第22章 グラン=パリス城
(グラン=パリス城)
グランはモニターを見ながら、自分の持っていた「幻術の杖」をへし折ってしまった。実は魔剣を通じてジン達の行動をじっと監視していたのである。
グラン「うぬぬぬぬぬぬ、これはいったいどういうことだ! マンティス!!」
クイーン、ダイヤ、キング「も、申し訳ありません・・・・」
グラン「せっかくパーティブレイクに成功したと言うのに、また復活してしまったではないか! 役立たずどもめ!」
クイーン「か、返す言葉も・・。しかし! ローパーには最初から少々問題が・・・」
グラン「言い訳はよい!! おまえらもアイル洗脳に失敗し、あげくに「魔人剣士」にまでしてしまったではないか!!!」
クイーン「一度は成功したのですが・・・」
グラン「だから言い訳はいいと言っているだろう! とにかく依頼人様は消息不明で助言は期待できない。おまえらは「ゲートキーパー」として、どんなことがあっても城内に奴らを入れるな! わかったな!」
クイーン「しかし何故、ここの場所がわかったのでしょう?」
グラン「お前があいつに渡した魔剣のせいだ! わしらも奴らを見る事ができるが、こっちの位置もわかってしまうのだ!」
クイーン(渡せって言ったのあんたじゃない・・・)
グラン「いいか! とにかくさっさと城門へ戻って奴らを返り討ちにしろ!」
クイーン、ダイヤ、キング「は!」
マンティスファミリーが去った後、後ろの棚からまた新しい杖を取り出し、玉座に座って大きくため息を付いた。これからの人事問題で頭がいっぱいだったのである。
***
アイル「ほ~、ここが」
ガルダ「魔剣の情報が正しければグラン城の様ですね」
二人をのぞいて、全員顔をしかめながらグラン城を眺めていた。その除いている二人とは・・・
アイル「なかなかいい感じのお城じゃん! ウィルもそう思うだろ?」
ウィル「え、ええ。でも、ここに、お兄様を・・・・さぁ皆さん行きましょう!」
アイルは「魔」属性故理解できるが、ウィルの気合いの入り方は尋常ではなかった。その気合いに答えるかのように、突如彼らの目の前、ちょうど城門の前に、3匹の昆虫が現れた。マンティスファミリーである。
クイーン「アイル以外は初顔合わせのようだな」
キング「貴様ら! そのどたまに刻みつけておけ!」
ダイヤ「我らこそ!」
クイーン、キング、ダイヤ「グラン城のゲ」
ウィル「どきなさい!」
彼らの名乗りが最後まで行く前にウィルは呪文の名前すら叫ばず、一喝してしまった。蒼天の杖から大きな光球が3つ発射され、マンティスファミリーに直撃した。
クイーン、キング、ダイヤ「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ! 出番これだけぇぇぇぇ!?」
暗闇の空に3つの固まりが飛んでいき、星となって消えていった・・・・・。
ウィル「さぁ、急いで城内に入りましょう」
アイル「おう! さっさと片づけようぜ!」
ジン、クレス、ドクター、ガルダ「・・ウィルさん、敵でなくて本当に良かった・・」
怒ったウィルに、敵はいないのだろうか・・・・。一行は難なく場内に進入できた。
***
(グラン城 玉座の間)
グラン「・・・な、なんなんだ、あの小娘・・・。ええい! 仕方ない! 私自ら、この手で始末してやる!」
グランは仕方なく玉座を後にして、「大広間」に向かった。
(グラン城 大広間)
アイル「おぃ! 誰か出てきやがれ! あのあほ3匹じゃ、物足りねーぞ!」
グラン「ご希望通り、出てきてやったぞ!」
グランはもう大広間に到着していた。しかし、深いった会話をする気がなかったので登場そうそう呪文を唱えた。
グラン「同士討ちでもしてろ! デ、バイクインタイル!」
ウィル「アンティスペル!!!」
グランの呪文で杖から放たれた黒い玉はジン達に突撃していったのだが、その前に先頭にいたウィルが呪文を唱え終わっていた。ジン達の前に輝く壁が張られた。玉は壁にぶつかり、今度はグランの方へ向かっていった。そしてあっけなく直撃した。
グラン「う、う、うわぁぁぁぁぁ! そんな! そんな! ばか・・・な・・・」
ウィル「同士討ちの幻術ね。あなた仲間・・・いない様ですね。だったら一人で悩んでいなさい!!」
グラン「・・・・僕・・・誰?・・・ここどこ・・・・・」
自分の幻術で自爆したグランは一人でつぶやいていた。それにしても先ほどといい今といい、この城でのウィルは信じられないような活躍を見せた。
アイル「なんだこいつ? まさかこいつがこの城の主ってわけじゃねぇだろうな!」
ジン「・・・本当にこいつらにパーティブレイクされたのかよ? 俺達?」
クレス「・・・・女は怒ると・・・怖いのよ・・・・怖すぎるけど・・・」
ドクター「くわばらくわばら・・・」
ガルダ(ウィル様はまだ覚醒能力を使ってない・・・覚醒しなくてこの強さですか。さすがゾディ様が認められた次期天体士・・・潜在能力が徐々に開花しているようですね)
***
一同はあまりにもあっけなく解決してしまったので、拍子抜けしてしまっていた。が、
???「やっと会えたな、『イレギュラー』ども」
突然、大きな白球が現れ、その中から両翼を持った人間が現れた。
ジン「誰だ! って、お前がこの城の主か!?」
???「こんなガラクタ城の主と一緒にするな。主はそいつだ」
そう言ってパニック状態のグランの方を向いた。
クレス「あ、あいつだったの・・・」
ジン「よ、よえーーーーー」
アイル「そんなことはどうでもいい! てめーは誰だ!」
ウィルはまた杖を構えた。が、意外にもその人物は冷静に淡々と説明を始めた。
???「たかがバグどもに名乗りたくないのだが、説明無しでデバッグするのは報告書を作る上で問題があるからな。宜しい説明しよう。私の名は『アーク』、君らを管理する者の一人だ。今はこの時代のデバッグの任に付いている。その前処理のため、とりあえず少し前の時代にグラン、マンティス、ローパーを設置しておいた。念のためにこの時代でグランに魔剣グングニルを渡して置いたのだが、どうやらあれらも『欠陥品』だったようだな。ジン、お前と同じだ」
ガルダ以外の全員が何の話だか全く理解できない顔をしていた。アークは話を続けた。
アーク「理解できなくて当然、お前らは所詮、『作られたモノ』、だからな。この時代には、いろいろ問題があってな、それで私自らが『修正』のために来てやったのだ」
ジン「・・・てめぇ、そのタカビーな態度といい、訳わからん話といい、俺が名乗ってもいないのに名前を知っている事といい、俺達を、『作られたモノ』とか、『欠陥品』とか、『イレギュラー』とか・・・ふざけるのもたいがいにしろよな!」
アーク「至って大まじめだが・・・。まぁいい。それとついでに言って置くが、私は君たちと交戦してデバッグするつもりはない。我々『管理者』は、出来るだけ自分自身の体で直接修正を行わないという規定が設けられているのでな。まあ、貴様らが予想外に抗っているので気になっただけだ。優先順位を変えるとしよう。とりあえず、この時代のメビウスシステムの再調整が先だ」
ジン「だから! 全然話がわからねーっつーの!」
アーク「欠陥品の息子よ! 口を慎め!」
ジン「むす・・、ふざけるな! 両親はちゃんといるぜ! てめーなんか知るか!」
アーク「そいつらなら、さっき始末してきた。指令書に書いてあったのでな。もう報告書に記入済みだ。それとジン、お前はメビウスシステムの、補助機関『ノヴァ』、から作られたのだ。その操作をしていたのが私だから、言ってみれば生みの親は私だ。お前の両親だった者どもは、単なる『育ての親』だ。・・・さて、長話になったな、お前らは後回しだ。まず調子の悪いメビウスシステムの修正からにするか。それではな」
ジン「き・・・さ・・・ま・・・・、よくも親父とお袋を・・・・てめー! 自分のした事に罪悪感とか無いのか!」
アーク「うるさい奴だ! 私は指令書通りに仕事をしただけだ、罪悪感等あるか! それよりお前ら、ギルド登録者だろうが! まず先に自分のバッジの色でも確認したらどうだ? もう私はメビウスの方に直行する!」
そう言ってまた光球の中に入って消えてしまった。
ジン「てめぇ! まち・・・くそ!」
クレス「ジン、あんな奴なんか今は無視しましょう。それより彼奴に言われてバッジを見てみたんだけど・・・・」
ジン「バッジ? そう言えば忘れてたな・・・・・・え? 白色!?」
アイル、ドクター「俺も白だ」
クレス、ウィル「私も・・・」
ガルダ「私は登録者ではないので関係ないですね。さて皆さん、知っての通り登録者はパーティ全員の職業バッジの色がグレード10の白色になった場合、いったんギルド本部へ帰還しなければいけません」
ジン「お、おう、そうだったな。しかし、さっき『魔人剣士』の職に就いたばかりのアイルが、なんでグレード10なんだ?」
ガルダ「おそらく、最初からそうなのでしょう」
ジン「な、なんだそれ!?」
クレス「もう! とにかくギルドの本部へ行きましょう! こういう面倒な手続きはぱっぱと済ませないと」
ジン「そうだな。ガルダ、本部への最短ルートはわかるか?」
ガルダ「・・・・検索できました。それほど遠くはないようです。急ぎましょう」
そう言って皆は外に出て、ガルダの背に乗ってギルド本部へ帰還することにした。
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