第三部-第三章 『サム・オブ・ザ・トゥルー・ワズ・ノット・トゥ・ノウ』

三人は指令室に来ていた。

 ダーレスはまるで来るころが分かっていたかのように、悠々自適な恰好で指令汁の椅子に座り込んで煙草を吸っていた。

 その姿はまるで帝王のような貫禄を感じさせた。

 一方のミリアと流輝は少し気圧されつつも、ダーレスに退治していた。その様はまるでライオンに挑むトラ

 しかし、ただ一人、アリサだけは大あくびをしながら三人の事を眺めていた。

 一人、暇そうだった。

 数分間

 お互い何も言わず黙っていたが、堪忍袋の緒が切れたのか流輝が口を開いた。

 「ダーレスさん」

 「何だね、流輝君」

 「話、いいですか?」

 「いいぞ」

 「『アル・アジフ』と『ネクロノミコン』あれっていったい何なんですか?」

 「……!!」

 ダーレスは驚いたような顔をすると、言った。

 「読んだのか」

 「えぇ」

 「そうか」

 ダーレスはにやりと笑った。

 そして、お笑いをすると言った。

 「そうか、呼んだか、そうか!!」

 「「「…………」」」

呆気にとられる三人を余所に、ダーレスは椅子から立ち上がると、指令室に扉の方を指さすと言った。

「ここでは話しにくい、地下に行こう」

 「…………」

 三人は小さく頷くと、大人しくついて行くことにした。


 数分後

 四人は『アザトース』が格納されている地下格納庫の前、無駄に開いただだっ広いスペースにいた。

 ダーレスは格納庫を背に立つと、煙草を床の捨て火を踏み消すと、おもむろに指を鳴らすと結花が開き、中から椅子を展開した。

 それも四人分、その上、わざわざ向かい合うような形に

 ダーレスがそれに座ったので、流輝達もそれに倣った。

 そして、おもむろに口を開くダーレス

 「で、何が聞きたい?」

 一瞬、悩む流輝

 しかし答えは決まっていた。

 何故悩んだのかというと、ダーレスの態度が余りにも同道とぢていたからだ。それこそ、不敵なまでに

 だから、少し気圧されていしまい、何を言うべきか迷ってしまったのだ。

 それはミリアも同じらしく、少し焦った顔をしている。

 ところが、そんな空気を読まず、何でもかんでもど直球で言う人が一人

 「いいから、全部話せ」

 「ほぅ、威勢がいいな」

 「違うわ、細かいことがめんどいんや、はよせい」

 なんか変な関西弁だった。

 が、そんなこと一切気にせずダーレスは話を始めた。

 「君たちは、『クトゥルフ』達がどこで作られたかは覚えているよな」

 「えーと、異世界『ゾス』でしたっけ?」

 流輝が記憶を頼りにそう答える。

 ミリアとアリサはきょとんとした顔をしている、どうやら忘れていたらしい。

 ダーレスはそんなこと意に介さず、マイペースに話を続けた。

 「そうだ、異世界『ゾス』だ、そこは特殊は世界でな、地球とよく似た惑星に岩盤が一つだけ、つまり巨大な大陸が一つしか無い場所だった」

 「昔の地球みたいに、ですか?」

 「そうだ、そしてそこで『大事故』が起こり、世界中の人口の八割が死滅する事態に陥ったらしい」

 「……その、『大事故』ってなんですか?」

 「分からない、『アザトース』の記録にも残っていない、全ては闇の中だ」

 「そうですか」

 「そうだ、そしてまた人々は『大事故』以前から、巨大な機械都市を作り、そこに全人類を収監して過ごしていた」

 流輝は想像してみようとした。

 が、できなかった。

 それは余りにも突拍子も無い事だったから。

 一方のダーレスは三人の事を一切気にせず話を続ける。

 「そして、だ、『大事故』以降、こう考える人が現れた」

 「それは?」

 「『人に人は支配できない、これからは神が人を支配するべきだ』と、つまりは人が支配できる限界を超えたのだ」

 「それが、何なんです?」

 「そして人々は、神を作り上げることに成功した、自分たちを支配し、完璧に幸福に仕立てあげてくれる、唯一絶対の存在」

 「それが、『クトゥルフ』達」

 「そうだ」

 流輝は少し、納得した。

 しかし、それはあくまでも少しだった。

 全く持って根本的な部分が解明されていない。流輝は歯がゆさを感じ、怒りが積もって行くのを感じた。

 ミリアとアリサは話についていけなかった。

 完全に流輝とダーレスの戦いとなっていた。

 「で、ダーレスさん」

 「何だ」

 「それでは半分です、何故、『クトゥルフ』なんです?」

 「それはな、旧支配者などの設計、思想を考えた人が『クトゥルフ神話』に浸水していたのが原因だと記録されている」

 「それで、ダーレスさんは何なんです?」

 「ん、私か?」

 「一体、何者で、何が目的なんですか?」

 流輝が、今までにないぐらい真剣にそう訊ねる。

 ミリアとアリサもそれが気になっていたので腰を少し浮かすと、興味津々とで置言いたげに耳を傾ける。

 ダーレスはその機体と疑念を一身に受け、こう言い放った。


 「私は人ではない、『ツァトゥグア』という名の邪神の人間世界探索用遠隔操作型外骨格だ、これは本体では仮初の姿だな」


 「「「え?」」」


 言っている意味がよく分からない三人だった。

 これは、流輝でも何を言っているのか理解に苦しむものだった。というか、頭で処理できる限界を超えていた。

 目を丸くして、アホみたいに口を開ける。

 ダーレスは、予想通りの反応にあまり驚くことなく、冷静に対処した。

 「いいか、ある日のことだ、旧支配者たちの間に内輪もめが起き、『クトゥルフ』『ナイアーラトテップ』そして彼らの味方をした数々の邪神達が次元を超えて、追放された、それがここなのだ」

 「…………」

 流輝は少し落ち着いたので、ダーレスの質問を飛ばした。

 「えーと、ダーレスさん、その『ツァトゥグア』は一体どこにあるんですか?」

 「あぁ、『アザトース』内部に電脳が搭載されている」

 「どうして、そんなことになったのですか?」

 「少し長い話になるのだがな」

 ダーレスはそう前置きすると話を始めた。

 「いいか、まず、『アザトース』と『ツァトゥグア』は『クトゥルフ』側だったため、敵に着け狙われていた。本来なら、捕まりメイン電脳を摘出され、ここの封印されるところを何とか逃げ切ったのだ、私の本体と『アザトース』のサブ電脳を囮にしてな」

 「それで?」

 「そうして逃げ切った私たちは、ここにきて『クトゥルフ』達の救出を行うことにした」

 「それは、どうやって?」

 「この世界は『エルダーサイン』という名のシールドが張られ、進入できなかった。それを、『バルザイ』で破壊してやって来たのだ」

 「そして?」

 「そして、この世界に来て『クトゥルフ』を探そうとした、そこで気が付いたのだ」

 「何に、ですか?」

 「敵と、『クトゥルフ』達の封印だよ、それを何とかすべく、私は百年の歳月をかけて星辰をずらすべく動き、『レイク・ハス』に備えた、あいつらは星辰が完全にずれた、もしくは旧支配者たちに異変が起きたとき、ここに攻め入る手はずになっていたのだ」

 「百年……」

 流輝は驚くと同時に納得していた。

 それだけ長くなくてはここまで大規模な施設を作ったり、コネを作ったりはできないだろう、それだけ異質な組織だった、ここは

 納得する流輝を余所に、ダーレスは話を続ける。

 「そして、今、全てが実った」

 「はい?」

 「私の目的はただ一つ、再び『クトゥルフ』達による支配を行う事だ」

 「…………」

 「その為の布石もすべて整った」

 「なんですって?」

 「君がここまで辿り着くのに遅く感じたが、ちょうど『ガタノトア』も落ちた、もしかすると、これは天命だったのかもしれない」

 「だから、何なんです?」

 流輝はイラついていた。

 ダーレスはそれを察すると、言った。

 「いいか、私たちは異世界『ゾス』に向かう、そのためには空間を移動する必要がある」

 「それは分かりますけど?」

 「そして、移動するには月の裏側にある『ヨグ―ソトース』から移動するしかない」

 「それと、何の関係が?」

 「そこを通るには『シルバーキー』というプログラムが必要なのだ、それは『ガタノトア』にのみ搭載されている」 

 「あ、そういう事ですか」

 流輝は納得した。

 さっぱりは話に付いていけていない二人は、暇そうにしていた。

 そこで、ダーレスは言った。

 君たちは、全てを知った。『ゾス』にむかう鍵も手に入った、これで、全ての準備後整った」

 そして、言った。


 「これより我々は宇宙に行く」


 「「「…………」」」

 「というわけだ」

 三人は黙りこくるとそのまましばらく、誰もしゃべろうとしなかった。なので、仕方なしにダーレスが口を開いた。

 「初めて、君たちに説明したことは嘘だ、『クトゥルフ』達が世界を救いに来たわけでは無い」

 「そうなりますよね」

 「だが、世界を救いたいというのに間違いはない」

 「…………」

 「君たちは、戦ってくれるよな」

 そう言い残して、ダーレスは部屋から出て行った。

 その為、取り残されてしまった流輝達は何も喋ることなく、それぞれがそれぞれの悩みを抱えていた。

 ぐるぐると渦巻く疑念と諦念

 しかし、あることは確実に言えた。


 彼らには、戦う以外の選択肢は残されていなかった。


 数分後

 アリサは格納庫にある『アトラク―ナクア』に向かって歩いていた。

 あの話の後、何となく頭の整理が全くつかないので、どこかでゆっくり考えようと思った時、真っ先に思いついたのは『アトラク―ナクア』のところだった。

 寒々しい廊下を通り、まだ、整備係りの人が行き交う格納庫に向かって行く。

 と、その途中、『クトゥルフ』の近くで人が固まっているのを見かけた。

 何となく、緊迫した空気を感じたので、近づいてみることにした。

 足音が響いていたのか、整備係りの人達もアリサに気が付いた。

 そこで、なぜかホッとした顔をする。

 「?」

 正直、そんな親しい人たちばかりでは無い

 なので、そんな顔をされる理由がよく分からなかったのだ。

 と、そこで声をかけられる。

 「アリサさん!!」

 「ン、何だ?」

 アリサは何となく不思議に思ったので、近づいて行く。

 人が掻き分けて道を開くと、中心にいる男に向かって行く。

 その男の手には一冊のノートが握られていた。

 「ん?」

 アリサはそれをどっかで見た気がしたが、気にしないことにした。

 と、中心にいた男がノートを差し出してきた。

 「すいません、こんなところに呼んで」

 「ン、構わんぞ、どうせ暇だし、で、それはなんだ?」

 「えーと、流輝さんのノートらしきものなんですけど、ちょっと見てくれませんか?」

 「おぉ、いいぞ」

 アリサは頷くと、そのノートを手にする。

 年季が入って、お世辞にもきれいとは言えないノート、これが流輝の物とは思えなかった。恐らくおばさんの物だろう、アリサはそう見当をつけた。

 そして、ノートを開いてみる。

 そこには几帳面な字が並んでいた。

 アリサは少し眉を顰めながらも、それをゆっくりと読んで行った。


 数分後

 「何だよ、これ」

 アリサは激昂していた。

 今にもノートを破り捨てたい気分に襲われていた。

 が、それを何とか抑えると、近くにいた整備係りの方を見ると、八つ当たりとでも言わんばかりに怒鳴りつけた。

 「何だよ、これ!!」

 「そんな、大きな声出さないでも……」

 「だすっ!!」

 「分かりました分かりました、で、これって、あれですよね?」

 「あぁ、取材記録だな」

 アリサはもう一度、ノートを眺める。

 後半の数ページ、そこには『鏑木工業』や自衛隊での不審な動き、従来の元は全く違う兵器のパーツ、そんなことが延々と書かれていた。

 しかも『イカン』の名前まで出ていた。

 アリサはこれで完全に全てがつながったのを感じた。

 恐らく、流輝のおばさんは流輝の事が心配でいろいろ調べていたのだろう。 

その過程で知らなくていいことまで知ってしまった。

 そして、それを世間に発表されるのを恐れたのか、知られたこと自体がまずかったのか、それは定かではない。

 定かではないが、おそらく、そう言った理由で流輝のおばさんが殺されたのだ。

 事故を装って。

 「ふざけるなよ」

 アリサはそう呟くと、ノートを軽く掲げてから言った。

 「これ、ボクがあずかるぞ」

 「あ、いいですよ、元からそうするつもりでしたし」

 「あと、この事は他言無用な」

 「あーと、流輝さんにも、ですか?」

 「あぁ、多分、あいつこれを読んでないからさ」

 読んでいたら、さっきダーレスに食いついている。

 アリサはそう確信していた。

 だからこそ、流輝はノートを読んでいない。

 なら、教える必要は無い。

 「じゃ、いいな、そういう事で」

 「え、えぇ」

 「じゃあな、仕事、頑張れよ」

 「ありがとうございます!!」

 そう言い残してアリサはその場を離れて行った。

 ノートを片手に握りしめながら


 「ねぇ、流輝」

 「なんですか、ミリア」

 「さっきのダーレスさんの話、理解できた?」

 「はい」

 「……私、よく分からなかった」

 「そんな顔してますね」

 「顔!?」

 「えぇ」

 ミリアは自分の顔を見るべく、鏡を探した。が、『シュブ・ニグラス』内の食堂にそんな気の利いた物は無かった。

 なので諦めると、渋茶を一口飲み、ため息を吐いた。

 そして、一言

 「宇宙、か」

 「あれ?いやなんですか?」

 「そう言うわけじゃないけどさ」

 そう答えつつも、ミリアはどこか嫌がっているようにも見えた。

 その理由が分からない流輝はミリアにかける言葉を見つけることができず、意味も無く、少し慌てた。

 そこで、ミリアが言った。

 「いやね、宇宙が嫌いというよりは、星が嫌い」

 「どうしてですか?」

 「私にとって星って、いやな時に見る物だったから」

 「……そうなんですか」

 「そう」

 お互い黙りこくる。

 ミリアは何となく、自分が変な事を話したせいじゃないかと思い、少し焦るが、流輝は流輝で歌替えごとをしていた。

 それはやはり、さっきの話である。

 何かが足りない。 

流輝はそう感じていた。

 それは『大事故』の事であったり、ダーレスの正体であったり、『クトゥルフ』や『ナイア―ラトテップ』はては『ハスター』や『クトゥグア』について

「ん?」

「え、なになに?」

「いえ、なんでも」

 無意識の内に声に出していたらしい、流輝は何でもないと言ったあと、自分の中に沸き起こった違和感の正体を探る。

『クトゥグア』?

『ハスター』?

 …………

 ………

 ……

 電脳を抜かれる?

 「あ!」

 「はい!?」

 流輝は違和感の正体に気が付き、立ち上がる。

 ミリアは驚きのあまり、お茶をこぼしてしまう。

 が、そんなことは全く意に介さず、流輝はまくしたてた。

 「おかしいと思ったんですよ!!」

 「な、なにが?」

 おずおずとミリアがそう訊ねる。

 流輝はミリアの方を向くと言った。

 「ミリア、思い出してください、『クトゥグア』は『クトゥルフ』の敵だった、それなら電脳が残っているはずですよね?」

 「え……」

 ミリアは少し悩む。

 が、答えは決まっていた。

 「そうなるね」

 「だとしたら、あの戦闘時の『クトゥグア』の動きを思い出してください」

 「う、うん」

 思い出す。

 というか忘れようがない、今でもまぶたの裏に張り付いているようだった。

 その間も、流輝は話を続ける。

 「電脳とは、僕たちで言う脳味噌、つまり自主性なんかもそこにあるはずなんです。でも、だとしたら『クトゥグア』の戦いかたって、どうなんです?」

 「……どうって?」

 「余りにも機械的すぎやしませんか?」

 「うん?」

 ミリアは未だに流輝の言葉の真意を理解できずにいた。

 それを察した流輝は補足説明を始める。

 「いいですか?彼らは神になるべく作られたんですよ、それがまさかあそこまで機械的な思考判断を行う電脳にしますかね?」

 「あー、うん、会う子アイ日本語おかしいけど、言いたいことは理解したわ」

 ミリアは納得した。

 つまり、神の思考を行う電脳があんな自主性の欠片も無く、まるで歯車のような戦い方をする筈が無い、といいたいらしかった。

 そう言われると、思い当たる節はある。

 実はミリアも、流輝達が勝てたのは人ならではの柔軟な思考のおかげなのでは、と考えていたので、流輝の言いたいことはよく分かった。

 すると……

 「あれ?じゃあ、残った電脳は?」

 「そうなんですよ!!」

 「…………そう考えると、おかしい」

 流輝の言うとおりだった。

 電脳らしくない判断なのに、電脳が残っているはずの機体、つまるところ、『クトゥグア』にも電脳は存在しないのではないか、という話になる。

 もちろんそれは『ハスター』も例外では無い。

 『ハスター』の本体がどんなものかまだ、把握しかねているが、もしかすると『ハスター』も『クトゥグア』同様、電脳が無いのかもしれない。

 ということは

 「電脳を抜いたやつは、誰?」

 「多分、それが黒幕です」

 流輝は重々しく頷いた。

 電脳が無い、習誰かが操っている、だとするとそいつが黒幕である。

 簡単な論理だった。

 「で、その黒幕って?」

 「分からないから困ってるんじゃないですか?」

 どこか煮え切らないまま、その会話は終わってしまった。


 数日後

 三人は『イカン』にいた。

 三日後には『シュブ・ニグラス』に乗って宇宙までに行き戦闘を行うので、その準備をしていたのだ。

 しかし、ここ数日『レイク・ハス』の襲撃が無かったため、準備はとっくに終わり、今は暇を持て余していた。

 そんな時だった。

 流輝とミリアが食堂で二人神経衰弱をやっているとき、外出していたアリサが戻って来るなりこういったのだ。

 「記念撮影、しようぜ!!」

 「「はい?」」

 言っている意味が理解できない二人組

 そんなこと一切気にせず話を続けるアリサ

 「さっきさ、酔い止めを買いに街行ったらさ、こんな物見つけてさ。買って来たんだ」

 そう言って取り出したのはインスタントカメラ

 流輝はそれを見て言った。

 「酔い止め、分けてもらえます?」

 「「え、そっち?」」

 同時のツッコミが入った。

 「はい?」

 ツッコミの意味を理解できない流輝

 二人は静かに冷や汗を流すが、とりあえず話を逸らすことにした。

 「じゃ、撮ろうぜ!!」

 「いいんじゃない?ね、流輝」

 「そうですね、今までそんなことしてきませんでしたし」

 「じゃ、外で撮るということで」

 「賛成です」

 こうして三人は寮棟の正面玄関で写真を撮ることになった。ちなみにシャッターを切ったのは、偶然近くを通った黒月さんだった。

 流輝を真ん中にして、右側にミリア、左にアリサ

 何となく奇妙な構図だった。

 「はい、チーズ」

 パシャリ

 写真は出発までに黒月さんが現像してくれる手はずとなった。

 写真を撮った後、流輝は一言つぶやいた

 「写真って真ん中の人の魂が抜けるって本当ですか?」

 「流輝って江戸時代の人間じゃないよね」

 しかも本気で言っている目をしていたので、よけい怖かった。



 

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