第 拾肆 話 聖王登場を尊敬語で言ってください。








俺は前にも言ったように結構なゲーム好きだ。サバゲーも朝倉に誘われて2、3回やったことあるし、VRやりたいがためにわざわざPCを新調して(しかもドスパラのガレリアを買いました←ゲームするのに最高すぎるスペックを持つゲーミングpc←クッソ高い←70万くらいするお)毎晩遊んでるし。遊んだゲームはブログに感想書いて、しかもそういうブログん中じゃ結構有名なサイトになっているという。まぁ専門はPCのフリゲとか、PS系なものだからスマホゲームはあんましだ。ま、グ○ブルが唯一毎日ログインしてクエストこなしてるゲームだな。


つまり何が言いたいかって言うと、俺はかなりゲームが好きでかなりファンタジーとかの世界に憧れは、ある、ということ。


そりゃあVR(あ、バーチャルリアリティのことね)勢いで買っちゃうくらいだし、実際ダンジョンとかに行けたら超楽しいだろうなって普通の人でも思うと思うんだよ。


で、なんでこんなことを言ったのかというとね。

分厚い扉開けて地下書庫に入ったらですよ。



「マジでここダンジョン…!!!!」



まるでF○14の聖モシャー○植物園…!

そこにプラスMH○rdの水没林エリア8…!!

そしてRAI○のあの廃れた街並みが…!!!


あ、わかんない人ググってみて。


つーかね、マジでゲーム好きなら発狂するよ!?なんで学校の地下こんなんなの!?おかしいでしょ、なんで地底湖あんの、なんで廃墟あんの!怖いよマジで。楽しいけど!


1人でギャーギャー言ってるとうるせぇと叩かれる。叩いたのは本多で…なんか俺以上にテンションMaxな無笛には呆れてチョップかました。



「2人とも、ここになんで来たのか理解されていないようですねぇ。なんですか、観光ですか?観光したいならどうぞご勝手に。迷ったら100日は出てこれないと言われる地下書庫をどうぞ堪能してきてください。私はその内に謎を解いてとっととゲーむを終了させますから」

「んな堅いこと言うなよ。お前だって楽しんでるくせに。今ポケットにしまったスマホなんだよ、写真撮ってたんじゃねぇのか?」

「そうですそうです!滅多来れないんだからいいでしょ!…うわ、壇ノ浦より綺麗な水…!」



各々満喫しすぎな?でもマジでなんで地下がこんなんなんだ?水はあるわ木は生えてるわ建物はあるわで、本当に非現実的だ。鍾乳洞とかならともかく。んでそんなことはもちろん本多せんせーが知ってるわけで。聞いたら意外とすんなり教えてくれた。



「こんなに幻想的に造ったのは先代の学長ですよ。彼は夢を見ている人でしたからねぇ。掘ったらたまたま巨大空間にぶち当たったとかなんとかで、ちょうど敷地内なら造ってしまおう、と」

「 んでついでに図書の保管か?湿気ありすぎじゃね?」

「調節しているに決まっているでしょう。あぁ、そうだ。何回も言っている通り、ここはです。何が起きても不思議じゃありません、注意してくださいよぉ」



最悪、死にます。


そう冷たく言ってつい、とそっぽを向いてしまった。忠告してくれるのは嬉しいけどよ、お前俺のこと嫌いすぎじゃね、つか言い方。こいつぜってぇ社会でやってけないと確信しつつ、あたりを見てみる。


ほんと、地下帝国みてぇ。


今から行くのは地下に降りてきた階段からまっすぐ行ったところにあるでっかい建物。でっかいって言っても、武家屋敷とかにある蔵2つ分くらいの大きさ。煉瓦作りで蔦が絡み付いているのが遠目からでもよくわかった。イギリスの田舎にありそう。てか絶対あんだろ。


今すぐ写真撮ってTwitt○rやら○nstagramとかにあげたいけど、残念ながらここは地下。バリバリ圏外。俺初めてスマホが圏外表示してるの見た。今時どこも繋がってるからなぁ。


つーか、俺たちここに謎解きに来たんだよな。確か1行目がここを指してるっつーことで満場一致して、2行目が…なんだったっけ。スボンのポケットから手帳を取り出す。今時ね、律儀にメモ帳持ってる男子高校生なんてそうそういないと思うね。持ってると便利なのに。



「っと…あった。『創まりの19番目の罪が』か…。これ絶対”はじまり”がはじまりになってんのが鍵だろ…」



創まり、ねぇ。この字で思いつく始まりと言えば、俺が知ってる中で1個だけある。アダムとイブ、失楽園にノアの方舟やらバベルの塔やらヨセフやらが書いてあるアレ。


それは『出エジプト』の前巻にあたる『創世記』だ。


その19番目、つまり19章にあたるところの話はソドムとゴモラの話だ。要約するとアホなことばっかやったおかげで街が消えたっていう話が書いてある。


それが【ルール】の指してるこなら、あの書庫から『創世記』を探しだせばいいんじゃないか?


それを二人に言えば納得したように頷いた。



「イスラム教の啓典である『旧約聖書』の最初の本が『創世記』でしたかねぇ。その19番目の罪、ソドムとゴモラの街が焼かれた理由ということでしょう?確か…」

「wikiによると甚だしい性の乱れ、らしいぞ。つーか、あれだな、このロトっつーおっさんすげぇんだけど」

「ロトってドラ○エのロトですか?旧約聖書にも出てるんですか!さすがですねー!」

「いや無笛、絶対こっちが最初だから、絶対こっちが元ネタだから。てか『創世記』とゲーム一緒にすんな!」

「次の行の『塩の柱に変えられし人間の背後に』はそのロトの妻のことでしょうねぇ。彼女は振り返るなと言われていたのにもかかわらず振り返った。故に、塩の柱に変えられてしまった。実に、愚かな話だ」



俺のツッコミを無視して無笛はしきりに感心してやがる。人の話聞け。つか本多なに次の謎解きしてんの。こういうのって順序よくやんねーとごちゃごちゃすんだけど!


とりあえず、2行目が『創世記』でソドムとゴモラの罪っつー認識なのはOKとして、それが今度は何を示してるかっつー話だ。聞けばここはさっきの教会みたいに”そういう”話は無いみたいだし。だとすると…焼かれた、なのか?


いや、それは罰だ。罪じゃない。じゃあやっぱりそっち?アハンでウフンなことしまくった馬鹿がいたのか?ここに。そんで追われて、逃げて、結局火事で死んだ?違う、何かが違う。それだと次の行に続かない。塩の柱になったのは唯一善行をしていて難を逃れたロトの嫁さん。ロトは…警告をしに来た天使達が、街の男どもに狙われたのを聞いて、娘を二人差し出した…。


あれ、じゃあ、ソドムとゴモラの罪にも、当てはまらないか、それって。


すげぇ乱れてたんだろ?それを成敗するために神様は硫黄と火で街を燃やしたんだ。だけどロトは許された。なんで?いいことしてたから。だけど天使を助けるために…



「って、これじゃあ拡大解釈しすぎだっつーの…!あぁくっそ、わかんねぇ!」



わけがわからなさすぎる!こういう時の癖で、髪をガシガシする。将来ハゲるとか朝倉に言われ続けてきたけど知らん!


俺が煮詰まっているのが見て取れたのか、何故かその飴玉が乗っかってる白い手が目の前に出てきた。その手は本多の手で、当たり前だけど刀ダコとかが無い綺麗な手だった。



「甘い物を取ると脳が活性化すると聞いたことがあります。飴玉でも舐めてとっとと謎解きしてください」

「…嬉しいけどよ、お前軍師だろ。なんかねぇのか」

「私の頭脳はもっと重要な時につかうんですよ。こんなお遊びの時には使いたくありませんねぇ」

「…脳みそ使うしか脳がねぇのに」

「なんですって?もう一回言ってみなさい」

「わ、悪かった!謝るからお願いだからその短刀しまってっ!!??」



飴ちゃんくれた時は「なにこいつ優しいじゃん」ってちょっと、ミジンコ1匹分くらい株上がったのに今のでだだ下がりだよ!!つかこの学校頭に血上んのが速い奴多すぎなっ!?んでもってナイフ取り出す奴もね!


と、俺と本多が茶番をやってると「ねぇ」とそこらを探索してた無笛が何かに気がついた。そん時、この空間じたいがシン、と静まり返っていて、どこから来たのか、風が、ゆっくりと、水面を、撫でていった。



「本郷は…どこだろう…」

「え…」

「日向が分けた時、僕たちと一緒に地下に行くのは僕と本多、亜沙比に本郷でしたよ。本郷は地下に来る時、いましたっけ?」

「そういや、いないかった」

「ていうよりも地下道を通ってきた時からいませんでしたねぇ」

「はぁ!?」

「ええ、いませんでしたよ」

「んだよ迷子かよ、本郷も大したことねぇな」

「それはありえないですよ、亜沙比」



鋭い声で無笛がそう言う。青みがかった黒い目が何かを射抜くようにこっちを見ていて、本当に同い年かと言いたくなる。



「あいつはここの地図を見ていますからねぇ。迷うなど、絶対にありえない」



それよりも、と



「私たちは私たちの心配をしたほうがいいみたいですよ」

「は?なに言って…」

「はぁ…だから来たくなかったんですよ。ある意味来たかったですけど」

「だからなに言って」



ここに来たのが武器を持っていい日でよかったです。

というのが無笛。

本当ですねぇ。今日じゃなかったら絶対来ません。

というのが本多。


二人とも俺の横を通り過ぎて、本多は眼鏡を押し上げ、無笛はどっから出したのか刀を鞘から抜く。はぁ?と後ろを見れば何か黒いモヤっとしたのがそこにいた。それは霧みたいに動いて時折肌色を見せる。



「おでまし、ですねぇ。そしてお久しぶりですねぇ。会うまで忘れていましたよ。あなたもここに来ていたことを」



色素のない白い髪、それに消える白い肌。にやりと歪む赤い唇。ぞっとする、という表現が1番あっている気がした。でも、幽玄とも、美麗とも、醜悪とも、陰険とも、何とでもとれる雰囲気だった。



「君たちが僕に勝てばヒントを教えるよう、頼まれてな。なんせ年に一度のお祭りだ、せっかくだから遊ぼうと思ったのさ。だが安心したまえ、君たちが最初だ、ここに来たのは。他はなにをしているのだろうな」



温度が下がった。気のせいじゃない。絶対に、だ。この地下の、ただでさえ低い温度が、グンと下がった。そいつが喋った途端。


俺は動けなくてその場に固まった。だけど本多と無笛はそいつにジリジリと迫る。



「では、倒さないといけませんねぇ、こんな茶番はとっとと終わらせるに限る」

「ははっ、あんまり焦ってはいけないよ。焦りは死を招く。君らも体感しただろうに」

「ですが、貴方ほどではないと思いますよ。聖王ザ・キングアーサー先輩」









□□□◇


「…………いっけない、ねぇ!どうしよう。亜沙比くんが着いちゃったみたいなの!」











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る