第 参 話 衝撃事実です。
「で?二人仲良く少女漫画満喫してきたわけか」
もじゃもじゃ頭の丸眼鏡をかけた男が、イケメンフェイスには似合わずガンつけてきた。なんだろ、インテリ系なのにこのヤク◯が拭えないのは。
まぁなんでこんな状況になってるのかというと。
あれから1時間半ぐらい二井八と話していたら、入学式が終わったようで少し騒がしくなったので、体育館(実は体育館は少し離れただけの所にあった…それでも行くのが面倒な位置だった)に行ってみた。ちょうどわらわらと人が出てきたのでその後ろにそれとなーく着いて行き教室までたどり着いた。この学校、土足オーケーな学校だから外から入っても靴を変えなくて良かった、俺たち的にはラッキーだ。
ちなみに二井八も同じクラスで、一緒に怒られてもいいはずなのにすでに席についている。男女差別ひでぇなおい。
「まぁ…はい、そうっすね」
と俺は担任の
「じゃあ意図的にサボったんだな?てめぇはアホか、じゃなかったら馬鹿か。新学期早々俺に恥かかせやがって。今すぐここで三回回ってワンだ」
「いやなんすかその古典的屈辱は」
「知るか。じゃあなんだ、他のがいいか?クラスメイト全員の前で全裸オ◯ニーでもするか?あ?」
「ごめんなさいすいません申し訳ありませんでした」
「わかりゃあいいんだよ。わかりゃ。とりあえずてめぇみたいなクソガキに時間取るのも癪だからとっとと席つけや」
と、しっかり俺の頭を手に持っていたバインダーで叩くのを忘れず、仲原は一つだけ主人がいない一番窓側の一番前の席を指差した。
うーわ、一番前かよ…
授業寝れねー…
そんな事を思いつつ鞄を机の横にかける。早速頬杖をついて仲原の話を聞こうとすればチョークが吹っ飛んできた。
「てめぇ…いい加減にしろよ…」
「それはこっちのセリフだ!くっそいてーんだよ!ちっとは加減してくれよな!」
「アホ。加減したら指導の意味がねぇだろうが」
「これ指導なのかよ!」
いいか!指導っていうのはその対象が良い方向に向かうようにすることで、決して殴るとか物投げつけるとかそういうのを言うんじゃないんだからな!
華麗に俺のツッコミをスルーした仲原は嘘くさい笑顔で自己紹介を始めた。聞けばまだ28歳でこの学校以外行ったことが無いらしい。OBで、しかも小・中・高・大とここの学校に通っていたからまさに勝手知ったるなんたらという奴だ。さらに
「俺も”生まれ変わり”だから」
えー…仲原もかよ…
じゃあ、誰だ?傲岸不遜で口悪くて魔王みてぇなやつっていたか?うーん、ここ【亜細亜コース】だからな、多分日本人だろう。
【歴史科】には5個のコースがある。
この【
2組と3組の【
4組が【
で、5組が【
…やっぱこの科ねぇわ。
せめてマシな奴でいてくれよー、仲原。頼む。あ、仲原だから中原中也か?それだったらちょっとメンタル面倒くせぇかもしんねーけどいいんじゃね!?『汚れちまつた悲しみに』とか言わねーといいけども!あと酒飲まなきゃ。
とまぁもちろんこの期待は裏切られた。
「俺は
最悪ーーーーー!ここで源氏来るかーーー!
しかも義仲ぁぁぁ!!!
最期に『女が俺の最期に一緒にいるんじゃねぇ、邪魔だ(いてほしいけどお前は落ち延びろ)』とかツンデレぶちかました義仲来ちゃったぁぁぁぁぁ!!!
いやー、まじかー。俺結構さ、倶利伽羅峠の件りとか好きだったんだけどなー。
つかこのクラス将軍しかいないんじゃね!?明智だろ、こいつだろ、噂じゃ前田利家もいるらしいし。あ、でもそのくらいか?いや、あともう一人安土桃山の”生まれ変わり”だかがいるとかなんとか朝倉言ってたな。
誰だったかなー…
なんか…みんな知っててすげぇ有名な奴だと思ったんだけど…家康じゃなくて…織田は3年にいるから…上杉?伊達?武田?柴田?北条?島津?本多?
ちげーなー…
なんか、こう、もっと知ったらえげつないインパクトのある奴だと思ったんだけど…
ま、これからわかるか。
ちょうど俺がそう思った時、次は生徒が自己紹介をする番になった。本当は明日やるつもりだったらしいが、親は来てる奴少ないしほとんど全員寮生だから今日やっちまおうとか言い出した。
…俺一番じゃーん。
こういう時あ行の名字だとやだよねー、テスト返しん時はまぁいいんだけど。
つーことで、俺は椅子から腰を上げた。
「えーっと、名前は亜沙比京っていいます。誕生日は4月23日で、血液型はB。中学は公立の飯島中に通ってましたー…あとは…えっと、ああ、趣味が楽器弾くことでとりあえず何でも弾けます。バンドやれたら楽しーなーとか思ってるんで、やりたい人は声かけてくださーい」
以上でーす、と座りかけると案の定仲原が「おいおい、お前なんの”生まれ変わり”だよ」と聞いてきた。いやいやお前は知っとけよと思いつつ、半目になりながら誰でもない事を言った。
仲原はそういう奴もいたっけなと頷き、周りの奴らもそれで納得したようだった。ちょっとざわついたのは珍しいからだろう。けれどそこまで表立っていないのはあり得ないことではないから。数年に一度はこういうことがあると言っていた人がいる。
で次の奴は俺の後ろの奴で、桜咲きまくってるっつーのにスカーフをぐるぐる巻きにして顔半分を隠し、前髪が長く顔が全くわからんよくわからん奴だった。
「………
?
今何つった?
妓和はふぅと息を吐いて座った。か細い声はしんとしている教室になんとか響いたけれど、最後の言葉は耳を疑った。
卑弥呼ってーと、あの卑弥呼さん?え、木曾義仲よりも衝撃だわー…うわー…まさか、え、まじで?
超大物じゃん。絶対歴史の授業でやる人じゃん。とりあえずみんな知ってる人物ナンバーワンじゃん。ブッチ切りのトップじゃん。邪馬台国どこにあったか超聞きたい。まじで今も鬼道使えんのかな。
…でも卑弥呼じゃなかったんだよなー。俺が朝倉から聞いたすげぇ有名な人物。
衝撃の人物とクラスメイトになった事に少し面食らいながらも、自己紹介は続いていった。
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