middle_1 依頼受諾

 グランフェルデンを出て2日が経っていた。アリエッタから渡された地図を頼りに目的地、クローム村を目指していた。


 クローム村。

 グランフェルデンの北北西側に位置する小さな村で、国の北側を走るヴェンガルド川に面していることから水資源が豊富であり、エリンディルとしては北側の寒い地方ではあるものの、それなりに農業が盛んである。が、逆に言えばその程度の本当に小さな村であり、当然ながら軍隊や冒険者の常駐もない。となれば、何か困ったときには依頼クエストを発行し解決を要請していくものだ。因みに特産はジャガイモだとか。

 ――と、しきりにメガネを光らせながら、チェルナが道中得意げに語っていたことをレンリは思い出す。


 最初は彼女らの(子供じみた)喧嘩の仲裁に入っただけだったのだが、魔術師メイジでエルダナーンの少女アインの勢いに中てられ、半ば強引にギルド入りさせられたことをレンリは思い出した。女の子だらけのパーティであったから、それなりの抵抗もあったのだが……さすがに、放っておくとその辺の道端で力尽きてそうな危うさを看過できるほどレンリも非情ではなく、渋々同意したこともついでに思い出したのはまた別の話。


 村に着いたのはその2日目の昼であった。村の中程にある村長宅で依頼内容を窺う。依頼の内容は単純、村近くの山で最近見つかった洞窟内部の探索だ。クローム村で腕に覚えのある者は乏しく、冒険者資格を持った者も居ないがために今回の依頼クエストを発行したのだと言う。

「その洞窟の中で見つかったものは、報告さえいただければ好きにしてくださって構いません」

 村長を務めているという妙齢の女性(ユコと名乗るヒューリンであった)は、そう告げてくれた。冒険者への依頼の原則として、こういった探索依頼の場合は基本的に探索で発見した物の所有権は冒険者に帰属する。無論、特定の物を取ってきてほしい場合などはそれは依頼者へ渡すこととなるが、他の成果物は冒険者の物である。だが、今回の依頼であればそもそも“何があるか分からない”ため、最終的にいざこざを起こさないためにも村長は言ってくれたのだろう。いくつかの取り決めの確認の後、レンリたち4人は洞窟へと向かった。

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アリアンロッド2E the Amber 三色 @tricolor

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