁぁぁぁ。

 最悪だよ、食事を買うにも、武器や防具を買うにも、まず女性の胸をさわる最難関の問題があるのか。

「ねえサリナ、他にアイテムボックス取り出す方法って無い?」

「すみませんが、他の方法はございません」

 あっ、ダメだ。

 ことある事に、触るとかヤバすぎる。

「ねえ、そろそろここら辺から移動しないかニャ?」

 ユキに言われて周りを見渡すと、のそのそとサイクロプスが歩いてきていた。

 いつまでもここにいるのはまずそうだな。

「そうだな、ユキ。とりあえず最初の街のところに戻ろうか」

 そして、また街に戻る事にした。

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