『クロウラー』という、地下に暮らす魔術師たち。変わっていて、地上の魔術師からは理解しがたい存在であるらしい彼らは、いったいどのような歴史を辿ってきたのか――を、講義形式で描いた作品。不思議な雰囲気のある作品で、筆致からもそれがあふれている気がします。それから、うまく言うことができないのですが……本来の講義の聞き手はあくまでその「世界」で生きている生徒たちなので、わたしたちが知るための世界観についての説明は大してされていない印象があるけれど、講義を聞くうち、徐々に、語り手や講義の聞き手である生徒たち、そしてクロウラー……彼らが生きる「世界」が少しずつ見えてくるんです。個人的に、それもたまらないポイントです。
ファンタジー世界における、魔術師たちのアカデミー。小説を読んでいる人なら、一度は耳にしたことがあるかもしれない単語です。
しかし、そこで具体的にどのような講義が行われているのかまでは、表に出てこないことがほとんどです。
講義室の片隅で、どのような講義が開かれているのか?
この小説では、それを非常にリアルに覗くことができます。
まず目次にある「クロウラー学 (選択必修)」という部分でフフッとします。
「ガイダンス クロウラーを学ぶ君たちへ」から始まり、「第一講 地下への情景/アマデオ・ブリンツ」~「第七講 クロウラー事件と魔術師たち」。
これだけでワクワクしてきませんか?
きちんと配点付きの「期末試験」まであるのがニクイです(笑)
クロウラーという、少しマイナーらしき学問。彼ら、あるいはその住処について活き活きと語る講師の姿が目に浮かびます。
その具体的な内容については、ぜひ読んで学んでください。
小説としても面白く、学問を学んだ気持ちにもなれる、少し不思議な感覚を味わえます。