第 陸 話 それをオリエンテーションとは言いません。
なんだかんだ言って同室者の江戸川とは気が合い、夜中の三時過ぎまで某有名引っ張りハンティングゲームを一緒にやっていた。そこで知ったのが江戸川が超ゲーマーだということ。某有名引っ張りハン(ry…のボックス見てみ?あなたどんだけやり込んでんすかっつー話だよ。
俺コツコツ無課金でやってこないだやっとランク100いったんだからな!やっとシンドバッドきたんだからな!お前なんでルシファー三体もいんの!?その運ちったぁ分けろよ!
…あと、あいつの林檎端末の容量のほとんどがゲームっつーね。de○moとかの音ゲーに始まりグラセ○だろ、グラブ○だろ、もちろんパズド○やってるし、とりあえず有名どころはコンプリートしてたな。
もちろんケータイ以外のゲームもすごい。PSシリーズ全機種持ってたし。あと、俺も興味はあった○sycho-break○とか持ってたし。まぁとにかく、言うのも面倒なくらい江戸川はゲーマーだった。
一番気になったのは…
「…p○初代がちゃんと動くっつーことだよなぁ、しかも修理に出した事ねぇって…」
「ん?どないした?京」
「…なんでもない、人は見かけによらねぇなぁって」
江戸川っていかにもモノ大事にしなさそうなんだけどなぁ。○sちゃん愛されてるわ。
はい、つーことで只今俺と江戸川は部屋のリビングで朝飯食ってる。メニューは俺特製の蜂蜜トーストとコンソメスープ。俺はオーブントースターで食パンを焼くのが得意で(一番使える特技だ)、今日の食パンもいい具合に焦げ目がついていた。江戸川も美味そうに頬張っ
「俺は白米の方が好きなんやけどなぁ」
…そうですか。じゃあ明日っからは自分で作れ、俺はパン派だ。それもフジ○ン本仕○み〜♪しか認めねぇからな。
□□□□□□□□
「おーし、さすがに今日は遅刻した奴はいねぇな。サボりも無し、と」
「…なぁんで俺見ながら言うかなー」
「いんや?俺はお前の向こうの向こうの虎宮を見てたんだぞ?自意識過剰なんじゃねぇの?」
それもそれで問題だろ!
俺のツッコミを華麗にスルーした仲原は、教師っぽい黒のバインダーを開いて今日の予定を言った。相変わらずキャラの濃いこのクラスの面々は、伏せたり本読んだりメイクしたりと、ほとんど一人も真面目に話を聞いてない。あ、二井八は別な。あと俺も。
「…で、今日はオリエンテーションあっから…って。誰も聞いてねぇな。まぁーお前らのこった、
「…きりーつ、あざっしたー」
だっるだるなSHRを終わらせた仲原は口笛吹いて教室から出て行った。みんなもだらだらと席を立って体育館へと足を向ける。俺も行こうと腰を上げた。
つーか眠ぃ…遅くまでゲームやりすぎた…
そんなことを思いつつ廊下に出ると仲原に襟を掴まれた。
「なっ、なんだよっ!」
「おー怖、これだから最近の若い奴ぁ。すぐにキレる」
「うっせぇな。んだよ、いきなり」
「お前にオリエンテーションの事言い忘れてたからな。文句言われる前に詫び入れとこうと思って」
「…詫び入れるような事起きんのかよ」
「まぁな。今年はお前以外全員内進生だから知ってんだよ。オリエンテーションがどういうもんか。だからお前、気をつけろよ。今日くれぇなんだよ、
ま頑張れや、と仲原は肩をポンと叩いて体育館に向かっていった。
…俺が今から行くのってオリエンテーションだよな?
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敷地がでかけりゃ建物も必然的にでかくなる。それはもう自然の摂理で、この学園も例にもれなかった。天井は梁にバレー部やバスケ部がボールを挟めないくらい高く、横は20mシャトルランが100mシャトルランになりそうなくらいだった。実際はそんなにでかくねぇんだろうけど。
そんな体育館に、今年入学した【歴史科】の生徒が勢ぞろいしていた。んで、何故か後方には先輩方が…。さらに何故か二階からは【
本当にこれオリエンテーションなんだよな!?
観覧者がいる時点で俺の頭ん中の警報が鳴り響いている。ぜってぇヤベェって。だけれど俺は入学式エスケープという前科ぎあるため仲原の監視の目が厳しい。逃げ出そうにも逃げ出せない状況だ。しかも一番前だし。
亜沙比という苗字のおかげで、出席番号順に座る時は必然的に一番前だ。で、目の前。主任と呼ばれていた男がマイク片手に喋りだした。この主任がさ?うん、まんまアル・○チーノなんだよ。要するにゴッ○ファーザー、要するにマフィア、要するにドン。しかも声は超重低音。うーん、俺こんな日本人離れした日本人初めてみたわ。
「さて、諸君。今年は何故かは知らんが有名どころが揃った。【亜細亜】の卑弥呼に明智。【北欧州】のバートリ・エルジェーベト。【南欧州】のアメリゴ=ベスプッチ、フランシスコ=ザビエル、なんかだ。故に、上と協議した結果【
………
「ちょっと待てぇぇぇぇ!」
俺は思わず立ち上がってそう叫んだ。
何!?本当にこれオリエンテーションの説明!?おかしいだろ!つかさっきからおかしいって言ってるよな!?いいか、オリエンテーションっていうのはなぁ!
【オリエンテーション】
《「方向付け」の意》
新しい環境などに人を順応させるための教育的指導。特に、学校・会社などで、新しく入った者に対し、組織の仕組み・ルール、学習や仕事の進め方などについて説明すること。
by・goo国語辞書
っていうことだなんだよ!健闘を祈ってもらうもんじゃねぇ。あと医務室に行けだの怪我人だのなんだの、そういう類の言葉を聞くもんでもない。断じて違う。
「…君はイレギュラーの、亜沙比君だね。どうかしたのかい」
「どうかどころか意味わかりませんって。なんですか、怪我人って、おかしいでしょ。だって、オリエンテーションなんでしょ?」
「ふむ、君の担任である仲原君は何も言わなかったようだね」
「あいつが何か言うように見えますか」
「見えんな」
おいおい、そんなはっきり言っちゃっていいの。パチーノ主任。あかんでしょ。
俺のそんな思いは口に出さず、ドンはドンで口に笑みを浮かべた。
「それじゃあ、ルールの確認がてら説明をしようか。君は座りなさい」
俺の両肩に手を置くと、ものすげぇ力で座らされた。勢いよく打った尻が痛い。ドンは笑顔のままマイクを持ち直して目線を俺から外し、口を開いた。…この学校にはこんな奴ばっかかよ。二井八以外マトモな人間に会った気がしねぇんだけど?もちろん、先生を含めて、だ。
「世界に、そして日本には幾つか旧歴史の担い手の生まれ変わりや先祖返りが通う学科、【
わかったかい、とドン主任は聞いてきたけど、わかったのは超ギリギリなパクリくらいだ。あ、著作権どうのこうののギリギリじゃなくて、センスと語呂的にギリギリってことね。
ともかく、なんかすっげーメンドクセェってこともわかった俺は尋ねた。
「今回の、ルール、っつーか、種目?は何なんすか」
「ああ、今発表しようと思っていたとこらだ。今日は毎年恒例オリエンテーション特別【倒会議】、[ケイドロ]だ」
「…はっ?」
「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
「うわっ、何だよ!」
思わず耳を塞ぎたくなるほど、体育館は歓声と雄叫びでいっぱいになった。先生達が静かにしろ、と声を張り上げて、数分後、ようやく静かになった。
「亜沙比君、ケイドロのルールは知ってるだろう?」
「警察と泥棒に分かれて警察が泥棒を捕まえて檻に入れるっつー遊びっすよね。小学生とかがよくやってる…」
「そうそうそれそれ。それをね、少しアレンジしたものをやるんだよ」
そのアレンジ聞きたくないなぁ、という顔をしたけれど、主任はそれを無視して話を続ける。
「警察はそのまま警察だ、泥棒には
「ちょ、待てよ、それじゃあ泥棒は不利じゃねぇか。逃げたって何にも貰えな、いってぇぇぇ!」
「まったく、人の話は最後まで聞かんか。泥棒は終了のベルが鳴るまで逃げることができたら自分の賞金の3倍の金をあげることになっている」
「賞金はどうやって決まんだよ」
「さぁな。毎回ルールは途中までしか教えん。全てのルールを知りたいなら逃げ続け、知ることだ。さて、ルール説明は以上だ。十分後に始めるから今の内にトイレに行く者は行ってきなさい。自分が警察か泥棒かは昨日入学式で配布したブレスレットで確認できるはずだ。不具合で確認できないものは担任に聞くように」
ああ、それと
「精々死なない程度には頑張ってくれたまえ。今年は葬儀を出したくないのでね」
………去年は出したってことかよぉぉぉぉぉぉ
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