第3話:暗躍する影って何っスか?
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一つはエリア1。
刃物や銃火機といった危険物はもちろんのこと情報漏洩の心配がある電子機器は全て入り口前の最先端特殊電子センサーによって取り除かれる。
没収などと甘ったるいことはせず破壊する。これが
もっとも未だその本質が判明していない危険極まりない集団がいる街にすきこのんでやってくる一般人はおらず来るのは街に住む武人達の両親か企業の関係者。
だが中には武人達の情報やDNA欲しさに乗り込んでくる輩も少なくはない。そのためのエリア1だ。
周りを500mの高さを誇る壁によって囲まれた鍛冶場フォージシティに入れる場所は地上からだとエリア1にしかなく必然的に一カ所に警備を集中させてしまえばそれだけで済む話なのだ。
とはいってもその例外ももちろんあるわけなのだが。
次にエリア2。
このエリアには大規模なショッピングモールが形成されている。エリアそのものを商業施設に変えたそこでは複数の小売店舗やフード・サービス業はもちろんのこと美容院・旅行代理店・有名どころから学生向けに価格を安価にしたファッションブランドまで全てのニーズに応えられるようなエリアになっている。
またショッピングモールといってもその中には国内最大級の規模を誇る遊園地が建造されておりそこにあるアトラクションのどれもが一般には公開されていない最先端のテクノロジーが使われたものだ。
他にも室内プールやゲームセンターなどショッピング以外にも遊べる施設が多く存在している。
いうなればエリア2は
続いてエリア3
エリア3では
風力発電や太陽光発電、水力発電はもちろんのこと武人が武具を生み出す際に発生する特殊な電磁波を用いることで原子力発電を越える電力供給を行っている。
武人には体内に特殊な電磁波である“創造の
研究の段階でこの“創造の
0から物質を構築する力はあまりにも現実離れしており未だに調査中となっている。
その研究段階の中で発見されたのが“創造の
一応は“創造の
続いて一番武人達の出入りが激しいエリア4。
このエリアには幼稚園から始まって小中高大といった教育機関が限りなく密集しており、
もちろんそこには学校に通う一人暮らしの学生達に向けた都市開発がキチンと行われている。
学生寮はもちろんのことスーパーやコンビニ、ゲームショップや本屋、エリア2とまではいかないがそれでもそこそこの規模の簡単なショッピングモールもある。
下手に他のエリアに足を運ばなくともこの街に住む学生であれば、このエリアだけで生活用品のほとんどは用意でき十分にまともな生活を送れるようになっている。
さて最後にエリア5だが、これに関していえばエリア1とはまた別方向の堅固な警備体制がとられている。
エリア1が情報漏洩や外部からの脅威の対策の為にセキュリティーを特化しているとするならば、エリア5はセキュリティーはもちろんのこと武力行使をもって内部情報の漏洩を防いでいるのだ。
警備システムのレベルだけみればエリア1が最も堅固なものだが、武力を用いた実力行使の警備体制だけをとってみれば別の意味で
さて、そこまでの警備体制をとって一体なにをしているのかというと、そこでは
エリア3でも使われている“創造の
それ以外にもエリア2にあるレジャー施設のアトラクションやゲームの開発、食品工場や衣類製造工場もあり
現在時刻は昼の12時半。
街のほとんどの人間が昼食を食べたり昼休憩をして平和な時間を過ごしている中、そんな平穏を打ち砕くようにまたは内側からかき乱すようにエリア3で爆発が起こった。
爆発といってもエネルギー開発施設が爆撃されたわけではない。それは数人の男達が生み出した爆発だ。
頭から足の先まで簡単に覆い隠せるほど長い漆黒のローブを羽織った数人の男達の手にはそれぞれ歪な形をした剣や斧といった武具が握られている。
武具を持った男達は中心にいる何かを取り囲むように円形の配置につく。
その中心にいるのは一人の少女だ。
15歳程度の見た目をした金髪碧眼の少女。その顔立ちは幼さの中にどこか妖艶さを纏っており歳不相応の不思議な色気さえ感じさせた。ふわふわとした長い金髪や白い肌はまさに外国人のそれだが、砂埃や切り傷がその全てを台無しにしている。
「はぁっ……はぁっ…」
爆発による痛みに耐えながら金髪の少女は荒い息を整えている。宝石のように光り輝くその瞳は自分を取り囲む漆黒のローブを羽織った男達を鋭く睨みつけている。
「おいおい、そんなに睨みつけるなよ。まるで私がなにか悪いことをしたみたいじゃないか」
少女の言葉のない睨みに飄々とした態度で答えたのは歪な形の剣を手にした細身の男。顔を隠すように頭に被っていたローブを脱ぐと切れ長の目が少女を見下していた。
「君がいけないんだよ?私たちの制止を振り払って急に逃げ出すんだから」
一歩また一歩と地面に倒れ込む少女に近づき、その場にしゃがむと少女の顎を人差し指で支えるように持ち上げる。
「言うことを聞かないペットにはそれ相応の仕付けをしないといけないからね」
「私はあなた達のペットなんかじゃないの!今に見てなさい、直ぐに爆発音を聞きつけた誰かが助けに来るんだから!」
「うんうん。健気に他人を信じる姿は美しいけれど残念ながらそれはないよ」
クスクスと癇に障る笑い方をする細身の男に文句を言おうとしたが、言葉が口から発せられる前に金髪の少女は疑問を感じた。
自分を狙って放たれた爆発が起こってから既に数分が経とうとしていたが未だに警備員が状況確認のために飛んでくるということはない。
いくら爆発を最小限に抑えたとしても、爆音というものはサイレンサーをつけた銃のように器用にかき消せるものではない。くわえて爆発による振動や煙が更にその存在を目立たせるはずだ。
「牢屋にいれられていた君には分からないと思うけど発電所って存外警備がザルなところばかりなんだよね」
エリア3にも警備員は配置されておりセキュリティーシステムもそれなりだが、それはあくまで“創造の光ダイアナイト”を使ったエネルギー開発を行っている施設のみであり、他の発電所には全くといって良いほど警備システムは作動していなかった。
そんな裏の事情など知ったことかと自分の顎に触れている男の指を首を振って払いのける。
「さあ、もうこれ以上迷惑をかけないでくれ。私たちも暇じゃないんだから」
「どうせ帰ったところでまた辛い実験を繰り返すだけでしょ!?もうそんなの嫌なの!だから私は絶対に帰らないの!」
少女の鋭い剣幕はしかし細身の男には刺さることもなく鼻で小馬鹿にしたように笑う。
「それすら君のためだということに何故気付かないのか……これだからガキは嫌いなんだ」
口調を荒いものにして男はその場から離れる。
「連れて行け。私は少し寄るところがある」
「はっ、しかし一体どこへ?」
部下とおぼしき黒ローブの男が細身の男に向かって問いかける。すると細身の男はまたしても小馬鹿にしたように鼻で笑ってからうっとうしそうに答える。
「気分転換だよ。その子のせいでストレスを残したまま組織に戻るなんてたまったものじゃないからね」
「待つの!どうして……どうして私はこんな思いをしなくっちゃいけないの!?」
複数の黒ローブの男達に捕獲されながら少女は細身の男に向けて叫び声をあげる。
しかし細見の男は声のする方を見ることはなく飄々とその場から立ち去っていく。
少女の救いを求める声はしかし平和ボケしたこの街の住人に届くことはない。
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