第 拾陸 話 ルール解けましたけど。









「って、思ったけどやめよう!うん!」



と、アーサー王(マジで…?)はにっこり笑って言った。パンパンと二回手を叩いて周りにまとわりついていた黒い変なのを散らす。そしてそいつの全貌が見えるようになる。何故か上半身裸なのはとりあえず置いといて。



「「「はっ…?」」」

「なに?その反応は。まぁ僕としては別に可愛い後輩と遊んでてもいいんだけどね。少し面倒が起きそうだからまた別の機会にしようと思ったわけだ」

「な、どうして…!」



すっ、とアーサーは後ろを指差して扉、と言った。



「閉めてこなかっただろう、君たち。おかげでここの歪みがだだ漏れだ」



アレ、ココニイチバンサイゴニハイッタノッテ。



「俺かっ」

「それに君たちの中に内通者がいるな。それとそれが相まって面倒が入ってきたようだ。こっちに来い。一旦隠れる」

「隠れるって、おま、警察だろっ!?」



つかどこに隠れんの!?その前にお前出だしあんなんだったのに信用できるかって!


と俺は言ったのに、2人は武器をしまってアーサーについていこうとしている。何、やっぱり王様だからですか、王様だからそんなに信用勝ち取るの速いのかな、だからそんなにイケメンなのかな!!!(関係ない)


半泣き状態の俺を見たクソ王様がくすっと笑って(いちいち鼻に付くなおい)、隠れる場所があることを教えてくれた。無笛はアーサーのことについて教えてくれて



「彼は中等部2年ですからオリエンテーションに関係はありませんよ。ですが前が前なので権限や権力はある、というだけです。それに信用はできますよ。彼は王なので」

「そうそう。僕は嘘はつけないし裏切りもできない。とても健全な王様なのさ」

「わかったからとりあえずこっち見んな」

「ひどい民だ」



やれやれと首を振るがその仕草でさえ煌びやかに見えるんだから、王族ってもんは本当にイライラする。


あれ、でも転生してるから王様でも王族でもないんだよな…てことは王様だからイケメンではない…?


てことはただのイケメン…っ!?


生まれつき王様ルックスなだけっ!!??


…俺のこいつに対する好感度がダダ下がりしたわ。王様だからイケメンならまだ許せたのに。


とまぁ1人でこいつの評価をG以下にしたところで、少し遅れた俺は3人に着いて行く。まぁ…信頼はできる…っぽいし?それにこんな地下、しかも意味わからん”歪み”だかがある場所で、地理もよくわかってない俺らがうろちょろするよりはマシだろう。俺的には、その、エルジェーベトの〈生まれ変わり〉に会いたい気もするんだけど…


…こいつら見てる限り会いたくなさそうだしなぁ


まぁまた別の機会に、ってことで。


少し残念に思っていると、先頭を行くアーサーがそういえば、と聞いてきた。



「そこの君は一体誰だい?忠勝が一緒にいるということはそれなりの前世、なのだろう?」

「は…?俺、一般人だけど」

「……そうなのか?忠勝」

「何故私に聞くんです。自分で確かめたらいいじゃァありませんか」

「え、だって面倒」



えらいバッサリ言ったな。面倒て。王様そんなこと言っていいんすか。


つーか



「【歴史科】にいるからって前があるとか思うなよ。俺みてぇな奴だって、たまにだけどいんだろ?あと言っとくけど、俺は歴史大っ嫌いだからな」

「なら何故入学できた。それに受験した?」

「…なんで入学できたかは知らねぇ。受験したのは…同中が勝手に願書書き換えたからだ。それに気がつかないで提出したら受かった」



その俺の言葉に3人は固まって歩くのを止めた。そして次の瞬間には大笑いしていて、本多でさえ腹を抱えていた。失礼な。確かに俺も悪いけどね?一番悪いのは朝倉の野郎だ。



「あほっ、なのは、わかりましたっ…でも、それにしたって、君っ、ぶはっ…歴史が嫌い、という割には…歴史をよくっ……ははっ…知っているじゃないですかぁ…!」

「……いい加減笑うのやめろよ。はぁ、叩き込まれたんだよ、昔、父さんに」

「お父上ですか。では先生か何かで?」

「あぁ、大学の教授やってたなぁー。ま、でも、もうずいぶんと家に帰ってきてねぇから…どこぞで死んでんだろ」



かれこれ10年以上前の話だ。一瞬空気がどよーんとするけど、アーサーがそれを直した。



「まぁ入学した経緯はいいが…名を聞いていなかったな。僕はアーサー・フォークロア。今更言う必要はないがアーサー王の”生まれ変わり”だ」

「亜沙比京、再三言うけど一般人だ」



手を差し出してきたんで、握手をする。にしても、本当にアーサー王の生まれ変わりなんだなー。あの人実在するかどうかもはっきりしてなくて、ほとんど伝説だと思われてんのに…。生まれ変わってるっつーことは、前があるってことだから実在の証拠、という意味で。


ほんと、【歴史科】ってなんでもありだな…


ここまでのラインナップすげぇぞ。うん。


そんなこんなでやっと自己紹介をした俺たちは、書庫とは反対方向に進んでいく。坂を下りて池を通り過ぎ、石壁に空いた穴を通っていく。そうして出たところは、薄く水が張っているこれまた幻想的な場所だった。



「ここなら面倒も入ってこれないだろう。充分に謎解きをすればいいさ」



中央には白い石の東屋があった。そこを指差したアーサーはそう言って、俺に手帳を出すようにいう。



「ここ、間違っているよ。罪ではなく罰だ。元が間違っていては解けるものも解けないぞ」

「あ、マジで?ありがと」



あー、マジかー。19番目の罪じゃなくて19番目の、ば、つ……



「あーーーーー!」



俺は思わずそう叫んだ。めっちゃ反響してうるさいけど、しょうがない。だって、叫びたくなるくらいわかったんだから。



「ソドムとゴモラの罰は『永遠の火で燃やされ続けること』だ!なぁ、この辺で火にまつわることないか!」

「え…ありましたっけ、本多」

「…いえ、ないと…思いましたけど」

「あるよ。火に関わること」



笑って



「第一のヒントはここを指していた。そして第二のヒントである『火』。京、第三のヒントはすぐにわかるだろう?」

「えっと、塩の柱はロトの妻でそいつの後ろは…」

「ソドムとゴモラは死海に沈んだとされ、死海にはロトの妻のものとされる”塩の柱”がある。それの、背後つまり北を正面とした際の後ろ、南はどこに通じている…?」

「紅海か…?」

「ああ、そうだ。紅海の伝説といえば?」

「え…っと………」



相変わらずアーサーは笑ったままだ。俺は考える。紅海にまつわる伝説、確か、何か、あったはずだ。そう、海の伝説…海、イスラエルの、方の…イスラエル…


そうか



「モーセだ。てことは、次のヒントの割られた石板の罪は、」

「十戒を示さなかったことだ。モーセが十戒を持って帰ってくる間に人々は別の神を崇めるようになってしまっていた。怒りに震えたモーセは石板を割る。割られたことは石板への罰、何故罰が与えられたかといえば、十戒を民衆に示すことができなかったからさ」

「それが、黙示録のラッパを鳴らす…?」

「すみませんけどねぇ、私たちにもわかるように言ってくれないと嫌なんですが」

「……ようはまぁ、地下書庫に火があってモーセがあってラッパが吹かれんだよ」

「わかりませんから」



スパコーン!といい音を立てて、本多は俺の頭を叩いた。ふ、ふざけてはないんだけど…。いちおうそういう解釈になる、し…?


俺が叩かれる様子を見てははっ、と快活にアーサーが笑って人差し指を立てながら解説を始めた。



「ようは、バートリから火をもらうのさ。そしてラッパを鳴らせばいい」



モーセだなんだはヒントのためのヒントだよ。


そう言って東屋に来いと手招きをする。そこには何故か服が干されていてそれにアーサーは袖を通した。そういやお前上半身裸だったな。



「あの地下書庫は殊更”歪み”が溜まる。だけどそれを管理できていてね、彼女は。”歪み”の中に鬼火と呼ばれるものがある、それを貰えばいいのさ」


最も、


とリボンタイを結び、上着を羽織りながら俺を見た。



「1人でも帰れたら百点満点だけど」



もちろん



「その1人もきっと瀕死状態だろうけど」



………何この学校!いい加減にしてよネッ!!!??

つか、いい加減、



「その王様フェイスのドヤ顔やめろよ!!!」



腹たつんだよ!!!!イマイチ難解な中二病ルールより!!




















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