第二部-第六章〈下〉 『ジ・エンド・オブ・オールド・エネミー』
流輝が行ったあと、ミリアはその後ろ姿を見て一言さけんだ。
「ここで、終わらせる!!」
大剣を両手に一本ずつ召喚、さらに両肩にはシールドを、腰には体を支えるためのアンカー射出機、足には三連ミサイルポットを装着すると、一番出力に高い反重力発生装置を起動させる。
ミリアは『クトゥグア』相手に接近戦をするつもりだった。
そして地面を蹴ると宙に飛びだした。
『クトゥグア』はその姿を確認すると、レーザーを放ち弾幕を張ってくる。
しかし、ミリアにとってそれはたいしたことでは無かった。
機体の急旋回、上昇、下降、蛇行を繰り返し襲い来るレーザーやビームを的確に、確実に回避していく。
そして、大剣を振るうと、そこにある反重力発生装置の後押しも受け、さらに加速する。
音速を超えた『ナイア』は圧倒的スピードで『クトゥグア』に向かって行く。
しかし、その分回避運動が疎かになってしまう。
ミリアはそれを肩のシールドで補うつもりでいた。
しかしそれは杞憂だった。
いきなり加速した『ナイア』に対応しきれていないのか、レーザーの照準があいまいになり、いきなり当たらなくなる。
なので、調子に乗ったミリアはあっという間に『クトゥグア』に取りつくことができた。
ちょうど球体の中心辺りに着くと腰のアンカーを打ち込み、体を固体。大剣を振るうと一息に突き刺そうとする。
「喰らえ……!!」
しかし、それはうまくいかなかった。
それは、『クトゥグア』が腕を展開し、ミリアの事を捕まえようとしてきたからである。サブカメラでそれを見たミリアの腕が一瞬止まる。
どうするべきか、考える。
その間も腕はハエを叩き潰すかのように迫ってくる。
「チッ!!」
ミリアは一度離脱することに決めた。
なので、アンカーを収納しようとした、その時
どこからともなくビームが放たれ、『クトゥグア』の腕を焼き切った。
巨大な腕から液体が漏れ出ると、そのまま無様に落ちていく。そして、基地の上に落ちると、ズゥゥンと低い音を出し完全に動かなくなった。
何が起きたのかよく分からなかったミリアは、少し固まっていた。
が、すぐに流輝から通信が入り、正気に戻った。
『ミリア?』
「なに?流輝」
『腕は切り落としておいた、援護は任せろ』
「ありがと!!」
ミリは礼を言いつつ、再び大剣を振りかざすと、思いっきり叩きつけた。
普通に考えたは大きいが、『クトゥグア』と比べるとあまりに小さい切り傷ができ、そこから少しだけ液体が漏れ出る。
それでも大したダメージは与えてることができない。
それはミリアの想定の範囲内だった。
「ここからが本番……!!」
ミリアはそう呟くと、反重力発生装置の最大出力を再び出す。
すると、前進していた『クトゥグア』の動きが止まった。
ミリアと拮抗しているのだ。
本来『クトゥグア』の方が出力が高い。
しかし今は一点集中的に速度を上げているうえ、『クトゥグア』は『クトゥルフ』と戦わなくてはならない。
こうなると、拮抗するのも仕方がない。
ミリアはそのまま押し切るつもりでいた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
反重力発生装置を二つ、増設するとそれ緒限界ぎりぎりまでの出力をだし、『クトゥグア』を押し切ろうとする。
が、『クトゥグア』も負けてはいない。
出力を少しずつ上げると、ゆっくりと、ゆっくりとだが『ナイア』を押していく。
と、そこで攻撃の手が緩む。
流輝はその隙を見逃さなかった。
腕を切り裂く際に出力を上げすぎたため、さっきまで冷却を行っていたのだが、ようやく再攻撃が可能となったので再び構える。
そして、ミリアの邪魔にならないようにと配慮しながら引き金を引く。
すると二筋のビームが『クトゥグア』に吸い込まれるかのように放たれる。
そして、左のミサイルポットに命中し、大きな傷をつける。
流輝はミサイルに命中し、誘爆が起きるのを期待したのだが、敵もそれを警戒していたのか装甲は相当固いようだった。
なので、流輝は装甲を破るために一点を集中的に狙いビームを連射した。
すると、『クトゥグア』はそれに対抗してビームを放つと、流輝の攻撃を相殺した。
すると、今度は『ナイア』に少し押されてしまう。
流輝はここで、少し違和感を感じていた。
そして、ダーレスとの会話を思い出していた。
「流輝君、『クトゥグア』と他の旧支配者の大きな違いを知っているか?」
「いえ、知りません」
「いいか、『クトゥグア』には『無限機関』が三つ搭載されているのだ」
「えーと、エネルギー生成機関ですよね、どうしてそれが三つも?」
「『クトゥグア』はあの巨体から、膨大なエネルギーを使用する。なのに、長時間の駆動が可能だ、その理由こそ三つの『無限機関』なのだ」
「なるほど、それで三つの機関はそれぞれの役割でもあるのですか?」
「あぁ、一つは攻撃に、一つは機動用、最後に常にエネルギー生成をするものだ」
「あー、それなら長く戦えますね」
「そうだ、だからこそ、『クトゥグア』は強いんだ」
「へー」
「興味ないな」
「えぇ、敵がどれだけ強いかなんて、俺の知ったことじゃありません」
「そうか」
「そうですね」
「…………」
流輝は『クトゥグア』の攻撃を躱し、攻撃をしながら考え続ける。
何かがおかしい。
しかし、何がおかしいのか思いつかない。
と、その時、考えすぎて回避を失敗してしまい、左足にレーザーがかすってしまう。命中こそ避けれたが、それでもバランスを崩せるだけの威力はあった。
「あ!!」
左足の三分の一が焼け立たれ、蒸発する。
それだけレーザーの威力は強かった。
液体も余熱で蒸発してしまい、血液のように漏れ出ることは無かったが、赤い上記のような物が足から立ち上る。
が、冷却液が漏れ出たおかげですぐに冷やされ、普通に戻る。
しかし、バランスを崩した流輝は少し、立ち直るのに時間がかかってしまった。
「クッ!!」
何とか立ち直ると、流輝は『ハイドラ』を構えビームを二筋放つ。
しかし、それも『クトゥグア』の全身にある砲口から放たれたビームによって相殺される。
その間も、ミリアは『クトゥグア』と押し合いをしていた。
ミリアのおかげで起動力を奪われた『クトゥグア』は自由に動かけずただの巨大で強大な砲台と化していた。
と、業を煮やしたのか『クトゥグア』がレーザーやビームを放つ頻度を上げる。
流輝は一度、攻撃を中止し、激化した攻撃を回避することに集中すると考え続ける。
「何かがおかしい、でも、何が?」
頭の中で情報を整理していく。
色々な推察が頭をよぎり消えていく。
なぜなら、どれも決定打を持たないからだ。
「…………」
と、そこで流輝の攻撃が止まったので、ミリアに押し勝つことに専念することにしたのか、攻撃が一旦止み速度が上がる。
『ナイア』が少しずつ、押されていく。
どうやらそろそろ限界が近いらしい。
「あ!!」
早くしなければ、そう思った時、流輝は違和感の正体に気が付いた。
「そういう事か!!」
流輝はアリサに通信を繋ぐと、すぐに話しかけた。
「アリサ!!」
『なにさ?』
「弱点っぽい物見つけた」
『え、教えて教えて』
「あいつ、『無限機関』を三つ持っている。それも、別々の用途に分けている」
『それが?』
「いいか、攻撃と機動用に分けて使用しているんだ。なのに、どうして攻撃時は速度が落ちるんだ?」
『あ』
アリサも気が付いたらしい。
これは確かにおかしい事だった。
機動用は機動用でエネルギーを生成できるなら、攻撃時に速度が落ちる鯨飲が分からない。そしてそれは明らかな矛盾点でもあった。
ということは、ここに何かある。
そう思うのは当然だった。
アリサは流輝の言いたいことを理解すると言葉を続けた。
『じゃ、ボクは海からその弱点が何か探るわ、ちょっと時間かかるかも』
「あぁ、攻撃は任せろ」
『任せた!!』
その言葉を最後に、アリサとの通信が切れる。そして、流輝はそれまでの時間化正義をすることにした。
その時、ミリアから通信が来た。
『流輝!!』
「何だ?」
『ミスった!!』
「え?」
流輝が驚き、『クトゥグア』の方を見た。
するとミリアが『クトゥグア』から離れ、大剣を振るうと残っていた左腕を切り裂こうとしていた。
どうやら通信と回避に専念している間に、左腕を展開し『ナイア』を引き離そうとしたらしい。
『クトゥグア』は『ナイア』を握り潰そうとしているので、ミリアはそれに必死の抵抗をしていたのだ。
流輝は『ハイドラ』を構えると『クトゥグア』の方へと向かって行く。
「…………」
クリスは悩んでいた。
おもむろに『ナイトゴーント』の腕を上げると、空高く浮かぶ太陽を掴むような動きをして、暇をつぶす。
何をしたらいいのか分からない。
こんなことは生まれて初めてだった。
半年前
自分は死んだはずだった。
妻と子供の遺体
というのもためらわれるような無残な肉塊
それを前にクリスは死んだ。
はずだった。
なのにあの瞬間、『クトゥルフ』と戦っている間、自分は確実に生きていた。
生を実感していた。
どうしてかは分からない。
『クリス』は『ナイトゴーント』の腕を下ろすことなく、延々と上を見続ける。
「俺は……」
俺は?
一体?
何なんだ?
力を手に入れても勝てず、無残に負けてこんな惨めな気分を味わい、強い信念も何も持たない子供に打ち破られ、それでも死ぬことも何かをすることもできずに無様に生き続けている。
ふざけるな。
「ふざけるな!!」
クリスは力の限りそう叫ぶと、機体を起こした。
そして『クトゥルフ』を倒すため、再び宙に浮き刀を手に取ると、レールガンの残弾を確認すると顔を上げた。
すると、
そこには
『クトゥグア』がいた。
次の瞬間
「あ…………」
焼ける町逃げつづける人すべてを忘れて逃げる自分あいつが現れ全てが終わった終わった何を言ってる始まったんだよ終わりの始まりだ破壊の化身もう一人の仇仇仇仇仇仇仇
潰す、殺す。
「ヒャーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!」
クリスは狂気に陥った。
流輝はヒット&アゥエイを繰り返し、『クトゥグア』を牽制していた。決定打にはならないが、十分な効果はあった。
しばらくの間、それを繰り返していると、流輝に通信が入った。
アリサからだった。
流輝は急いでそれに出ると、会話を始めた。
「アリサ」
『分かった、弱点!!』
「早く教えろ!!」
『いいか、背部にある巨大な放熱ユニットあれがあいつの弱点だ』
「なんでだ?」
『いいか、あいつは冷却機能がいまいちうまく機能していない、そのためか背部のユニットは放熱以外の機能が搭載されていない』
「それが?」
『そこにはサブカメラも無ければ一切の兵装が搭載されていない』
「そういう事か、完全なる死角な上に攻撃を守るすべがないのか」
『それに、そこを壊しさえすれば敵は戦闘を行えない』
「分かった、じゃあ行くか」
『ボクも行くわ』
そう言うと『アトラク―ナクア』が海から飛び出し、バックパックにある腕からビームを放ちつつ、『クトゥグア』に接近していく。
そして、ワイヤーを射出すると、『クトゥグア』に引っ掛けるとそのまま反動をつけると振り子の要領で一回転し、『クトゥグア』に張り付いた。
「やるね」
『やるんだよ』
『そのまま攻撃して!!』
『りょうかーい』
アリサは適当な返事を返すと、『クトゥグア』に張り付いたまま背部に向かって行こうとする。
現在地点は腕のあるユニット下あたり
すぐに背部ユニットに着くだろうと思われた。
その時
アリサはあることに気が付いた。
装甲の一部分が展開し、そこからガトリングガンが出てくる。
しかも、その数十丁以上
規格外の大きさのそれは当たるとやばいということは簡単に判断できた。
『やばいやばいやばい』
アリサは咄嗟に手を離すと床に落ちつつ、ガトリングガンの斉射を躱していく。運よく一発も当たることなく、下りることができた。
ある程度下りたところでガトリングガンが収納さる。
「アリサ、大丈夫か?」
『平気平気、傷一つついてないよ』
『流輝、後ろに回ることができる?』
「いけると思うが、どうやってあの弾幕を回避するか、だな」
『それは』
アリサがそう言い固まる。
二人は続きが気になって仕方がなかった。
「『それは?』」
『気合と勘!!』
そう叫び、アリサは勝手に突っ込んで行った。
流輝とミリアは何とも言えない気分になったが、気にせず攻撃を仕掛けることにした。
流輝は『ダゴン』を手にするとそのまま高速で接近していく。『ハイドラ』は置いて行くことにした。
手にしていくには少し邪魔になりそうだったからだ。
ミリアはさっきと同じ兵装だったが、少し出力を低めに設定していた。
さっきの戦闘でエネルギーを無駄遣いしすぎたので抑えることにしたのだ。
三人はばらけると、流輝は上からミリアは左、アリサは右から攻め込むことにした。
『クトゥグア』はそれを確認すると、ミサイルポットを展開すると、百単位のミサイルを一斉に発射した。
「やばいぞ!!」
『私が!!』
『ボクもー』
アリサとミリアは両側からミサイルを挟み込むようにビームを放つと、ミサイルを全て焼き切ろうとする。
ミサイルの群が爆発が起こり、大きな黒煙が発生する。
が、それでもミサイル全てを焼き切ることはできず、いくつかのミサイルが三人を追尾する。
それぞれがそれぞれに対応し、ミサイルを破壊すると、そのまあ後ろに回ろうとする。
しかし、『クトゥグア』は後ろに下がりつつ、至近距離でのレーザーを放つと三人の妨害をしてくる。
意外と速度が早く、三人はうまく後ろに回ることができない。
流輝は焦り、『シュブ・ニグラス』に通信を繋ぐ。
「ダーレスさん」
『何だ?』
「援護、できますか?」
『……いいだろう、こちらの最強兵器を使おうじゃないか』
「頼みます!!」
そう言い、通信を切ると流輝は再び速度を上げ、レーザーを回避していく。
そのしばらく後
『シュブ・ニグラス』が降下し、その巨大な姿を見せつけてきた。
『クトゥグア』はそれに気づくとミサイルを大量に発射し、『シュブ・ニグラス』に向かって攻撃を仕掛けてきた。
しかし『シュブ・ニグラス』は対空砲火をしつつ、シールドを張ると襲い来るミサイルから身を守った。
そして、機体にある球体を展開すると、ダーレスの声が響いてきた。
『君達、一度そこから離れたまえ』
「分かりました」
『離れたのを確認した後、援護を開始する』
「了解、散開するぞ。ミリア、アリサ」
『『OK』』
二人の返事を聞いた後、三人はほぼ同時に『クトゥグア』から離れていく。
それを確認したダーレスは指令室にある椅子を展開させ、そこから出てきた一つのレバーを握ると、思いっきり引いた。
『武装解除、『ブラックゴートシステム』機動!!』
そう言うと、展開した『シュブ・ニグラス』各所にある球体から黒いポットのような物が大量に射出され、『クトゥグア』の頭上に停滞する。
『クトゥグア』は即座にレーザーを放ち、それを撃ち落とそうとするが、S俺にもシールドが張られ、レーザーが本体に届くことが無かった。
するとポットは展開すると、カノン砲のような物を露出させた。
そして砲口を全て『クトゥグア』に向けると一斉にビームを放射した。
その数は軽く二桁を超える。
が、『クトゥグア』も負けてはいない。
全砲口を展開すると、一斉にビームを放ち次々と相殺していく。
流輝はそれを見ると呆れ顔で通信を繋いだ。
「ダーレスさん、効いてませんよ」
『分かっている、第二弾だ』
「はい?」
『『スケープ』ども、突撃だ』
「はぁ?」
ダーレスがそう言うと同時に、ポットたち『スケープ』の砲撃が止まった。
そして露出していた砲口を収納すると、次はブースターを展開、さっきまでカノン砲があったところの側面からは触手を展開させた。
そして、『クトゥグア』へと突っ込んで行く。
『行けぇ!!』
『クトゥグア』も反撃を繰り返し、『スケープ』達を撃墜しようとする。
距離が縮んだため、威力が上がり『スケープ』のシールドでは耐えきれなくなったので、数体の『スケープ』が落ちていくがそれでも半数以上がとりつくことに成功した。
そして触手でがっちりと外装を掴むと、カノン砲を露出し、ゼロ距離での砲撃を行う。
『くたばれ、火の神よ。一斉放射』
ダーレスの掛け声と合わせてビームが一斉に放たれる。
その威力は相当なもので、『クトゥグア』を貫くことこそできなかったが、内部に重大な損傷を与えることに成功した。
『クトゥグア』は痛みを堪えるようにその巨体を震わせるが、『スケープ』達を振り落すことができない。
ガトリング砲を展開し、『スケープ』達を撃ち落とそうとするが、シールドに阻まれ上手くいかない。
『今の内だ、三人!!』
「ミリアが一番早い、行くんだ!!」
『最初っからそのつもり!!』
ミリアは再び反重力発生装置の出力を上げると、そのまま一直線に『クトゥグア』の背部ユニットに向かって行く。
そして、見事回り込むことに成功すると兵装を変換する。
カノン砲を四つ、ミサイルポットを四つ
遠距離戦兵装をさらに強化した物
ミリアはその砲口を全て背部ユニットに向け、ミサイルのロックも完了させる。
そして、あらんかぎりの声で叫ぶ
『終わりだー!!』
そして、引き金を引くと一斉にビームを放ち、ミサイルを全て背部ユニットに叩きこむ。
その様はまるで大火力の雨
そのすべてが寸分違わず『クトゥグア』に命中する。
そして、その一瞬後
爆音が響き、真っ赤な球体ができたのち、黒煙が湧きおこる。
『やった!!全弾命中!!』
「よし!!これで終わ……!?」
終わらない。
黒煙が晴れ、三人が見たのは大きく傷つき、排熱機能は殆ど失われたものの、内部にまで深刻な損傷は無いようだった。
それだけ、固かったという事である。
「馬鹿な」
『チッ……甘く見ていた』
『危ない!!ミリア!!』
『え?』
その時、『クトゥグア』に異変が起きた。
全身の装甲が展開し、部分的に内部が露出する。そして、球体の中心部分が大きく展開すると巨大な砲門が開く。
そして、機体を大きく回転させるとその勢いでいくつかの『スケープ』を落としつつ、後ろに浮く『ナイア』の方を向く。
そして、砲口にエネルギーを充填していく。
『やばー、あれのエネルギー量、桁外れだよ、『無限機関』一つ分って話じゃないね』
「ミリア!!逃げろ!!」
『間に合うか!!』
ミリアが回避運動をとろうとした瞬間、エネルギーの充填が完了し、砲撃が開始されようとしていた。
ミリアは回避しようとするが、『クトゥグア』は『ナイア』にロックしているので、回避しようにもできない。
『クソッ!!クソッ!!』
ミリアは回避することを諦め、使えるシールドを全て召喚、装着、展開すると砲撃から身を守る事だけを考える。
『クトゥグア』がエネルギー砲を放とうとした次の瞬間
アリサが叫んだ。
『あ!!』
「何だ、アリサ?」
『『ナイトゴーントが』!!』
「何!!」
流輝のいる所からは見えなかったが、アリサは『クトゥグア』が振り返ったため、背部ユニットの近くにいたのだ。
そこからは、『ナイトゴーント』が背部ユニットに向かって突っ込んでいるのが見えていたのだ。
「止めろ!!」
『あ、無理だ』
「なぜだ!?」
『さっき計測してみたけど、『SANレベル』が異常に低くなってる、発狂状態だね。こうなっては止めようがないね』
「クソ!!」
流輝は一瞬、どうしたらいいか悩んでしまう。
その一瞬が勝負を終わらせた。
『ナイトゴーント』は真っ直ぐ傷ついた背部ユニットに向かって行くと、そのまま大きく傷がつき抉れたところから内部に侵入する。
そして、数秒後
内部で大爆発が起こった。
そのせいか、エネルギーが集中していた砲口部分も大破すると、そこにあったエネルギーの暴発が起こる。
前と内部での大爆発
『クトゥグア』はそれに耐えきることができなかった。
装甲が剥がれ、内部での誘爆が続く。
どうやら排熱もできないのに、無理にエネルギーを集中させていたせいで爆発寸前だったらしい。面白いぐらい簡単に『クトゥグア』は崩れ去って行った。
装甲は次々と剥がれ、無残な形となり海へ落ちていく。
本体も浮遊能力を失ったのか、AIを失ったかは定かではないが、ゆっくりと高度を落とし、海へと落ちて行った。
三人は宙に浮かび呆気にとられながらながら、その光景を眺めていた。
そして、『クトゥグア』が完全に水没したのを確かめてから、流輝が呟いた。
「終わった、のか?」
『嘘……』
『あっけないね』
三人は『クトゥグア』が消えていった海を眺め、暫くの間、それぞれの感傷に浸るがその時間はあまり長くは無かった。
なぜなら、ダーレスが撤収を命じたからであった。
三人は名残惜しいものを感じつつも、『シュブ・ニグラス』へと帰還していった。
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