第三部-第五章〈下〉 『ザ・ファイナル・バトル・イン・オール・アウト・ウォー』


 「『FAクトゥルフ』行きます!!」

 『はい、どうぞ』

 補給は一瞬で終わった。

 なぜなら、ポットを切り離して新しいものを接続するだけ、五分もかからず終わる簡単なお仕事だからである。

 再び宇宙空間に飛びだした流輝は、すぐにバランスを整え、戦闘態勢に入った。

 が、今度は敵のいる所へ飛んで行くことは無い。

 『シュブ・ニグラス』上空に行くと、そこから辺りの敵を見渡し、接近する奴がいないか確かめる。

 すでに月は右手に見えていて、裏に回るまでさほど時間はかからないように思えた。

 しかし、はっきりとを駆ることが一つあった。

 それは、戦線が徐々に『シュブ・ニグラス』に近づいて来ていることだった。

 「……、危ないな」

 流輝がそう呟いたとき

 こちらに近づいて来ている敵影を五つ発見した。それは、迷う事無く真っ直ぐに進むと『シュブ・ニグラス』の方へ近づいて来ているのが分かった。

 一目見た瞬間、流輝は気が付いた。

 『ハスター』だ。

 流輝は飛び立った。

 今すぐ『ハスター』を落とさなくてはいけない。そう思ったのだ。

 その時、アリサから通信が入った。

 『流輝、そっちに『ハスター』が!!』

 「知ってる!!」

 『それと、『ハスター』の正体が分かったぞ!!』

 「何!?」

 流輝はとりあえず、四十八連ミサイルポットを一つだけ開き、ミサイルを放つと『ハスター』の足止めをする。

 アリサの話をしっかりと聞きたかったためだ。

 『いいか流輝、簡潔に言うとなその『ハスター』達は残った『ガタノトア』に搭載されている『本体AI』に操作されている外骨格だ』

 「『本体AI』?」

 聞きなれない単語に流輝は眉をひそめる。

 アリサはそんなことに気付かず話を続ける。

 『あの『ハスター』は偽物だろ、つまりさっき言った『本体AI』が『ハスター』と『ビヤーキー』を操作しているんだ!!』

 「そういう事か!!」

 流輝は納得した。

 そういう事ならあの一糸乱れぬ連携も納得がいく。

 しかし、それだけ油断ならない敵だという事でもある。

 流輝は気を引き締めると、期待を回転させながら『ハスター』の集まっている所へ向かって行く。

 まるでコマのように回転する『クトゥルフ』を見て、『ハスター』は一瞬、動きを止めるも手の平のビーム砲を向け、攻撃を仕掛けて来ようとした。

 が、流輝はそれより先に攻撃を仕掛けた。

 全部装を展開し、一斉発射する。

 それは回転しながらだったので、ミサイルやビーム、レーザーたちは複雑な軌道を描きつつ、全体的にばらまかれるような攻撃だった。

 しかし、それで『ハスター』を倒すことはできなかった。

 なぜならエネルギー膜発生装置を起動せ足り、回避したりしたため、五体とも残ってしまったのだ。

 しかし、二機の『ハスター』が偶然命中したミサイルやレーザーによって発生装置が壊されてしまい、使用できなくなったらしい。

 これは好都合だった。

 流輝はにやりと笑うと、防御ができなくなった『ハスター』から叩くことにした。

 といっても、やることは単純である。

 近づいて、殴る。

 「行っくぞぉ!!」

 流輝はそう叫ぶと肩のガトリングガンを乱射しつつ、その二体の『ハスター』の元へ接近していく。

 その時、後ろに一機の『ハスター』が回り込んできたことが分かるが、流輝はバーニアからレーザーを放ち、牽制するだけにとどめておいた。

 そして、目の前にいる『ハスター』にのみ集中する。

 『ハイドラ』の砲口を向けるとレーザーポットから十六筋のレーザーを放ち、『ハスター』を何とかしようと試みる。

 すると二体の『ハスター』は『FAクトゥルフ』の下に回るように移動し、レーザーやビームの弾を回避した。

 しかしそれは流輝にとって予想通りの展開だった。

 『ハイドラ』の砲口は前に向けたまま、それに付いている四門のビームライフルを下に向けると、狙いを定め『ハスター』を撃ち落とそうとする。

 「死ね!!」

 四筋のビームが二機の『ハスター』を狙う。

 一機の『ハスター』には逃れられたものの、もう一機の『ハスター』には命中、胴体と足を含め三か所に風穴を開けた。

 「よし!!」

 やったかと思われた時

 その『ハスター』は手の平を『FAクトゥルフ』に向け、ビームを放って来た。

 「クッ!!駄目か!!」

 流輝はそれを回避すると、ナックラーからミサイルを数発放ち、『ハスター』を爆破しようとした。

 外部から操作されているなら、腕をもいでも動き続けると推測された。

 なので、完全に機能停止に陥らせようと思ったから、ミサイルを放ったのだった。

 ところがそのミサイルは別の『ハスター』のビームによって撃ち抜かれ、命中する前に爆発四散した。

 「チッ!!」

 流輝は悔しそうに舌打ちすると、接近戦を仕掛けるべく、ダメージを与えた『ハスター』に向かって行った。

 すると、その『ハスター』を守りに来たのか、二体の『ハスター』が手の甲からナイフを展開しつつ挟み込むようにして接近してきた。

 流輝はそれを確認すると、肩のガトリングガンとミサイルポットをそれぞれ左右の『ハスター』に向けると一斉発射した。

 十二発のミサイルと大量にばらまかれるビーム弾

 それは二体の『ハスター』を突き放すには十分すぎる効果を持っていた。

 流輝は邪魔物が消えたことを確認すると、機動力が落ちた『ハスター』に近づき、その頭部をナックラーで殴り飛ばした。

 『ハスター』の頭部がおかしな方向にひしゃげ、まるでつぶれたかのように変形する。

 そしてそのまま吹き飛んで行く。

 流輝はそれの無防備な姿をロックすると、腰に装備してあるガトリングガンの砲口を二つとも『ハスター』に向けると、そのまま乱射した。

 するとビーム弾は『ハスター』の体に無数の風穴を開けると、体内にある疑似無限機関を貫き、破壊した。

 すると『ハスター』は無様な姿をさらしつつ、宇宙空間に放り出されると、そのまま爆発霧散した。

 「あと四機!!」

 流輝はそう叫びつつ、辺りを見渡す。

 すると四体の『ハスター』と、遠くから接近してくる十体ほどの『ビヤーキー』の姿を確認することができた。

 どうやら、増援を呼んだらしい。

 流輝はめんどくさそうな顔をすると、そちらに顔を向けた。

 「クソ野郎が」

 流輝がそう毒づくと、どういうわけかミリアから通信が入った。

 『流輝、今いい?』

 「無理だが早く話せ」

 『十八機の『ビヤーキー』が突然機能停止して落ちて行った』

 「あぁ、『ハスター』を一機落としたからか?」

 『多分、で、十二機の『ビヤーキー』がそちらに向かったみたい』

 「そうか、じゃ、今すぐ落とすかな?」

 流輝はそう呟くと、二つあるバーニア型レーザーポットの内一つをパージすると、それを『ビヤーキー』の群れに向かって射出した。

 それはある程度の速度で進んで行くと、そのまま真っ直ぐ進み、『ビヤーキー』達の下を通り過ぎて行こうとする。

 何の意図があるのか測りかねた『ハスター』や『ビヤーキー』はそれを無視していこうとする。

 それを見て、流輝は笑って言った。

 「ファイヤ」

 するといきなりバーニアが回転を初め、二十門あるレーザー砲門から同時にレーザーが放射される。

 するとそれは『ビヤーキー』達を貫き、切り裂き、破壊していった。

 『ビヤーキー』十二機は全てその一撃で全滅した。

 流輝はそれを見て満足そうな笑みを浮かべた。

 『ハスター』達は増援が全滅したと見るやいなや、一斉攻撃を仕掛けてきた。

 流輝はそちらに顔を向けると叫んだ。

 「吹き飛ばしてやるよ!!このクソ野郎どもがぁ!!」

 左腕を前に突きだすと、その手に握る『ハイドラ』にある全ての銃口を『ハスター』達に向けると一斉放射する。

 すると十六門のレーザーと六門のビームが伸びると『ハスター』達を上下左右にばらけさせ、編隊を崩す。

 流輝はそれを確認すると、一番近くにいる『ハスター』にロックをかけると『ハイドラ』から触手を射出する。

 『ハスター』は完全に虚をつかれてしまい、触手を避けきることができず、足に命中、薄い装甲を破り何重にも巻き付く。

 流輝はそれを見ると、左手を大きく振るい捕縛した『ハスター』を弧を描くように振り回すと、近くにいた別の『ハスター』に命中させる。

 二機の『ハスター』は完全にバランスを崩すと、そのまま無様な恰好で宇宙空間に放り出される。

 それを見た流輝は左腰のミサイルポットを半分だけ展開すると、八発のミサイルを発射すると、狙いはもちろん『ハスター』

 無防備な『ハスター』二体に『ミサイル』を躱す術なんかあるはずも無く、見事ミサイルは命中し、二体とも巻き込んで大爆発を起こした。

 「あと二機!!」

 しかし、感傷に浸っている暇はない。

 流輝は急ぎ振り返ると索敵機能を最大限に起動すると、他二体の『ハスター』がどこから狙ってきているかを探す。

 しかし、そこまで時間がかからず発見することができた。

 なぜなら後ろについている四八連ミサイルポットの一つに『ハスター』がとりついていることが分かったからだ。

 どうやら、先程戦っている間に取りつかれたらしい、警戒を怠っていた証拠である。

 『ハスター』は手の平のビーム砲を起動させると、ミサイルポットを撃ち抜こうとしてくる。

 流輝はそれを見て、少し焦る。

 なぜならミサイルポットの中にはミサイルが詰まっている。

 もしビームなんかで焼かれたりしたら、ミサイルが誘爆を起こし、『FAクトゥルフ』にも多大なダメージが入ってしまう。

 「クッ!!」

 流輝は一瞬も迷わず、次の行動を決めた。

 まず、『ハスター』がとりついているミサイルポットを分離すると、超小型ブースターを起動させると自身から離していく。

 すると『ハスター』はどうするべきか悩んだものの、ミサイルポットを破壊することに決めたらしい。依然としてミサイルポットに張り付いていた。

 流輝はそれを見るとほくそえみ、右肩のビームガトリングガンを起動させると、それをミサイルポットに向けて連射する。

 ここで初めて流輝の意図に気付いたのか、『ハスター』はミサイルポットから離れようとする。

 しかし、時すでに遅し

 ガトリングガンから放たれたビームはミサイルポットを貫き、内部のミサイルを焼き、誘爆を起こす。

 すると爆発したミサイルポットに巻き込まれ、『ハスター』が爆発四散する。

 計算通りだった。

 「ラストォォ!!」

 流輝はそう叫ぶと最後の『ハスター』に狙いを定めた。

 すると、その『ハスター』がエネルギー膜発生装置を起動させると、そのまま『FAクトゥルフ』に背を向けて逃げ出した。

 それも相当速いスピードで、月の裏側に回って行っているようだった。

 何を考えているのかよく分からなかったが、とりあえず追って行こうと思った時、ミリアから通信が入った。

 『流輝』

 「んだよ」

 『こっちの『ビヤーキー』が全部落ちた、それに敵の数もほとんどない、二十ぐらい?』

 「そうか、『ガタノトア』は?」

 『月の裏側に向かって移動しているせいでうまく落とせないでいる。アリサも敵を落とすの楽しんでるみたいだし』

 「そうか、じゃあ今、裏側に向かってるところだから、そこで『ガタノトア』を落とすとしよう」

 『そう?でも……』

 「でもなんだよ、早く言え」

 『どういうわけか敵が月の裏側に集中して向かって行ってるみたい』

 「なんだ、それ?」

 『さぁ?まぁ、気を付けてよ』

 「分かった」

 流輝はそこで通信を切ると、反重力発生装置を最大出力で起動させると、『ハスター』を追って月の裏側に回ろうとする。

 道中、バランスが悪くなったので残った三つのミサイルポットの内、一つを分離して左右一つずつにすると、スピードを上げて行った。

 その間も、肩のカノン砲を撃って攻撃を仕掛けていく。

 しかし、それを無視する『ハスター』

 どうやら『ハスター』は『FAクトゥルフ』を何とかしようという気は無いようで、一心不乱に裏側へと向かって行く。

 それを少し不審に思う流輝だったが、深く考えるのを止めた。

 面倒臭くなったのだ。

 裏に回るまでそこまで時間はかからなかった。

 『FAクトゥルフ』のスピードが速いこと、殆ど裏側に回っていたこともあってすぐに到着したのだった。

 初めて見る、月の裏側、地球からは見えない景色

 少し感動的であったが、それよりも紀伊鳴ることができたのだ。

 それは何かというと、おかしなものを見つけたのだ。

 「……何だ、あれ?」

 大きさで言うと、『シュブ・ニグラス』が楽に通れるぐらいの大きさ、それが月面に張り付いて、何とも言えない哀愁を漂わせていた。

 それは、大きな輪だった。

 有機的な印象ではあるが、それより不気味さが際立っている。

 輪の中には何も無く、ただ単に月面が浮き彫りになっていた。

 流輝がそれをいぶかしみつつ見ていると、『クトゥルフ』がその輪をスキャンし、名前を表示した。

 『Yog―Sothoth』

 和名『ヨグ―ソトース』

 「あれが、か」

 流輝は小さく呟くと、『ヨグ―ソトース』を見下ろすようにして、宙に浮く。

 が、すぐに『ハスター』の事を思い出すと、辺りを見渡して探す。

 すると、流輝の眼下、『ヨグ―ソトース』の近くに浮く黄色をした小さな敵影を確認することができた。

 流輝はそれを撃ち落とそうとした時

 突然、警戒音が耳元に響いてきた。


 その頃ダーレスは『シュブ・ニグラス』から矢継ぎ早に届く報告を全て聞き流し、一人、冷や汗を流していた。

 『月の裏側で空間婉曲を確認!!』

 『高エネルギー反応、『ヨグ―ソトース』の物と思われます!!』

 『婉曲反応が変動しました、圧縮反応に変わっていきます』

 『空間圧縮率が四八%を超えました!!』

 『虚無空間が消失、別次元へとつながりました!!』

 『その向こう側から微弱ですが『シルバーキー』反応と敵性反応が確認されました!!』

 ダーレスはそれだけ聞くと、『アザトース』の反重力推進装置を細田出力で起動、急いで月の裏側へと向かって行った。

 その間に、バックパックから『バルザイ』を取り出すと、戦闘態勢に入った。

 「畜生、向こう側からコンタクトをとって来たか!!」

 どうやら、向こう側から『シルバーキー』を利用し、『ヨグ―ソトース』を起動させ、こちら側にやって来たらしい。

 恐らく、増援

 ダーレスは急いで宙を舞うと、裏側へと回って行った。


 その頃、流輝は驚いていた。

 絶望的、といっても良かった。

 なぜなら突然、どこかへとつながった『ヨグ―ソトース』から一隻の『ガタノトア』が出現したからだった。

しかも、それだけじゃない、『ナイトゴーント』が『ガタノトア』と共に大量に出現したのだ。

索敵装置を起動しても数を数えきれなかった。

二〇〇は超えているんじゃないだろうか、流輝はそう思った。

「クソッ、まさかあちら側から来るとはな…………」

流輝は悔しそうにそう言うと、エネルギー残量などを表示する。

エネルギー残量は四七%

「はぁ!?」

 流輝は驚き、エネルギーポットその他の確認をする。

 すると、エネルギーポットと『FAクトゥルフ』の全武装とのシンクロ率が十五パーセントを切っていた。

 どうやら交換の時にチェックを怠ったらしい、通常時のエネルギー消費量と比べて二倍以上のエネルギーを消費していた。しかも、エネルギー漏れまで起きていた。

 これではまともに戦えない。

 こんな状態で一斉放射を一度か二度したら、エネルギーは殆ど切れてしまう。

 もし切れても『クトゥルフ』本体のエネルギーを消費すればいいものの、それではすぐにエネルギー切れを起こしてしまう。

 「ふざけるなっ!!クソ!!」

 流輝はやけになった。

 まずはバーニアを分離し、それを敵の中へと突っ込ませる。

 それと同時に武装を全て展開すると、全エネルギーを注ぎ込み、『ナイトゴーント』の集団に叩きこんだ。

 「死ねぇ!!」

 それは最初の一撃より強烈だった。

 それはエネルギー量が多かったという理由もあるし、敵が向かってくるだけで回避をしなかったという理由もある。

 再び大量の爆発が起き、真っ暗な宇宙に美しい花を咲かす。

 流輝はそれを見ると満足そうな笑みを浮かべ、『FAクトゥルフ』に命令を飛ばし、全武装を解除した。

 そして、手にしていたナックラーを手放し『ダゴン』を召喚し、それを構える。

 『ハイドラ』の上下に装着がされていた『ク・リトル』と『リトル』も外され触手によって、本来あるべき場所へ移動する。

 最後に外していた翼状をした反重力推進装置を転送、スッキリしたバックパックに装着すと、展開、起動させる。

 こうして『クトゥルフ』は本来の姿に戻る。

 そして、ぽっかりと空いた穴から出てくる『ガタノトア』と『ナイトゴーント』を睨みつけると、反重力推進装置を最大出力で起動し、真っ直ぐそこへと突っ込んで行く。

 少し距離があるため、敵の弾幕を躱しつつだが真っ直ぐそちらに向かって行く。

 その途中、通信が入る。

 アリサとミリアからだった。

 『流輝!!』

 『おーい、元気か?』

 「あぁ、これから『ガタノトア』に殴り込みをかける所だ」

 『それって……えぇ!?出てきたやつ!?』

 「あぁ」

 その間、一瞬求まることなく、穴へと向かって行く流輝、『ナイトゴーント』をすり抜けつつ向かって行くその姿はまるで神風特攻隊

 流輝はぎりぎりまで穴に近づき、そこから出てくるところを狙い、『ガタノトア』を落とすつもりなのだ。

 無謀と見えるが、それが一番でもあった。

 アリサとミリアはそんな流輝の言う事に、眉をひそめる。

 『……まずくね、それ?』

 「大丈夫だ、『クトゥルフ』に『シルバーキー』は無い、穴は通れないだろ」

 『違う!!『シルバーキー』は穴をあける鍵であって……通……じゃ……い……』

 「あ、聞こえな

 次の瞬間

 流輝は穴の中に飛び込んでいた。


 「違う!!『シルバーキー』は穴をあける鍵であった、通行証じゃない!!なくても通ることはできるんだよ!!」

 ミリアはそう叫ぶ。

 しかし、その声は琉生には届かなかった。

 何故なら『ヨグ―ソトース』の穴に近づきすぎたせいか、まるで吸い込まれるかのようにして穴の中に消えていったのだ。

 ミリアは少し離れたところからそれを見ていたが、流輝が消えた瞬間、穴に向かって行こうとした。

 追いかけようとしたのだ。

 しかし、それをアリサに止められた。

 『ミリア、落ち着け!!』

 「アリサ!!流輝が!!」

 『分かってる、でも追いかけても意味ないじゃん』

 「何で!?」

 『こっちにも大量の敵がいるんだぞ、そいつらは『シュブ・ニグラス』を狙っている、まさか無視していくとか言い出さないよな』

 アリサのいう事は正論だった。

 確かにこのままでは『シュブ・ニグラス』は落とされてしまうだろう、そうなると地球衣戻れなくなるかもしれないし、何より人が死ぬ。

 それは嫌だった。

 「クッ!!」

 『それに、穴は閉じた』

 「え!?」

 ミリアは急いで『ヨグ―ソトース』を見る。

 すると『ガタノトア』を出現し終わったらしく、『ヨグ―ソトース』はアアを急激に収束させていた。

 アリサは淡々とした声で言葉を続ける。

 『あああってはもう、『シュブ・ニグラス』の『シルバーキー』で開くしかない、なら、なおさら守らなくっちゃ』

 「ふざけるな!!」

 ミリアは怒り狂うと、その行場の無い怒りアリサにぶつけるようにして思いっきり怒鳴りつけようとした。

 が、思いとどまる。

 何故ならモニターに映るアリサの顔が恐ろしいことになっていたからだ。

 鬼のような顔では無い

 静かに怒り狂っているかのごとく、顔を伏せ唇からは血を一滴したらせていたていた。

 それを見たミリアは大きく息をつき、落ち着くと言った。

 「アリサ!!行くよ!!」

 『分かったよ、まぁ、流輝のことだ、大丈夫だろ!!』

 そう言うと二人は『シュブ・ニグラス』を守るため、新たに出現した『ガタノトア』と『ナイトゴーント』の元へ向かって行った。


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