第42話霧を止める者の騎士 6
キョウとセリオンが戦っている周りでは、霧に乗っ取られた者との戦闘が続いていた。
イップ王女の騎士達は、近付く霧に乗っ取られ者を倒すが、マグナは法国の兵士達に手を貸している。
それは優しさからではない。
法国の兵士は
その時、再びこの部屋に
ローランド
ローランドは部屋に入るやいなや大声を上げた。
「法国の兵士達よ何をしておる! 霧に乗っ取られ者ていどの相手に
現れたローランドは、直ぐに
「
ローランドは、自分の親衛隊の隊長に
しかし、ローランドにはレナ姫との約束がある。まずはそれからだ。
「デルマン第三皇太子!
ローランドが声を上げたその時だった。
キョウとセリオンは剣で押し合い、
セリオンは
キョウの剣は、鎧を脱いだから
速いし、重い。
刃筋が通っているからだ。
しかしそれは、剣の腕が天才的に上手いからで無いと、キョウの
キョウは何一つ、天や神からタダで受け取ったものはない。
そして、セリオンから受け取ったものだけでもない。
それは、血の
――――
セリオンの殺気が
今までの様に、
セリオンは、大振りのバスターソードを、肩に担ぎ、左手を差し出す、いつもの構えをとった。
キョウにも解っていた。次がセリオンの本気の一撃だと。
キョウもバスターソードに
左右逆だが、
両方とも、相手の呼吸を読んだ。
そして、ついにその時がやって来た。
音もなく、何の
それは、十八年間
それは、これからは、霧の無い時代が来ることを
キョウとセリオンの攻防を見ていたイップ王女は、目を見開きその場に座り込む。
彼女の望んでいた事が、リオの手により、今、現実の物となった。
「終わったのか? これで、霧が現れないのか?」
イップ王女は
望んでいた
イップ王女が何も出来ないまま、
しかし、心のどこかに
イップ王女の言葉に、マグナも、王女の騎士達も、ローランドも足を止め、その
そして、ローランドが現れることにより、
この場で、剣を構えているのは二人のみ。
誰もが、その光景を見守った。
セリオンは内心の嬉しさを隠していた。
これで、イップ王女を失うことはない。後は、あれを壊せば完璧となる。
二度と、霧による
「キョウ、お前達は良くやった。しかし、もう
嬉しいのはキョウも同じだ。
無理だと何度言われても、リオはやり切った。
初めて会った時は、子供には無理だと心のどこかに有った。
だが、日を
そして、現に、リオはその言葉通り、霧を止めた。
キョウが信じた様に、リオもキョウを信じたから、迷いなく空間の穴の中に入っていった。
あとはキョウが約束を守るだけ。
姫の命令を守るだけだ。
「セリオン、俺にはあんたの記憶があるが、あんたとは違う。リオは宣言通り、霧を止めた。次は俺の番だ!――――俺は
キョウは目を見開き、セリオンを見る。
お互いに
息が合った。互いに息を吸い込むと、二人は相手に向いて
先に剣を
まだセリオンの間合いですら無いのに、袈裟斬りに振り下ろす。
セリオンは自分の間合いに来てから、袈裟斬りにキョウを狙った。
キョウが選んだのは、速さではなかった。一番不利な、力で相手をねじ
キョウは剣を下から競り上げる。
キョウとセリオンの剣が重なった。
ここから起こったことは、
ガキンと鈍い音がなり、キョウの剣先が、真ん中辺りから
信じられないことに、セリオンはキョウのハーフバスターソードを斬ったのである。
回転しながら飛んでいる、キョウの愛刀の刃先。
終わったと、観ていた誰もが思った。
しかし、セリオン相手に、若い騎士は良くやったと、誰もがキョウの
勝った。
セリオンはそこで、初めて気を抜いた。
キョウの瞳には、剣を折られてなお、
まだ力がある。
これで、また少し軽くなった。
キョウの次の行動は、さらに速かった。
キョウは折れた剣をそのままセリオンの首筋に当て、目で追っていた愛刀の剣先を取るために、セリオンに抱き着いた。
とっさにセリオンは
回転しながら
セリオンは思わぬ
「グッ!」
「終りだ、セリオン!!!」
キョウはセリオンの首の血管を狙い、折れた剣を振り抜こうとする。
「待て! 待ってくれキョウ!!」
その声に、キョウは思わず手を止めた。
イップ王女は、
「頼む!
涙ながらに
甘いとは解っている。父親にも
だが、それでもキョウにはそれ以上、剣を振ることは出来なかった。
それほどイップ王女は多くを
「お主が
涙を流しながら、イップ王女は床に
誰も、何も言えなかった。
キョウはセリオンから離れて、上から見下ろした。
セリオンからは、今までの
自分の
「――――キョウ、俺の負けだ、好きにしろ」
キョウは何も答えなかった。
剣技ならセリオンは勝っていた。キョウが
勝てなかったのは意識の違い。
セリオンは空間を閉めたことで、キョウやリオに感謝の気持ちが出来てしまった。そして、心のどこかでは、閉めることの出来る、彼等なら開けても大丈夫だという、考えが
それに対して、キョウは一つも後がない。自分の守るべき者を守る方法は、勝つしか無かった。
現在、空間輸送システムの開け方を知っているのは、キョウのみだ。
だから、勝利を
この勝利は当然な結果なのだ。
キョウは自分の愛刀を見る。
制御盤を開けるための、リオに祝福を受けた、キョウの絆が折れてしまった。
でも、まだ終わりじゃない!
辺りには剣を
「――――貸してくれ」
キョウはセリオンに手を差し出す。
剣を貸せば、キョウが何をするのか解っていたが、セリオンは握りをキョウに差し出した。
キョウはセリオンの、バスターソードよりも大きな大剣を
そして、いつもの構えを取るために、剣を担いだ。
ズシッと、いつものでない重みが肩にのしかかる。
初めて使う大きさや、長さで、感覚は
セリオンとの戦闘で、身体の
「イップ王女、セリオン。頼む、リオを信じてくれ。――――霧は現れない! 必ず成功する!」
キョウは一度だけ目を閉じると、覚悟を決め、左手を剣に
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