第 拾弐 話 地下墓地に行くそうです。
新しくわかった【ルール】は4つ。
1つは俺たちの【警視総監】討伐。
1つは本多と日向が手に入れた『囚われた【泥棒】を助けると授業点が10点もらえる』
んで、この2つは外人2人組が手に入れたもんで『【泥棒】は更生することが、【警察】は堕ちることができる』と…
「『常闇に堕ちし聖堂のその地下に
塩の柱に変えらし人間の背後に
割られた石板の片割れの罪が
最後のラッパを鳴らすだろう』
………中二病か?」
「んー、疑問系じゃなくていいと思うけどなぁ。ほら、あの人アル・パチーノじゃん?
「格好つけてこれならあの人も終わりだと思うがな」
俺も本多と同じく。てかこれ【ルール】か?どっちかって言うと謎解いてゲーム終了!って感じじゃね。もしこれが【ルール】だったら俺たち常闇に堕ちた聖堂で19番目の罰受けて塩の柱になって後ろの石板の片割れでラッパ吹かなきゃいけないんだけど。なにそれカオス。てかカオスの前におかしい。あ、おかしいからカオスなのか?よくわからなくなってきた…
「ま、とりあえずそれは置いとこうぜ!まずは【警視総監】探さねぇとだな!」
日向がレイヴンが【ルール】を書き出した紙をペイっと放り投げて、地図の一点を指差した。
「俺は絶対ここにいると思うぜ!」
「体育館ですか、ある意味筋は通っていますねぇ」
「だけどよぉ?誰がそうなのかわかんねぇんだったら乗り込んだって瞬殺だぜぇ?ある程度目星付いてんなら、話は別だがなぁ。な、旦那」
「知らない」
そりゃそうだろうな、レイヴンの言う通りだ。現時点でわかってんのはここにいる全員は【泥棒】ってことくらいで、【警察】だったジャックはもう襲ってこないっていうこと。あ、これは本郷が命令したからで、ジャックは本郷に逆らえないそうだから確定だ。
俺はちょっと身を乗り出して地図を見た。高杉が厳重に地図を保管していた理由は、この地図には地下道やら抜け道やら隠し部屋の在り方なんかが事細かに書かれているからだった。
この寮棟にも道は張り巡らされていて、なんでも元新撰組隊員がしょっちゅう使ってるそうだ。サボるのに最適なんだと。
んで、ちょっと外れの方に見つけたのが十字架のマーク。そこにはバツ印が書かれていて【チカドウイッポンアリ】と書かれている。だけど続いて【キュウドウニツキ、ホウラクノキケンセイアリ】とあった。
「あ、そういえば壱組の中で【泥棒】なのはどうやら私たちだけだそうですよ」
「そうなのか?じゃあ外の奴らは?」
「あれは日本大好きな外国クラスの方達です。ほら、ジャポニズムとか流行ったでしょう?」
「あぁ…あれか。モネだかいう絵描きとかか…」
「そうそう。あとは僕の中等部時代からの知り合いですよ」
「ペリーの旦那とかはいんのか」
「お、じゃあロンダークの旦那もいるんじゃねぇのかぃ」
「誰ですかそれ。聞いたことありませんよ」
「…なぁ」
地図と変な
「ここの十字架って教会なのか?」
ほんとに地図の端っこ。この寮棟から東に行ったところに(校舎なんかは西の方だ)ちっさくそれはある。眼鏡をぐいとガリレオの如くあげた本多は「そうです」と答えた。
「
「何の?」
「歪み、ですよ。よくあるでしょう。ライトな中二病小説に。時空を捻じ曲げてるせいで歪みが溜まるだのなんだのというやつ。まさしくそれですよ。本来転生というのは前世の記憶を真っ新な状態にして行われますが私たちは例外でしてね。おかげでちと面倒なモノまで付属してきた」
「とまぁそんなこんなで隅っこの宗教施設には面倒なモノが溜まりやすいんだよ。生徒会と風紀委員が除去作業やってるみたいだけど…ここは別の理由で封鎖されたんだよねぇ…」
本郷が本多にねぇーと目線を向けるとふいっと顔を背けた。なんだ、なんかやましいことでもあるのか。聞けばまぁなんとも面倒な問題で。
「姦淫ですよ。中等部時代、そこで肝だめしが行われるという情報が生徒会に来ましてね。行ったらそうじゃないですか。しょっ引いて封鎖。ま、私的には伴天連連中に牽制できたんでいい事件でしたが」
「おい本多ぁ、それ以上言うならヤク中にすっぞ」
「レイヴン、お前が言うとマジにしか聞こえないからヤメテ。てかじゃあここは教会なんだな?」
「そうですよ。さっきから何回も言ってるじゃないですか」
「じゃあ地下に何かある?」
「確か…斎藤の野郎が何か部屋があるとか言ってたな…」
げ、斎藤一も転生してんの。新撰組転生しすぎじゃね。てかぜってーそれじゃん。『常闇に堕ちし聖堂のその地下』。
「どーやら【警視総監】見つけるよりこっちの方が速そうだぜ…?」
□□□□□□□
「とかかっこよく言ってたのは誰かなー?」
「だってあれぜってぇそうじゃん!字面見てもここの背景見てもぜってぇここだろ!」
「俺もそう思ったんだけどなー!」
「お!日向、お前もやっぱりそうおも」
「やっぱ違ったかー!さっすが本多!」
「そっち派かよ!」
はい、すいませんね、間違えて!だけどだってドンピシャな条件だったんだもの!人間だもの、間違えていいじゃない!
とか一人芝居やってる場合じゃなくて。
俺と本郷、高杉の3人組にうるせぇ5人が追加で8人で寮棟の地下のせっまい道を通り、一回地上に出て【警察】に捕まりそうになりながらも、このオンボロ教会に来た。祭壇が動かせるようになっていて地下に降りたはいいものの、全くの外れ。ただの物置で特に探しても何も出なかった。
つーわけで集団リンチにあってます。
神様助けて。
「でもさぁ、筋はいいかもねー。もしかしたら【
ああ本郷!お前が神様だったか!
「だけど外れたらねぇ…使えないコマは無用の長物にもほどがるよね。いっそチェス駒にする?それならまだ使い道あるかも」
残念外道だった。
「…………ち」
「んー?旦那、何か言ったかぃ」
「…地下墓地」
元・アンデルセンが久しぶりに口を開いて、レイヴンの後ろに隠れつつそう言った。レイヴンは酒瓶に直接を口をつけてジュースのように酒を飲むと、ああと頷いた。
「
「おい呑んだくれ」
「あー?んだよ偏屈ジジイ」
「……かたこんべとは地下墓地のことか」
「そうでごぜぇますよ旦那様。あんたが言いたいのは地下墓地が聖堂代わりだったってことだろ?アンデルセンの旦那」
そうか、昔迫害された
初期の基督教徒。つまりはローマ帝国時代の基督教徒のことだが、彼らは第二次世界大戦の頃の
そんなこんなでやってられっかと思った基督教徒は地下に逃げるわけだが…その時に使われたのが
「地下墓地ねぇ…高杉くん、あそこ確か地下墓地だったねぇー」
「…俺は行きたくないな」
「げー、俺もやだー!」
「私もパスです」
「誰があんなところに行くか」
「やー、俺もあっこはパスしてぇな」
「パス…」
「…………すげぇ嫌な予感しかしないけどまぁ聞いてやる。どこだ」
本郷があそこと言った瞬間皆の顔が青を通り過ぎて白になった。あのね、ここまでお約束みたいな会話をやると思ってなかったよ俺。さっき本多ライトな中二病小説がうんたらこうたら言ってたけどココがまさにそうだからね。つかあんたらがそれだからね?文字通り体現してるからね!?
「……さっき歪みの話したでしょ。そこがね、1番スゴイところがあるんだ。とりあえずトイレの花子さんくらい余裕でいる」
「余裕なのか」
「余裕。で、そこに1人住み着いてる不登校の子がいてね。初等部4年から来なくなった子なんだけど…まぁ場所が場所でしょ…だからさ…その…」
「んだよはっきり言えよ」
「その場所って図書室に入りきらなかった古い本とかをしまっとく地下書庫なわけね?もう今時の子は絶対読まないって言っても過言じゃない…例えば僕の或阿呆の一生とかさ、そういうのばっかあるんだ。暗い地下にあってしかも読まれない、要は使われない死体みたいな本たち。ついたあだ名が
「本の虫が本の墓場に住み着いたんですよ。要は」
心底胸糞悪いという風に本多が言って、苦笑しきりって感じだった。
「近づく者を徹底的に排除する番人、それが高校第二棟にの地下にいる。常闇に堕ちたにも当てはまるんじゃないのか。しかもそこの地下って書いてあるんだろう?さっさと行ってさっさと地下を確認するしか手はなさそうだ」
「なら俺と晋作が囮になるからお前らで地下捜せよ!」
「妥当だろうなぁ。俺と旦那は外で【警察】見張ってるよ」
「私と篤、京に直治ですか…仕方ないですが…」
「じゃあ行くぞーー!!」
つーことで、俺的には危機がよくわかってないんだけど地下書庫という名の墓地に行くことが決定した。ちなみにそこに行くまでに元中国人の軍人【警察】(という名の暴君)に追いかけ回されたのはまた別の話。
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