第5話 秘密
港に着くと俺は早速酒場の方に足を向けた。
港にはまだ明かりが点いていて、お世辞にもキレイとは言えない笑い声が響いていた。
野郎だけで絡んでいる連中だけだなく、女と腕を組んであるいている奴もいた。
普段なら、爆発しろとか思うのだが、今はそうは思わない。
理由は単純で、あの腕を組んでいる女はここから少し行ったところにある娼婦街から来たビ○チだろう。
この町の娼婦街は、世界三大娼婦街に数えられる巨大な娼婦街で、規模だけなら世界のトップに位置する。
街の中にはいくつもの娼館が立ち並び、それぞれが百人以上の娼婦を雇っている。
中には、マジッ○ミラーや、回転するベットだけでなく、
大浴場まであるというのだから驚きだ。
俺的には大浴場で大欲情してどうするのかと思うのだが……
それ以外にもコン○ームなどを販売する店などもある。
一番大きな店では、カインちゃんと言う可愛い子がいた。
何でこんなに詳しいのかは仕事で人に聞いただけで、決して通ったわけではないですよ。ええ。
そんな娼婦街を横目に俺は目に入った酒場に入った。
酒場の中は盛況だった。
多くの人が顔を赤らめながら酒に溺れていた。
俺は店の左端のカウンターに座り、店の中の声に耳を澄ませた。
『あいつ船の中で酔ってやんの!』
『だせぇ!!』
ろくな話がねぇ……
もう少し他国の事とか悪い話とか聞きたいものである。
次の酒場に移ろうとしたとき、俺は店の端、俺とちょうど反対側の一団が目についた。
全員が全員ローブを被るという怪しさ満載の団体様だ。
少し行ったり探りを入れてみるか。
などと考えてかいると、一人が俺の方を見て舌打ちを二回行った。
どうやら情報屋の集まりらしい。
(怪しい連中。)
そんなことを考えながら、俺はこれ以上の情報は手に入らないと考えて、別の店に移動した。
店からでる一瞬でフード連中をチラッと観察すると、
首筋にあるキズが気になった。
(あのキズ……)
嫌な予感を覚えつつ俺は時間の許す限り酒場を回った。
次の日俺はミリアのノックで目が覚めた。
起きた瞬間にミリアとユスティーナの寝込みを襲えなかったことを五分くらい後悔してから、俺は何食わぬ顔で二人に挨拶をした。
「おはよう。二人とも。」
「おはようございます。お兄様。」
ミリアはいつものように笑顔でそう返し。
「おはようございます。」
ユスティーナは少し緊張したように返した。
朝起きると美少女二人がいるというのは、良いものだなぁ。
と感慨に浸っていると、
「今朝は二人で朝食を作ったんです。お兄様。」
ナンデスッテ!?
み、ミリアが料理をした……だと……。
ユスティーナの技量は分からない。
箱入り娘なだけに期待は出来ないが。
問題はミリアだ。
前にも一度料理を作ってもらったことはある。
そのときは飛び上がるほど嬉しかった。
目の前に料理を出されるまでは……
出された料理は料理と言えないばかりか物体ですらなかった。
ミリアはご機嫌に「パンです!」
と言って出してきたが、小麦粉を練って焼く過程で液体になる要素は無いはずなのだ。
しかも色は青。
黒や白ならまだ許容できる。しかし青はあり得ないだろう。
ミリアにどうやって作ったの?
と聞いてみたのだが、
「小麦粉を練って焼きました!」
としか答えてくれなかった。
料理オンチの前には調理の手順など無意味なのだと俺はこの時悟った。
それ以降は学習して俺が料理を作っていたのだが、
ユスティーナが来て機嫌が良かったミリアは変な方向にテンションが入ったようだ。
「お兄様!たーんと食べてください!」
「ジンさん。どうぞ。」
おお、神よ。どうして私をお見捨てになったのですか。
二人の料理が運ばれてきてしまった。
男が女の子二人から料理を出されてどうして逃げられよう。いや、逃げられない。
覚悟を決めて、二人の料理を確認してみる。
まずは、ミリアのもの。
一言で説明できるほどシンプルな料理だった。
青い液体!!
まさかの進歩も変化もない。
リアクションが余りにも取りにくい。
どうにかしよう。と心に決めつつ、ユスティーナの料理を確認してみる。
パンと卵を焼いたものだった。
奇跡だ!!まともな料理が出てきた、
今まで普通の料理が出てきて、ここまで感動したことはない。
普通なものは貴重だった。
と今になって理解した。
(ユスティーナの料理を先に食べて、ミリアのは処理しよう。)
決まった。そうしよう。
「まずは、ユスティーナちゃんのやつから貰うよ。」
「は、はい。どうぞ!」
ユスティーナが随分と緊張した様子で答えた。
流石に緊張しすぎなような?
「私、人に料理を食べでもらうの初めてです。」
なるほど、そういうことか。
確かに初めて人に評価を貰うというのは緊張するだろう。
早速一口、
……
…………
「うん、うまい。」
「本当ですか!!」
俺が正直な感想を口にすると、ユスティーナはとても嬉しそうだった。
犬耳をピクピク動かして尻尾もブンブンと振っている。
……
ん?
耳?尻尾?
「あのー、ユスティーナさんそれは……?」
ミリアが大層不思議そうにミリアが尋ねた。
顔もひきつっている。
「あっ!!こ、これは……生まれつきで、そのぅ。」
どうやらつけ耳の類いでは無いらしい。
ということは、
「ユスティーナは、半人なのかい?」
すると、ユスティーナはビクッと反応して、
「すいません、どうしようもならないのです、許してください、いじめないで……」
とうわ言のように呟いて、その場で小さくなってしまった。
半人、人間としての特徴の他にも獣としての特徴を持つ。
その風貌や、性格から差別や偏見の対象になることが多い。
また、一部の変態には非常に高く売れるため、奴隷として重宝される。
さらに、その社会的な風潮から貴族としての地位も得られない状態になっている。
つまり、ユスティーナは今まで半人の特徴を隠しながら生活していたというわけだ。
それを考慮すると、ユスティーナが軟禁状態になっていた理由も想像がつく。
(あの、しじい身内にはとことん甘いな。)
過剰とも言える対応をしたであろう老人に対して、
少し好意を持った。
まぁ、俺としてもミリアとしても偏見するような趣味はないので、
「大丈夫だよ、ユスティーナ。俺たちは内緒にしておくから。」
「そ、そうです!!」
と俺の気遣いの言葉にミリアも同意を示す。
すると、ユスティーナは、
「本当ですか……」
少し目尻に涙を溜めて、上目遣いで俺たちを見た。
その可憐な姿はミリアも見とれてしまうほど、美しかった。
俺にいたっては、抱きつきたくなってしまったほどだ。
その後も、騙していたことを謝るユスティーナと宥めるミリアのやり取りが続いた。
そんな中、
(少し、やりようが出てきたかもしれない。)
俺は一人そんなことを考えたいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます