第7話 その結果
「あらら、やっぱり勝てなかったか」
頭上から掛かる六雲の声に、星は顔を上げた。
千歳船橋駅の前の小さな広場。そこにある円上のベンチの上で、港はヒーロースーツを着たまま気を失って横になっている。
「安倍先輩。風邪良くなったんですか?」
「風邪? そういえば、そんなこと言ったっけ。そうそう、寝てたらすっかり良くなったから様子を見に来たんだよ」
首を傾げる星に、六雲は気にしないと笑顔を浮かべる。
一カ月前までは、この時間帯でも随分と明るかったのだが、今ではすっかりと夜になっている。薄着では寒いと感じるほどに、冬はすぐそこまでやってきていた。
「こんな格好までするとはね。流石にここまではやらないだろうと思っていたけど、僕は港後輩のことを見くびっていたようだね」
六雲が苦笑する。
「キミのそういうところ、好きだよ」
「あの……」
星が言いにくそうに、六雲へと声をかける。
「坂上さんと安部先輩って、どういう関係なんですか」
ちらちら伺うような星の視線に、六雲はイタズラっぽい表情を浮かべる。
「どういう関係に見える?」
「なんというか……その……」
言葉を探しているような雰囲気の星に、六雲はケラケラと笑う。
「一言で言い表せないような、深い関係だよ」
「深い、関係」
星がゴクリと喉を鳴らす。
彼女が何を考えているのか想像するのは難しいことではないが、面白そうなので訂正しないでおく。
「じゃあね、僕は帰るよ」
「坂上さんを連れていってくれないんですか?」
「いやいや、折角頑張ったんだからご褒美はちゃんとあげないと」
星は港を膝枕したまま、首を傾げる。
「では、また部室でね」
星の返事を待つことなく、六雲は歩き出す。
これから始まるであろう、様々な楽しいことに思いを馳せながら。
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