第二部―第三章〈上〉 『ゾース・フロム・ユゴス』

 その次の日

 流輝とミリアはそれぞれ自身の旧支配者を駆り、その後ろを『コス―GⅡ』十八機が追って行く形で進撃していた。

 なぜなら、『アトラク・ナクア』の発見された辺りに向かい、『レイク・ハス』の『ガタノトア』が向かっていることが確認されたからである。

 それが朝の十時のことで、大急ぎで出撃し現場に向かっている途中だった。

 今のところ確認されているのは、毎度おなじみの『イタクァ』が数機、『ビヤーキー』が数十機『ガタノトア』から出撃したらしい。

 後十分もすれば戦闘が開始される。

 アリサの事も心配だったが、流輝はそれよりも気になっていることがあった。

 ミリアに通信を繋ぐと話しかける。

 「ミリア、少しいですか?」

 「何」

 明らかに不機嫌な声が返ってくる。

 流輝は少し気圧されながらも話を続ける。

 「えーと」

 「用件、はやく」

 「何で不機嫌なんですか?」

 「自分の心に聞いて」

 その言葉を最後に、通信が切れ『ナイア』の姿が消える。

 レーダーからも消失してしまう。ステルス機能を使ったのだと分かった。流輝は前を見ると、『イタクァ』の機影が目に飛び込んできた。射程圏内である。

 「さて、行きますか」

 流輝も『ク・リトル』と『リトル』を『ハイドラに接続すると、ろくに狙いをつけることもせず適当にビームを放つ。

 と、『イタクァ』たちはこちらの方に機首を向け、接近してくる。

 流輝は機体を上昇させ、上から襲うことにする。

 『コス―GⅡ』たちは装備してあるレールガンの砲口を『イタクァ』たちに向けると適当に乱射を始める。

 その間に流輝は敵の観察を始める。

 確認できる範囲では『イタクァ』が十五機、『ビヤーキー』が二四機、六機ずつ兵装が違っていた。

 「爆撃とミサイルがそれぞれ一編成、爆撃が二編成、ですか」

 流輝は今回、『ダゴン』の代わりに『コス―GⅡ』が装備する太刀を収めた鞘を腰につけていた。

 また、腰裏の普段『ダゴン』を装着して置くアーマーには、『イカン』が作った新装備が取り付けてあった。

 「行きますか」

 流輝が攻撃を仕掛けようとした時、ミリアから通信が入る。

 『流輝、私は『イタクァ』をやる』

 「分かりました、僕は『ビヤーキー』を中心的にやりますね」

 『じゃ、行きますかー』

 「ですねー」

 流輝は『コス―GⅡ』に気を取られている『イタクァ』を飛び越して比較的奥の方にいる『ビヤーキー』の方へと向かって行く。

 その途中、ダーレスから通信が入る。

 『流輝君、いいかい?』

 「どうぞ?」

 そこで、『ビヤーキー』の方からミサイルが六発飛んでくる。

 それを大きく飛んで躱し、追尾しようとして来るミサイル群を『ク・リトル』と『リトル』のビームで撃ち落とす。

 その間も通信は切らない。

 「で、なんです?」

 『『ビヤーキー』がいるということは、『ハスター』がいるかもしれない』

 「そうですね、どういうわけか、必ず一緒に現れるようですし」

 流輝は『ハイドラ』の引き金を引くと触手を二本撃ちだし、ビームを放って来た『ビヤーキー』を牽制、六体編成を崩させる。

 そして、右に飛んだ三機の『ビヤーキー』に向かいビームを放つと、二機の『ビヤーキー』を落とすことに成功する。

 『そこでだ、君に頼みがある』

 「なんです?」

 『『ガタノトア』の情報を集めてくれ』

 「どうしてですか?」

 『それは…………』

 「あ、ちょっと待ってください」

 命令を飛ばし、『クトゥルフ』の体を大きく動かすと、左に行った『ビヤーキー』の方へと光速で近づいて行く。

 その途中、『ハイドラ』を投げ捨てると、太刀を引き抜き、そのリーチを生かして切りつける。

 残念なことに、先に回避されてしまい、攻撃は命中することが無かった。

 が、太刀を鞘に納め、ちょうど落ちてきた『ハイドラ』を掴むと、『ク・リトル』『リトル』からビームを放つと、横にないで『ビヤーキー』を三機切り裂く。

 「すいません、話の腰を折って、どうぞ」

 『あぁ、敵の戦艦だからな、情報を手に入れておいて損は無い』

 「……そうですね」

 流輝は少し釈然としないものを感じつつも、これ以上追及しても何も喋りそうになかったので、止めることにした。

 流輝はその間に腰裏に着けておいたボール状の兵器を取り出すと、それを『ビヤーキー』の集まっているところ目がけて投げつける。

 すると、『ビヤーキー』はそのボールを撃ち落とそうとする。

 が、その前に流輝はボールを起動させる。

 するとボールに開いた無数の穴からレーザーが放出され、ほぼ三六○度縦横無尽にレーザーが飛んで行く。

 虚を突かれた『ビヤーキー』は数機が爆散、数が一気に減って行く。

 残った『ビヤーキー』も散り散りとなり、編成も連携も糞も無くなる。

 その隙を突き、流輝は『ハイドラ』を構え『ク・リトル』と『リトル』の砲口を向けると、一撃一撃確実に『ビヤーキー』を落としていく。

 流輝は気付いていた、『ビヤーキー』は連携が崩されると極端に弱くなり、ただの羽虫となることに

 なので、連携を崩せる兵器を持って来たのである。

 数機『ビヤーキー』を落としたところで、再び編成を組まれ、連携攻撃を仕掛けてきたので、流輝は急降下すると、地面に転がっていた『レーザーボール』を回収、もう一度装着する。

 「さて、結構減らせましたね」

 残りは七機

 流輝が勝利を確信した時

 警告音が鳴り響き、左から熱源が接近していることが示される。

 いきなりの事だったので、顔だけをそちらに向けると、何が来ているのかを確認した。

すると、そこには黄色のエネルギー膜を纏った謎の機体が高速で接近して来ていていた。

流輝は険しい顔をすると、一言叫び『ク・リトル』『リトル』をそちらに向けた。

「『ハスター』か!!」


 ミリアはライフルを構えつつ『イタクァ』を一機ずつ確実に落としていた。この戦法は確実に敵を倒せるが、いささか退屈になる戦い方でもあった。

 地面に降り立ち、『イタクァ』を狙うと、敵を探知、ロックすると引き金を引き、撃ち抜く。正直、面白くない。

 なので、めったなことが無い限り、この戦法を使うことは無いのだが、今日に限っては憂さ晴らしも兼ねているので、この戦い方で良かった。

 簡単に言うなら、ミリアはへそを曲げていた。

 「うー」

 よく分からないが、とても機嫌が悪いのであまり積極的に戦う気に慣れなかったのだ。

 と、一機の『イタクァ』が『コス―GⅡ』の弾幕を抜け、レールガンを撃つと、端っこにいた一機の『コス―GⅡ』が被弾する。

 と、同時に、常時繋いでおいた『コス―GⅡ』との通信の一つから驚きの声が聞こえてくる。

 『うわぁ!?』

 『金沢、大丈夫か!?』

 『大丈夫です……損傷はあまりありません』

 『そうか……』

 ちなみにミリアはいちいち名前を覚えていないので、会話には混ざらない。

 その時、もう一機の『イタクァ』が一瞬薄くなった弾幕の隙を突き、『コス―GⅡ』を狙って攻撃を仕掛けようとする。

 「あ」

 ミリアはライフルをそちらに向けるとロックし、適当に撃ちだす。

 が、躱されてしまう。どうやらロックが甘かったらしく、ちゃんと狙いを付けられていなかったようだった。

 「…………うざ」

 そう呟くと、ライフルを収束し、太刀を召喚すると地面を蹴って宙に舞い、狙った『イタクァ』の方へと突っ込んで行く。

 そのせいで迷彩が解けたのか『イタクァ』は接近してきた『ナイア』に気付くと、飛行形態を解除し手の平からビームを放ってくる。

 それを機体を回転させて躱すと、ミリアは真っ直ぐ太刀を投げつける。

 と『イタクァ』に命中し、体を突き抜ける。

 ミリアは一気に近づき、『イタクァ』の機体が地面に落ちる前に刺さった太刀を掴むと、そのまま振り下ろし『イタクァ』の機体を皿に傷つけた。

 「あー、ウザい、やってやる!!」

 いい加減コソコソ戦うのも飽きたミリアは接近戦用の兵装に変換する。腰にはグレネード射出装置とナイフを多数備え、高機動用パックに近い装備となる。

そして大剣を召喚すると、『イタクァ』が集まっている方へと向かって行く。

 「うあああああああ!!」

 先ずは、一番近くにいた『イタクァ』の方へと一直線に向かって行く。体験を大きく振りかぶり、内部に搭載してある反重力発生装置を起動させる。

 すると、驚異的な加速をみせると、あっという間に『イタクァ』の目前に躍り出る。

 そして、大剣を振り下ろし『イタクァ』の体を切り裂く、否、どちらかと言うならその威力と重量を活かして叩き割った。

 「喰らえ!!」

 『イタクァ』の機体がバラバラになり、地面へと落ちて行った。

 が、ミリアはそれを見届ける前に、残った『イタクァ』の方を向くと腰にあるグレネード射出装置から一発撃ちだす。

 するとプラズマグレネードが射出され、空中で爆発を起こすと、半径数十mに特殊な電磁波が放出される。

 すると、それを浴びた『イタクァ』達の機能が一時停止する。

 ミリアはその隙を見逃さず、大剣を使い光速移動をすると、次々に『イタクァ』を切り伏せて行った。

 また数機は、『コス―GⅡ』の射撃で破壊された。

 その数五機

 「残り、三機かな…………」

 ミリアが慚愧を確認した直後、プラズマの効果が切れて『イタクァ』達が再起動する。そして再び飛行形態に移行すると、ミリアの方に機首を向け、襲いかかろうとする。

 「させない!!」

 その前にミリアはナイフを引き抜くと、『イタクァ』に向かって投げつける。

 その内一本は『イタクァ』の顔面に命中し、完全に機能が停止する。残り一本は躱され、もう一本は命中したものの致命傷ではなかった。

 ミリアは加速、躱した方の『イタクァ』を叩き割ると、そのまま大剣を残った一機の『イタクァ』に投げつける。

 が、『イタクァ』はそれを躱し、もう一度接近してくる。

 ミリアもあえて距離をとる事はせず、接近すると、『イタクァ』の放つビームを躱し、手を伸ばすと『イタクァ』の腕を掴む。

 そして、自分の方へと引き寄せると、開いている方の手で『イタクァ』の顔面を掴むと腕を掴んでいた手を離すと、首辺りも掴み、一息に引きちぎる。

 電脳を失った『イタクァ』は機能停止に陥ると、そのまま動かなくなる。

 ミリアはそれを確認すると、適当に辺りに放り投げる。

 「あー、スッキリ」

 日頃の鬱憤を晴らしたミリアは流輝の姿を探す。

 と、いくらも経たないうちに発見、そちらを向くと衝撃的な光景が目に飛びこんできた。

 それは『クトゥルフ』が『ハスター』の両手から放たれた二筋のビームに貫かれている姿だった。


 その少し前

 流輝は接近してくる『ハスター』から離れるよう後退しつつ『ク・リトル』と『リトル』からビームを放ち牽制を続ける。

 しかし、エネルギー膜に遮られビームは全て無効化され、『ハスター』の接近を止めることはできない。

 「……どうしますかね」

 と、突然『ハスター』のエネルギー膜発生装置の動きが止まり、折りたたまれるとバックパックに収納される。

すると、本体が姿を見せる。

『ハスター』は黄色をしており、明らかに戦闘には向かない細い体をしていた。バックパックは発生装置を収納できるような設計になっていたので、これもまた不思議な形をしていた。腕も長く、膝に当たる部分より下に伸びていた。

 が、一番奇妙なのはその顔だった。

 まるで仮面のような不気味な顔、ただただ無機物的な顔だった。

 「――――っ!!」

 完全に虚を突かれた流輝は無防備だった。

 その隙を狙い、『ハスター』は両手の平を『クトゥルフ』に向け、そこにある光粒子砲から二筋のビームを放つ。

 その一瞬前、警告音で正気に戻った流輝は『クトゥルフ』をねじるように動かすと、ビームを何とか躱そうとする。

 しかし、亜高速の光の弾をそう簡単に躱せるわけもなく、左肩と体の間と、右胸あたりにビームが命中、装甲を熱で焼いて貫通していく。

 そのせいか、流輝はつい、左手に持っていた『ハイドラ』と接続されていた『ク・リトル』と『リトル』を取り落してしまう。

「くっ!!」

 『ハスター』は追い打ちをかけるように、もう一度手の平を向けると、ビームを放とうとしてくる。

流輝は大きく後ろに飛ぶと『ハスター』に追撃をかわすように離れていく。

 その途中、損傷度を確かめるため、『クトゥルフ』に情報を提示させる。

 「右胸の損傷率は低いですが…………左肩の駆動系が焼かれてますね、そのせいで左腕が……すぐに修復しなくては」

 流輝は損傷したところにエネルギーを集中させるよう命令を飛ばすと、右腕で腰の太刀を抜き、『ハスター』のいる方へと構える。

 『ハスター』はそれを見ると、手の甲の奥にあるアーマーから小型のナイフを出すと、『クトゥルフ』に向かって突っ込んでくる。

 「きましたね…………」

 左腕が動くようになるまで、あと一分程度かかる、流輝はそれまで時間を稼ぐことにした。

 まずは、突っ込んで来る『ハスター』の動きを見切ると、最小限の動きでかわすべく、機体を右に動かす。

 すると『ハスター』はちょうど『クトゥルフ』のいたところまで行き、躱されたと分かると、再び『クトゥルフ』と向き合おうとする。

 流輝はその隙を見逃さず、その前に右手にある太刀を振り下ろすと、『ハスター』の左腕を切り裂かんとする。

 が、『ハスター』の動きは思いの外よく、すぐに『クトゥルフ』の方を向き、また、太刀の攻撃もかわしてしまう。

 そして、『クトゥルフ』から離れるように後ろに下がって行く。

 「予想通り」

 流輝は小さく呟くと、手にしていた太刀を投げつける。

 すると体勢を立て直した『ハスター』は、左腕を飛んでくる太刀に向けると、そこからビームを放ち、太刀を撃ち落とす。

 その間に流輝は右手に『ダゴン』を召喚すると、上に飛び『ハスター』の方へと向かう。『ハスター』はそれに気づくと、両手の平を宙にむけ、『クトゥルフ』を撃ち落とそうとする。

 それを見た流輝は即座に『クトゥルフ』に命令を飛ばした。

 「加速!!」

 次の瞬間、反重力発生装置の出力を最大限まで上げると、一息に『ハスター』に背を向ける形で後ろに回り込む。

 そして、逆向きに反重力を発生させると、体を捻じりながら、『ハスター』へと高速で近づいて行く。

反応が遅れた『ハスター』は『クトゥルフ』の動きに対応しきれず、振り向くのが一歩遅れてしまい、完全に無防備、隙だらけとなる。

そして流輝は『ダゴン』を振り下ろし、『ハスター』の左腕を切り裂く。

『ダゴン』の熱と鋭さで『ハスター』の生体装甲を焼き切り、内部を完全に切り裂き、関節から手の平にかけての部分が宙に舞う。それと同時に内部の液体が漏れて辺りに血のように吹き出す。

 流輝は腕を切断したことを確かめる前に、機体を大きく動かし、左足で回し蹴りを叩きこむ。

 そして『ハスター』を数十m吹き飛ばすと、地面に転がった左腕を踏みつぶしながら、ダーレスへと通信を繋いだ。

 「ダーレスさん、一ついいですか?」

 『ちょうどよかった、こちらからも報告があったんだ、が、そちらからどうぞ』

 「では、遠慮なく、あの『ハスター』は何かがおかしい、旧支配者とは思えません、何か、何か足りない気がします」

 『ちょうどよかった、こちらもそれに関することなんだ』

 「なんです?」

 『あれは旧支配者じゃない、『ハスター』の反応はある物の、無限機関の反応がおかしい、おそらくは疑似的な無限機関だろう』

 「つまり、どういう事です?」

 『つまり、あれは『ハスター』では無く『ハスター』の偽物に近いものだ』

 「何で今まで分からなかったんです?」

 『あのエネルギー膜のせいで、巧妙に隠されていた、それに疑似的な無限機関の反応も本物と極めて近い』

 「なるほど、分かりました」

その言葉を最後に流輝は通信を切ると、自己修復の完了した左手に『ハイドラ』を召喚すると、『ク・リトル』と『リトル』を腰から伸びるアーマーに接続しなおした。

 「で、どうしますかね」

 『ハスター』は再び起き上がると『クトゥルフ』の方を向いていた。『クトゥルフ』もそれに応えるように『ハイドラ』を向ける。

 すると、突然『ハスター』を狙ってミサイルが飛んでくる。

 『ハスター』はそれをビームで撃ち落とすと、ミサイルを破壊した。

 流輝は後ろの方を見ると、そこでミサイルポットを構えた『ナイア』の姿が見えたので、通信を繋ぎ、会話を始める。

 「ミリア」

 『……こいつ、もう虫の息じゃん、やっちゃおうよ』

 「いえ、こいつを倒しても意味ありません」

 『そうなの』

 「そうです、だから回収しましょう」

 『分かった』

 ミリアはそう言うと、ライフルを召喚して『ハスター』の方に向ける。

 すると『ハスター』はエネルギー膜発生装置を起動させると、再び黄色の筒のような姿に変わり、高速で飛んで行く。

 「あ!!」

 『チッ……逃がさない!!』

 流輝とミリアはそれを追って行こうとするが、突然ダーレスから通信が入ったので、一旦足を止めることにする。

 と、珍しく少し慌てたダーレスの声が二人の耳に飛び込んでくる。

 『二人とも新たな熱源だ』

 「え、どこです?」

 『上だ、エリックでは無いぞ』

 「何の話ですか?」

 流輝とミリアにも事態の緊迫さが分かってきた。何しろダーレスがめったに言わない冗談を言っているのである、それもとても下らないやつを。

 二人が少し気を引き締めたとき、ダーレスの次の言葉が飛び込んできた。

 『いま、熱源が増えた、おそらく投下したんだろうな』

 「『――ッ!!』」

 二人は同時に空を見る。

 すると、小さな影がいくつも降って来るのが確認できた。

 ズームしてさらに詳しく見ようとするが、その前にその無数の熱源が二人の目の前へと降り立った。

 その数十三

 二人はそれを見て、小さく呟いた。

 「何でしょう、これ」

 『……スキャンできないということは、邪神じゃ、無い?』

 突如現れた謎のロボット、それは何とも言えない形をしたロボットだった。

 大きさで言うと十八mぐらいだろうか『クトゥルフ』と比べるとかなり小さかった。

 頭がむやみやたらと大きい饅頭のような形をしていて、そこには数本のアンテナのような光る突起物が生えていた。

 上半身は頭と相対して小さく、頼りない感じがした。

 そして、一番奇怪な形をしていたのは下半身、巨大な筒状の形をしていて、その両側から小さな足が生えているのが分かった。が、足は地面に着かず宙に浮いていた。

 また、細い両腕には二本の棒のような物が挟み込むように装着されており、途中にあるグリップを握りしめていた。

 また、その二本の棒からは何かのコードが伸びていて、背中の二つの楕円形をした何かに繋がっていた。

 何となく、有機物的なデザインをしたロボットだった。

 「何でしょう、これ」

 『分からない』

 『コス―GⅡ』はどうしていのか分からないらしく、微動だにせず後ろで待機していた。

 二人が相談していると、突然現れたロボット達が行動を起こした。

 そいつらは腕に装着した棒状の何かを流輝達に向けると、『クトゥルフ』や『コス―GⅡ』全体に向けて通信を繋いできた。

 流輝はそれに応答すると『UNKNOWN』と言う文字と『SOUNDONLY』の文字が出た通信画面が浮かんでくる。

 そして、よく通る男の声が聞こえてきた。

その声はどういうわけか知らないが、外国人らしい日本語で話しかけてきた。


『私たちはアメリカ海軍特殊部隊『カダス』である、ロボットのパイロットたちに告ぐ、今すぐ期待を捨て投降せよ。繰り返す、私たちはアメリカ海軍特殊部隊『カダス』である、ロボットのパイロットたちに告ぐ、今すぐ期待を捨て投降せよ、三分以内に変異が無い場合、殲滅する、以上』

「『はい?』」

 この時、流輝とミリアは同時に寝耳に水とはこういう事かと納得していた。


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