第9話:敵って何っスか?


使えなくなった携帯電話をポケットに突っ込み直し少女の上体を起こして傷の具合を見てみる。医学生でもないただの学生でもそれなりの応急手当は可能だ。勇矢はとりあえず一番大きな傷であるわき腹に自分のハンカチを強く押しつけた。


しかし所詮は素人の応急処置。このまま黙っていても傷が勝手に塞がることもなければ血が止まるわけでもない。あくまで時間を僅かに延長させているだけで根本的な解決にはなっていない。


さらに傷はわき腹だけではない。背中にある刺し傷もそうだが細かく刻まれた傷から出ている出血の量からかなり危険な領域に入りつつある。


「ダメだ、血が止まらない……!この調子だと警備隊や救急隊は頼りにならないし直接近くの病院に運ぶしかないか?」


そこまで言って勇矢は大きな振動を与えないように少女を背負い、その場から立ち去ろうとする。


「…な……にを?」


「決まってんだろ。助けるんだよ」


アリスの問いかけに勇矢は少しの間隔もあけることなく答える。買ったばかりの食品が入ったマイバッグは無惨に地面に投げ捨てられていたが人の命に比べればどうということはない。


大きな振動を与えるわけにもいかず、むやみやたらに走ることは出来ない分それを大股で歩くことで距離を稼ぐ。


「ダメ、なの…は、やく…私を降ろ…すの…」


「いいから怪我人は黙って背負われてろ!こんな明らかに変な事件に巻き込まれてますみたいな女の子をこのまま黙って見捨てられるわけないだろうが!」


突き返すように放った言葉は少し乱暴な印象を与える。だが見ず知らずのしかもなにやら訳ありの少女を助けるという行為をしている段階でそれは乱暴ではなく善意あっての事だと容易に理解させる。


「あなたを巻き込むわけには……いかないの…。もしまたあの人達がやって、きた、ら……今度は…あ、なた…まで……」


ここまで言ってアリスは激しくせき込み吐血した。呼吸器官もやられているのか言葉を発する度に血が微かに滲み出ている。


「うるせぇな!もうとっくのとうに巻き込んでんだよ!今更傷だらけのお前をおいて、はいそれじゃあ後は他の人に任せて俺は退散なんてくそったれな行動とれるかってんだ!」


それに、と勇矢は付け加える。


「お前がどんな立場にいてどんな事情があるのかなんて俺には知らない。だけど目の前で困ってる女の子に救いの手を差し伸べるのに理由はいらないだろ?」


言って歪みのない澄んだ笑みをアリスに向ける。


「だから安心して俺に任せておけ。必ず助けてみせる」


その言葉はアリス=ウィル=ホープにとって、どれだけ待ち望みどれだけ聞きたかった言葉だっただろうか。


自分以外信じる者がいない状況の中、それでも求める者に救いは与えられると世界の不条理に仇なすただの綺麗事を信じ続けたアリスにそれはどれほど光を灯しただろうか。


人間の闇を垣間見た少女に少年が差し出した救いの手はどれだけ少女の冷め切った心を溶かしただろうか。


初めて触れた人の温もりに優しさに、どう対応したら良いのか分からない。喜怒哀楽のすべてが混じり合い、それは大粒の涙としてアリスの瞳からボロボロとこぼれ落ちた。


「__________ッ!!」


噛みしめるようにアリスは泣いた。


たとえ世界が新世界に変わろうと冷徹な人の心はそう簡単には変わらない。誰もが自分を一番に可愛がり、関係を持たぬ者には冷たい態度をとる。誰かが傷つこうとそれに都合良く影をあて蓋をするように見えなくする。


力ある者に従い力なき者には従う権利しか与えられない。弱者は強者にこびへつらい、それを見る人間は知らぬ存ぜぬの態度を貫くばかり。


この新世界にはご都合主義の綺麗事はなく、全て力の強弱によって決められた運命に従うだけ。そう思っていたアリスの淀んだ思考に一筋の光が照らされた。


たしかにこの世界には闇がある。拭おうにも拭いきれない邪悪な闇が、誰しもの心の中に在り続ける。だがそれは同時に光も在り続ける証明でもある。光のない所に闇は出来ず闇が出来ぬところに光は射し込まない。


それを示すように神代勇矢には救いを求める者に救いの手を差し伸べる優しさをもった強い心がある。心の闇を打ち消す際限のない光が底の知れない闇を照らす。


今まで自分が信じていた事。


綺麗事だと一蹴された思い。


それらが決して嘘でも偽善でも無駄でもなかった事にアリスは体を小刻みに震わせながら涙を流す。


いや、彼女が涙を流す理由はもっと単純なのかも知れない。それは自分を救ってくれるヒーローが遅れながらもやっと登場してくれたことへの感動と感謝。


アリスの涙を肩にうけ、勇矢は怒りを覚えていた。


ふざけるなと。


こんな少女に手が差し伸べられる優しさも温もりも知らせぬまま健気に生きる命を強引に奪い取ろうとする身勝手な行動に内心穏やかではなかった。


腹の中にボーリングの球を落としたような重い怒りが全身を巡る。頭に血が上り強く歯を食いしばる。


「(この子がなにをしたっていうんだ?こんな人の優しさに触れることすら許されない程のことをこの子はしたっていうのか?)」


詳しい事情など知らない。もしかしたら彼女はこうやって殺されかけるほど大きな罪を犯してしまったのかもしれない。


だが、そうだとしても。


「(それは…………あまりにもかわいそうだろ…!?)」


問答無用に攻撃され周りから無慈悲の糾弾をうけるような罪を犯したかどうかなど関係なしに、人の温もりを優しさを感じることが出来なかった事に勇矢は心の底から同情した。


1人の少女をここまで追いこんで、それが何の正義となろうか。希望を取り除く行為そのものは罪とならないのか。


底知れぬ闇に沈められていた少女の涙は勇矢の心を激しく揺さぶった。


「…ごはっ!?……ゲホゲホッ…!?」


アリスがまたも吐血した。しかも今回はかなりまずい。粘りけのある血の塊が出たという事は臓器のほとんどが機能を低下させているという証拠だ。


「(くそっ!タイムリミットは思ったよりも近いって事か!?)」


背負っていたアリスを一度地面に寝転がせ傷の様子を見る。そこからは応急処置など意味をなさない程の血が泉のようにあふれ出ていた。


アリスの息も最初に比べるとかなり乱れている。薄く開いた瞳の焦点が今度こそ完璧にあわなくなっている。


「ダメだ!こんなところで死ぬな!誰も救いを与えないっていうのなら俺が救いを与えてやる!お前がもう傷つかないように俺が守ってみせるから!だから……死ぬな!!」


口先だけで実際は痛みに苦しむ少女の力に何もなれていないという厳しい現実を突きつけられる。


それなりの知識はある方だとは思っていた。自分であれば多少のことにはスマートに対応できると過大評価していた。


その結果がこれだ。


少女を癒すことも治すこともできず、やれることといえば声をかけてあげるだけ。


いかに自分が今までお気楽にのうのうとこの新世界を生きていたのかを痛みをもってたたき込まれる。


勇矢は強く歯を噛みしめる。そこには一種の苦痛さえ潜んでいた。ただただ無力さを痛感させられる息苦しい瞬間に心が多方向から強く圧迫される。押しつぶされるような重圧感は命がかかっているからか。


しかしそんな心の傷でさえ少女に比べれば恐らくほんのひとかけらにもすぎないのだろう。自分のあまりの小ささに目を瞑る。次目を開けたときには目の前にヒーローがいてそれで全部綺麗に丸くおさめてその後の世話もしてくれる夢を強く思い描く。


「大…丈夫……だよ…」


か細く消え入るような声が勇矢を支えた。傷だらけの手を苦痛の表情を浮かべる少年の頬に優しくあてがう。


「私は死なない…から……あなたが背負うようなことは……なにも…ない…から」


「ア、リス…」


「ただでさえ迷惑かけちゃったのに…これ以上……なんて…かけられない…から…」


違う。


「(俺が欲しかった言葉はそんなものなんかじゃないんだよ……ッ!!)」


ボロボロの少女に崩れかけた心を支えられながら勇矢はそれを心の中で否定した。


自分が欲しかった言葉はそんな悲劇が悲劇を生むような悲壮連鎖的なものではない。


たとえ嘘でも勇矢は『ありがとう』と言って欲しかった。


自分の行いはその場限りの見え透いた偽善だということは分かっている。きっと自分は耐えられなくなったらなんの躊躇もなく敵味方を容赦なく切り捨てるだろうことも理解していながら、薄っぺらな愛だと知っていながら。


それでも肯定してほしかったのだ。


救われる事を感謝の言葉として認めてもらいたかったのだ。そうしなければ彼女はどこまでも救われないような気さえした。


「救われないさ。そんなじゃじゃ馬はね」


第三者の声が聞こえた。


声色だけを鑑みてもそれは明らかに味方のものではない。上から見下すような傲慢なプライドさえ感じさせる声のした方へ勇矢は視線をうつす。


そこにいたのは黒いローブを着た切れ長の目をした男。顔はうっすらと痩けており黒いローブはゆったりとかなりの余裕をその中に持て余している。


血塗れの少女を見てもなお飄々とした態度を崩さない謎の男に勇矢は直感的に敵意を感じた。状況から判断するに恐らくこの男がアリスの言っていた組織の人間の内の1人なのだろう。


「全く……たかがペット一匹の散歩にここまで状況を混乱させられるとは思わなかったよ。やっぱり馬鹿共にペットの世話は早すぎたかな?」


「……誰だ、お前?」


おや、私のことかい?と男はわざとらしくオーバーリアクションを交えてから答える。


「私はメゾック=マヤノフ。その子のお世話係さ」


「お世話係?ふざけんな!こいつはお前等のペットでもなんでもねぇ!俺らと同じ人間だ!」


立ち上がり勇矢はメゾックに最初から噛みついていく。話し方からして気に入らない。それに人をペット呼ばわりするあたり、この男に人としての良心があるのかはいささか怪しいところである。


力任せに睨みつける勇矢を鼻で笑いながらメゾックは馬鹿にしたように言う。


「君もおもしろいことを言うね。武人として生まれた私たちに人間なんて言葉を当てはめようとするなんて。もしかして君はぬいぐるみを自分の友達なんていう痛い奴じゃあないだろうね?」


「平気で人を傷つけるような奴よりはまだマシだと思うけどな。それよりお前、メゾックって言ったな。どうしてアリスをここまで傷つけた!?」


「おいおい…最近じゃあペットに仕付けをさせないだけで罰せられる世の中だぞ?多少の仕付けに怪我はしょうがないだろ」


「て、めぇ……ッ!!」


ここで完璧に勇矢の我慢が限界をむかえた。


最初は事情も分からずもしかしたら少女を助ける自分の方が間違っているのかとさえ思っていた。しかしながらそんなことはなかった。アリスはただの被害者だ。間違っているのも罪を犯しているのも全部アリスではなくこの男を含めた組織だ。


勇矢は勢いよく足を地面に叩きつける。その衝撃を利用して一直線にメゾックめがけてかけあがり腹立たしい男の顔をメチャメチャにしてやろうと右拳を振りかぶる。


だが、男は飄々とした態度を崩すことはない。


猪突猛進とばかりに真っ正面からやってきた突撃をヒラリと身を翻してかわし、それから隙だらけの勇矢の背中に回転を利用した蹴りを深々とめりこませる。


メリィィィッ!!と背骨が体の内側に押し込まれて臓器を腹部に押し出していく気味の悪い感覚が痛みを伴って勇矢を襲う。


「ご……あぁ……ッ!?」


突進した勢いを殺せずメゾックに蹴り飛ばされる形で地面に叩きつけられた勇矢は吐き気にも似た感覚を抱えながら地面にうずくまる。


外部に攻撃されたはずなのに痛みはどちらかといえば内側に集中している。痛みを緩和しようにもどうすることも出来ない勇矢はただ抱き抱えるように身を丸める。


「やっぱり素人か。そりゃそうだよねプロがこんなに分かりやすく痕跡を残してくれるはずもないし」


そういってメゾックはローブの中から何かを取り出し、それを地面に寝転がっている勇矢に投げつける。それは先程勇矢が近くのスーパーで買った商品が入ったマイバッグだ。


「ほら落とし物だよ。ちょっと怪我するだけでいつもの生活に戻れるんだからラッキーだと思うことだね」


それだけ言うともう追撃する気はないのか痛みに悶える勇矢をおいて、さっさと目の前で仰向けになっている血塗れのアリスの元へと近付いていく。


アリスは既に立ち上がる力も意識もないのかぐったりと地面に寝ている状態だ。これでは造作もなく連れ去られてしまう。


「はぁ…はぁ……おい!その子からさっさと離れろ!このもやし野郎が!」


「そのもやし野郎にやられるようなら君は虫かなにかかい?あまり私を怒らせないことだね。それだけじゃあ済まなくなるよ?」


言葉に若干の威圧感を含ませながらメゾックは勇矢を威圧する。


ただし視線はアリス1人にのみ向けられている。


「迷惑ばかりかけてくれるね君は」


地面に小さな血の海を作り出す傷だらけの体にメゾックは先の尖った靴先でゴミを触るように小突いてみせる。


反応を伺うというよりは腹いせに近い行動にメゾック=マヤノフという男の性格の悪さが際だって観察できる。


「言うことを聞けと言っただろう?君が自分勝手な行動をしなかったら、こんな目にはあわなかったのに」


「…はぁ……はぁ…ッ…」


「おや、まだ意識があったのか。もうとっくのとうに意識はないものだと思っていたけれどいやはや生命力というのはいささか馬鹿にできないものだね」


賞賛ではなく悪意のある言葉と声色をもってメゾックは倒れているアリスから小突いていた足を離す。


アリスはもう誰が何をしているのかさえ分からない状態なのか荒い呼吸だけを繰り返している。喉に血がたまっているのか気管支系を傷つけたのかは知らないが呼吸と同時に口から漏れ出る血が事の重大さを物語っていた。


だがそれを行った張本人であるメゾックはというと悪びれる素振りもみせず、飛んで逃げる蠅を見るかのように忌々しげな視線をおくっている。


「……また運んでる最中に逃げられるのも面倒だからさっさと気絶でもなんでもしてくれるとありがたいんだけどね」


悪態だけが含まれた陰湿な言葉の後にメゾックは足を軽く後ろにひく。恐らく自分の手でアリスにとどめをさすつもりなのだろう。


しかしボールを蹴るようにアリスの頭を尖った靴先がとらえる前にメゾックの背中に何かが当たった。


若干眉をひそめた後、メゾックは小刻みに聞こえる落下音と自分の足下に転がってきたものを見る。それは親指程度の大きさをした小石だ。


「………どうやら君も君で聞き分けの悪い原始人のようだね」


後ろにひいていた足を収め視線を僅かにずらしたメゾックが見たものは既にダメージから回復しつつある神代勇矢。彼の手には倒れた時に拾ったのであろう小石が数個浅く握られている。


勇矢は手に持っている小石を気軽な調子で軽く上に投げてはつかみ上に投げてはつかみを繰り返しながら挑戦的な目でそれに応じる。


「聞き分けがいいだけじゃこの世は渡っていけないからな。それともお前は誰かの言い分に従わないとなにもできないタイプの人間なのか?」


「言葉を理解できない原始人が。武具という道具を手に入れた位で調子に乗るんじゃない」


メゾックはやや剣呑な光を帯びた目で勇矢を見る。その言葉遣いにも先程と比べると少し荒さが出てきているのが良くわかった。


「暴力でなんでも解決しようとしてるのはどこのどいつだよ。人様をペットやら原始人やら見下しやがって、どれだけ自分の事偉いと思ってるんだ?」


挑発的な態度のまま勇矢は手に持っていた残りの小石を一斉にメゾックに向けて投げつける。同じ手はきかないとばかりにメゾックは黒いローブを使ってそれらを地面にはたき落とす。


だが落ち着いて対処した行動とは真逆にメゾックの顔には明らかな怒りが芽生えつつあった。


「いい加減にしろよ口先だけのガキが……これ以上私を怒らせて一体どれだけの苦痛を所望したいんだ?」


「悪いけど苦痛を味わうのはお前だよメゾック。女の子1人に寄ってたかって平気な顔して傷つけやがって。そんなの俺じゃなくっても誰でも腹が立つだろうよ」


勇矢はギリリ…と拳を強く握る。


「アリスは泣いてたよ。まるで手を差し伸べられることさえ初めてみたいに俺なんかの助けを嬉しそうに涙を流して。俺には詳しい事情なんかは知らない。もしかしたらお前が正解で俺が間違った行動をとっているのかもしれない。だけど!1人の女の子の心を傷つける位なら俺は間違ったままで良い!お前らみたいな腐れ畜生共と同じになりたくない!」


それは心からの言葉だった。


確証のもてる物なんて今の神代勇矢の判断材料には全くない。それどころか疑問が疑問を生む負の連鎖さえ発生しているくらいだ。


それでも自分の今とっている行動は決して間違いなんかじゃないと思った。


いきなり路地裏で血塗れになって倒れていた少女をみて助ける事は間違いか?


詳しい事情を知っていなくても助けることは間違いか?


涙を流して感謝をする少女の力になってやりたいと思うことは間違いか?


答えは誰にもわからない。そもそも数学のような明確な答えがあるのかさえ定かではない。なぜならそこには三者三様、人それぞれの考え方や価値観があるからだ。


多数決で決めようとそれは数で決まったものであり完璧な解答とはよべないだろう。


ならばそれが正解か間違いかを決める事が出来るのは唯一己の心のみ。


どんなに狂った考え方だろうと客観的にみれば間違った行動だろうと自分の心から導き出された結論であるならばそれはたった一つの答えになる。


「……守ってみせる」


勇矢は意志の宿った強い瞳で敵を正面から見据える。


「たとえお前が正解で俺が間違いだとしても、これが………アリスを助けるっていう事が俺にとってのたった一つの正解なんだ!」


答えは得た。それが周りからどのような評価をうけようと少年にとっての唯一の答えは確かに導き出された。あとは全力をもってそれに従うまで。


しかし。


「………クッ……アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」


勇矢の出した答えをあざ笑うかのようにメゾックは声を大にしてそれを笑い飛ばした。片手を顔にあて盛大に笑う様は喜劇を見て楽しむ子供のようだ。


「ふっ、ふふ……長い時間をかけて一体何を言い出すかと思えば…。こいつは傑作だ。何も知らない綺麗事だけしか許さないガキの考え方だ!ハハハハハハハハッ!!」


メゾックは目元に涙さえ浮かべて笑った。


「まずは勘違いしているようだから教えてあげるけど、こいつは女の子なんて可愛らしいくくりに入るもんじゃない」


「またペットだとか言うつもりか?そろそろ聞き飽きたよその上から目線の似非王政は」


「いやいやこればっかりは本当のことさ。上辺だけのものじゃない、本質そのものといっても良い」


メゾックの意味深な言い回しに勇矢は怪訝な表情を浮かべる。それに応じるようにメゾックは解説者気取りに口を動かす。


「この子は…アリス=ウィル=ホープは武人じゃない。それどころか人でもない。分かるかい?彼女はね兵器なんだよ。“神造兵器しんぞうへいき”というロキ様が狂乱の世を作るためだけに残した最大最強の兵器なのさ」

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