第 拾捌 話 身売りされたんすけど。







「っざけんなよマジで…!」




薙刀はさすがに使ったことないからマジで攻略法わかんないんだけど…!?これが日本刀ならまだしも!いや、日本刀も死ぬわ。


しかもなんで俺だけ追いかけられてんの!?


他の2人は!?あ、本郷と巻岡相手にしてんのね。ならよし、許す。


俺はそう思いながら後ろから迫る太宰治、もとい津島辰二から逃げていた。広い地下空間は長い獲物を振り回すのには最適すぎて、リーチのある津島には文句のつけどころの無い場所だった。


まあリーチがある分、懐に入りやすいかなとは思う。


が、それは無理だった。なんでかって?津島がその隙をくれないからだ。




「全く、どだい無理な話だとは思わなかったのかい。君みたいな人が【歴史科】でやっていくということがなにを意味するのか知らなかったわけではないだろう」


「うっせぇな!俺だって入りたくって入ったわけじゃねぇんだよ!!人の気もしらねぇで!」


「本意でないとしても、辞退や科変という手はあっただろうに」


「………」


「それに【歴史科】のある学校を選ばなくてもよかっただろう。歴史が嫌いならば」


「……」


「それに何故入ったのかは知らないが彼女のようにサボるという手もあるだろう?無理なら無理と言えばいいものを」


「…るっせぇ」


「くだらないプライドがそうさせているならとんだ道化だな」




…さっきから聞いてりゃこいつは………!!


俺は立ち止まり袖に隠していたバタフライナイフを手に取る。そして刃を出し突き出された薙刀を払いのけた。


そんで叫んだ。




「うっせぇな!!!お前に俺の気持ちがわかるか!?勝手に願書書き変えられて入りたくもない【歴史科】に入らされて科変できる状況じゃなくなってて!!!いいかげんうっぜぇんだよ!!!しかもてめぇ鬱小説家だろうが!何ハッスルしてんだよ、もっと鬱々ネガティブ絶望しかありましぇーんって顔しとけよ!イメージがた崩れだろうが!」




だから





「とっとと脳病院入院して来いやぁぁあああ!」




なんで脳病院かって!?こいつが入院させてたくなるような性格してっからだよ!!!(人間失格より)


つーことで俺は叫びつつ土手っ腹に蹴り(なお回転により攻撃力増)を入れ津島を吹っ飛ばす。がふっと漫画の如く吹くと津島は本郷やら本多やらを通り過ぎ岩壁に激突。


よっしゃ、これでここんとこ、つってもたった2日分だけど、ストレスは発散できた。超楽しい、そんで超嬉しい。もうね、この【歴史科】の奴らの



『俺たち転生人ですけどなんか文句あります?すごいだろ?お前たち長生きしてるんだぜ』



感がすっっっっごい嫌だったんだよねっ!?


だから津島いい感じに吹っ飛ばせてかなり解消。いい汗かいたぜ。まぁ周りのなんか引いた感じは無視しまして




「おい、とっとと血の伯爵夫人んとこ行こうぜ!」




スマホの時計を見ながら言う。いつの間にか表示は12時手前になっていて、みんなが言うにその夫人は面倒な人っぽいからとっとと済ませたい。


…腹も減ったし休みたいし。


だけどそれをさせてくれないのが本郷直治って人間で。今は銃が武器の本郷は照準を俺に合わせて来て、引き金に指をかけている。


…本郷ならダムダム弾とか普通に使って来そうで俺怖いんだけど。


距離にして約10m。余裕で射程範囲内だ。動くに動けない状況になって目線で本多や無笛に助けも求めるが見ないフリしやがる。





「彼女のところには行かせないよ。”鬼火”には絶対触らせない」


「安心しろよ、うっかり油とかそそがねぇからよ。つーかいい加減俺も疲れて来たからさっささとクリアしたいんだけど?」


「クリアさせないために僕らがいるんだけどな?ていうかその前に」




パァンと破裂音が洞窟に響く。わざとなのかそれともたまたまなのかはわからない。でも俺の右頬を銃弾がかすめて行ったのは確かだ。つぅと赤い線ができて血が落ちる。


もちろん本郷の目は笑ってない。


口元だけが弧を描いていてそれが嫌に怖い。そして未だに銃口は俺を捉えていた。




「僕を超えてけると思ってんの?僕以外の2人は置いといて、僕は君らよりも絶対に強いよ、ねぇアーサー」


「知らん。まぁでも強いんじゃないか?」


「ひっどいなぁ。あれだけ一緒に生徒会で働いたのに。でも本当、できないと思うよ。本多とかもわかってるでしょ」


「残念ながら。でも倒すだけが道の通り方ではない」


「言うねぇ。でもそれすらできないと思うんだ」




本郷はジャケットの内ポケットから何か紙を取り出すと封を開け読み上げた。




「『この手紙を持つ人物のみ坂崎聖来に会うことができる』つまり僕を倒さないとこの手紙が手に入らないわけで、倒さないで坂崎さんのとこには行けないってわけ」




これもルールの一つ


そう本郷は言った。


なにそれ。なにそれ、クッソ面倒だな!え?つまり厨二病ルールを解いてもその紙がなかったら意味なかったってことだろ!?


マジ主任殺す。


なんでったってこんな面倒なルール作ったわけ!?ぜってぇクリアさせる気ぃねぇだろ!!『やー君らの傷つくとこが見たくてね』とかシガー燻らせてんだろうなきっと!


じゃあ、なんだ、何が何でも本郷はぶっ倒さなきゃいけねぇってか。あれ、でも奪えばよくね?




「そんなことできると思いますか?ぼけ」




巻岡を下がらせた本多が隣に立つ。本多の武器はやっぱり槍で、切っ先は少し赤い。




「無理だと僕も思います。本郷は本当に強いですから隙をくれませんよ、きっと」


「お二人さんに否定されちゃ確実だわ、どうすんだよ」


「え?倒せばいいじゃないですか」


「そうですそうです。見た所君も強そうですし」


「は?なに言ってんの、俺?無理に決まってんじゃん」


「本郷!君と亜沙比の一対一でいいかな?僕たちはいろいろあるからさ」




え、なに言ってんの!?


いきなり2人はそう言い出し無笛は本郷に持ちかける。頭がおかしくなったんじゃねぇの!?と俺はあたふためくがそれよりも、本郷に了承しないよなと目線を送る。が、そこで縦に頷いちゃうのが本郷で




「面白そうだね、新しい相手っていうのは新鮮だから好きだよ」


「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「君かなり手馴れてるみたいだし。僕見えなかったよ?刃を展開させる時の動き。辰二も見えてなかったろう、巻岡もそこの2人も」


「だからサシにしたんですよぉ。駄目ではないでしょう」




満面の笑みで頷く本郷に東屋に移動するその他5人。取り残された俺は冷や汗をかきながらナイフをもてあんでいた。


え、マジでやんの…………?



















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