第二幕 『ウォー・オブ・エルダーゴット』
『ウォー・オブ・エルダーゴット』 第一部
第零章 『ジ・エンド・オブ・ザ・ビギニング』
流輝の消失から一年
『旧神』の進撃が始まってから数日
場所はバミューダトライアングル中心部
ダーレス率いる『イカン』と『シュブ・ニグラス』は、そこで発見された『旧神』の本拠地である巨大移動要塞、通称『タワー』の攻略作戦が行われていた。
『シュブ・ニグラス』からは『コス―GⅥ』をすべて放出し、敵を叩きのめしていった。
しかし、この作戦の中核はミリアとアリサの二人だった。
ミリアは敵の陽動、通称『エルダー』を殲滅しつつ、アリサの『タワー』侵入を手伝っていた。
しかし今は余りに数の多い『エルダー』に苦戦を強いられていた。
『タワー』は空間圧縮装置を駆使し、内部に広大な空間を保持していた。 その中には大量の『エルダー』が待機しており、それを大量に出撃させていたのだ。
ミリアは『ナイア』の手にカノン砲を召喚すると、辺りにビームをまき散らす
『エルダー』は質より量、ある程度の質もあるが『ナイア』の敵では無い、カノン砲の連射であっさり倒すことができた。
しかし、数は多い。
ミリアは顔を上げると、次々と襲い掛かるエルダーの射撃を躱していく。
まるで筒のような形をした体に、細い胴体、筒の左右に手が生えていて、さらに細い下半身から足が二本生えていた。
不気味な形をしたそれは腕の下にあるビー砲の銃口を向けるとそれを連射して来た。
ミリアはコクピット内部で少し焦ると辺りを見渡し敵の数を確認する。
しかし、おおすぎてわからない。
「クソッ!!」
悪態をつくと、すぐさま次の敵を狙う。
一年という月日は人を変えるのに十分な期間らしい、流輝が消えた頃はまだ子供っぽさが残っていたのだが、今ではそんなことが亡くなって来た。
身長は数㎝伸びていて、体には筋肉が増えて、以前よりがっしりとした体つきになっていた。目はより鋭くなり、体に来ているスーツをしっかりと着こなしていた。
しかし、一年前の面影はしっかりと残っていた。
ミリアは『ナイア』からミサイルを大量に放ちつつ、通信をアリサにつないだ。
画面に映ったアリサの姿は一年前とあまり変わらなかった。違う点といえば、ポニーテールを止めて髪を長く伸ばしていた。
さらに、表情は少し和らいで越したが当時の面影を残したまま少し焦った顔をしていた。
「アリサ!!まだなの!?」
『待てよ、な、急ぐ乞食はもらいが少ないっていうだろ』
「何か、違う!!」
ミリアは特攻を仕掛けてきた『エルダー』を回避すると、刀を大量に召喚すると、それを一斉に投げつけた。
それらはモススピードで飛んで行くと、そのまま数十機の『エルダー』を破壊していく。
その間も次々と通信が飛び込んでくる。
『敵影、残り一五八!!』
『『コス―GⅥ』残機十五機!!』
『今、連絡が来ました、米軍からの援軍は来ません!!』
『『アザトース』、出るぞ』
「うるさいな!!」
ミリアはブチ切れると、カノン砲を十五機召喚すると、辺りにやたらめったらビームを放ち、次から次へと『エルダー』を落としていく。
その時、ダーレスが通信を繋いできた。
『さっき聞いただろう?私が出る、援護してくれ』
「そんな暇あるか!!」
ミリアは怒りに身を任せて叫ぶ。
そしてそのまま怒りを体現するかのごとく武装を召喚し、大量に攻撃を仕掛けると、破竹の勢いで進撃していった。
ダーレスはその姿を見てため息を吐くと単機で出撃していった。
その数分後、アリサが侵入に成功したらしい。
ミリアはそれを繋がれた通信からそれを知った。しかし、通信画面には『SOUND ONLY』と出ていてアリサの顔は出ていなかった。
しかも、その画面ですら砂嵐寸前だった。
そこからか細い声が聞こえてきた。
『ミリ………潜入成功……これ……』
「アリサ!?聞こえないけど!!」
『空間婉曲……通信がと……みたい……』
話しが途切れ途切れな上、雑音が混ざっている。うまいこと話を聞きとることができず意味が分からなかったが、何とか大体理解することができた。
空間が曲がっているせいで通信が届かないらしい。
ミリアは舌打ちすると、攻撃を続けていく。
しばらく通信ができないということを諦めたミリアはしばらくの間、延々と攻撃を続け『エルダー』を落としていく。
アリサが侵入に成功してから十分後
『タワー』に異変が起きた。
半分以上の『エルダー』を収納すると、辺り一帯にシールドを張り、空間圧縮を始める。虚無空間の発生も確認することができた。
『エルダー』の攻撃も和らいでいき、どちらかといえば防戦のみになって行く。
どうやらこの場で別な場所に転送するつもりらしい。
辺りの空間が歪んで見えてくる。『シュブ・ニグラス』の通信からもその場から退避していくような命令が聞こえてくる。
一旦後退することにしたミリアはミサイルを次から次へと放ちつつ、ゆっくりと『タワー』から離れるように移動していった。
ミリアはそこまで来て、あることに気が付いた。
アリサは?
「マズイ!!」
ミリアは急いで通信を繋ぐとアリサに注意を呼びかけようとする。また流輝の時なような目に合うのは金輪際ごめんだった。
その時、気が付いた。
通信がつながっている。
「え?」
アリサからのものかと思い、急いでそれを見てみる。すると、予想通りアリサのものだった。
それを確認した次の瞬間、そこから声が聞こえてきた。
しかし相変わらず雑音が多く声も途切れていた。それでも聞き取ることができた理由は、アリサの声がとても大きかったのだ。
だが、その意味はさっぱりだった。
はっきりとした形を持たない言葉をミリアはただひたすら聞くしかなかった。
『そうか……そう……事だっ…のか…!そんなことの為に…………、ミリ………流輝は、ボ……来たのか!!全て…………りと分かった!!馬鹿らし……る!……思わないか?なぁ流輝!!……もそう思うだ……!なのに、ボク……………は…か……か!!最高傑作じ……いか!!』
ミリアはそれを聞いて何もできなかった。
何かをいう事も、何かをすることもできなかった、ただひたすらその場で固まる以外のことができなかった。
無力感を感じる暇も無い。それだけいきなりの事だった。
頭が完全にこんがらがっていた。
今までで一番困っていた、『ナイア』が現れた時より、流輝が消えた時より、『旧神』が出現した時よりも、困っていた。
何をしたらいいのか分からなかった。
それはダーレスも同じらしい、『シュブ・ニグラス』の通信からも無言の圧力がのしかかってくる。
しかし、その重さを感じる暇も無かった。
戦場全体が困惑に包まれていた時
次の瞬間
空間圧縮率が限界を迎えた、虚無空間がどこかに繋がりそこへ向かって『タワー』が吸い込まれていった。
姿が少しずつ消えていき、その向こう側の空間に吸い込まれていく。
ミリアはそれを見送ることしかできなかった。
アリサを助け出すことすら忘れていた。
否、体が全く動かず助けされなかったのだ。どうして体が動かなくなったのか分からない、恐怖によるものか、はたまた畏怖によるものか
それすらもミリアには分からなかった。
数秒後、
『タワー』は完全に消えた。
そしてその場に残されたのは失意の者達と戦いの傷跡、そして…………
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