第13章 アイルの捜索の途中
一行は途中までは深い森の上空を飛んでいたのだが、地上の様子がよく見えなくなったので、地上付近の道を辿っていくことにした。ガルダは一行を乗せて、地面を縫うように低空飛行していた。
ジン「それにしても、俺とクレスだけには、あれだけ敏感なのに、なんでまたアイルとドクターには鈍感なんだ?」
ガルダ「・・・・・少なくともレイスさんに関しては、幻術にかかっていたため、私のレーダーに引っかからなかったのでしょう。アイルさんも、現状で未確認状態なので、場合によったら、まだ幻術にかかったままなのだと思います」
ジン「レーダー? ま、いいか。で、なんで俺達はこっちへ向かっているんだ? 確かガルダが言い出したんだよな、こっちって。こっちの方角にアイルはいるのか? それともその前に、なんかやることでもあるんかい?」
ガルダ「はい、ひとつだけあります。ある場所に寄って頂く事です。そのため上空ではなく、地上付近を移動することにしたのです。いかんせん昔のデータなので、場所に少々自信が無くて」
ジン「データ? ま、まあいい、それで俺達はそこでなにを?」
ガルダ「ある人物に会って頂きます」
ジン「ある人物? 誰だ、それ?」
ガルダの背に載っている者達ならだれでもそう思った。勿論、ジンの横に座っていたクレスもそうだった。
クレス「そうねえ、もし危険人物だったら、また戦闘でしょ? ちょっとリスクが大きいような気もするけど・・・」
ドクター「そうだなあ、少しくらい教えてもらわないと、こっちも困るんだが」
ガルダは仕方ないと思ったのか、語り始めた。
ガルダ「そのお方の名前は「メテオ=ゾディ」。目的地の「天体観測所」の主です」
ドクター「天体観測所? 聞いたことのない施設だな。で、職業は? その「テンタイ」とかの関係の職か? 主って事はギルドにも登録されているはずだが?」
ガルダ「この世界では・・・確か登録されているはずです。職名は「天体士」です」
ジン、ドクター、クレス「天体士?」
ガルダ「聞いたことのない職だと思います。おそらくあの方だけだと思いますから。それ以外に弟子を一人だけ雇えます。その方も「見習い天体士」として登録されます」
さすがにかみ合わないことだらけの事を矢継ぎ早に言われたので、たまらずジンはガルダに向かって文句を言った。
ジン「ちょっと待ってくれ! ギルドに登録できる「職」っつーのは、多数が志願していて、生業としていることが条件なんだ。そうでないとギルドが仕事依頼も給金もグレードも管理できねーんだ。だから、この世界でひとりだけの志願者に、職を認定したり、仕事をあたえているなんて事は絶対にないはずなんだ! もしかして、ギルドは隠れてそんな事までやっているのか?」
ガルダ「・・・・・」
ジン「おい、ガルダ! 答えてくれ! 少なくとも、ここにいるガルダ以外の全員がそう思っているはずだ」
ドクター「ああ、そうだ」
クレス「そうねえ、私の「ヴォイス士」も少ない方だけど、里には結構いたから、ギルドは認めてくれたけど」
ガルダ「・・・・・では、たった一人でも、この職がこの世界の運命を握っている程の能力を持っていたら?」
ジン、クレス、ドクター「は?」
背に乗っている全員が思わず叫んでしまった。ドクターがなんとか考えられうる事がまとまったので答えた。
ドクター「そ、そりゃ、ギルドだって認めざるを得ないと思うが・・・・・」
クレス「そんな職が、この世の中にあるの?」
ガルダ「天体士が、まさにそれなのです。そして、その施設を十分運営していけるだけの給金も固定額ですが支払われています。仕事依頼は基本的にありません。天体士本人に任せてあります」
ジン「か~! なんつー美味しい職だよ! それ! それじゃ、俺、兼業職の一つ、いや、完全に転職しちまおうかなあ。見習いからってことでさ」
ガルダ「ジン様、失礼ですが、それは出来ません。それに、ここにいる全員が不可能です」
ドクター「全員?」
ガルダ「はい。天体士は世界で一人、そして継承のための弟子は一人、と、ギルドが、いや、古来から決まっております。ずっとその制度で規律が守られてきました。そして、その弟子の枠ですが、もうすでに決まっております。ソディ様が決められたことなので変更は出来ません」
ジン「それは残念無念・・・・・? って、おい、古来って・・・・・ガルダ、おまえ、歳いくつだ?」
ガルダ「・・・・・・・失礼ですがその質問にはお答えしかねます」
ジン「そうか・・・悪かった」
ドクターもクレスもジンと同じ事を考えていただけに残念だったが、それよりまた1つ疑問が増えてしまった。それは、あれだけジンに従順な彼なのに、いくつかの質問には答えられないということである。
話題の方向を変えようと思い、クレスが質問した。
クレス「それで、その天体士って、具体的にどういう仕事をしているの? 想像できないんだけど」
ジン、ドクター「俺もだ」
ガルダ「会えばわかります。百聞は一見にしかず、です」
ドクター(・・・なんで、そんな、古い「コトワザ」を知っているんだ? 俺も古文書で知っている位なのに)
ジン「・・・わかった。とにかく、会おう、会ってみてそれから考えよう」
ガルダ「ありがとうございます。もうそろそろのはず・・・あ、見えてきました!」
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