opening_2
「
昼盛りのグランフェルデン大神殿に、快活な少女の声が響き渡る。声の出所は冒険者の依頼受付所だ。
王城の北西に位置する大神殿は、王国建国のその時より存在する由緒正しき神殿である。いたるところに精緻な彫刻が施されたその壮麗な外装は、王城をはじめ堅牢且つ実用的な造りの多いこの国の建造物の中で、一際その存在を誇示しているといえよう。
そしてその内部に設置されているのが、冒険者に仕事を斡旋する依頼受付所なのだが……。
「さ、さすがにそのようなギルドはですね……」
いきなり受付カウンターに乗り上げてきた
「そっかー、やっぱりないかー」
にははと笑いつつ、声の主はあっさりと引き下がる。肩口まである薄緑の髪をふわりと靡かせながら、受付カウンターから降りた。
「いきなり受付までダッシュして、何を叫んでるのかと思えば……。」
そんな少女の後ろ、眼鏡を光らせ呆れた声をあげる別の少女が一人。朱色のドレススカートの上にレザーアーマーを着込み、片腰にガンベルトを装着している。
「およ?」
「アイン…貴女ねぇ。そっちから冒険者やろうって誘ってきたのに、私のこともう見捨てる気なの?」
「そんなことないよ♪」
アインと呼ばれた少女は、何の悪気もなく答えた。
「だってチェルはあたしの大切な人よ? 仲間外れだなんてとんでもないわ」
両手を組み、エルダナーンの特徴である長い耳を紅く染め、更に身体をクネクネさせるアイン。
「アンタは……」
はぁ、とため息をつき、ずり落ちた伊達メガネを直しながら
「ごめんね、アリエッタ。このバカが急に変なこと言って。」
「い、いえ、大丈夫です、チェルナさん。…ビックリはしましたけど」
「ねえねえ」
「ホンットーにゴメン!アインにはよく言い聞かせておくから、勘弁してね」
「ねえってばー」
「いえ、こういうよく分からない要望は時々ありますので……」
「苦労してんのね、アリエッタも……」
「聞いてよもう!」
完全にスルーされるのはさすがに堪えるのか、アインが二人の間に割って入る。
「あーもー……今度は何よ、アイン」
めんどくさそうに答えるチェルナを無視し、アインは尋ねる。
「アリエッタちゃん。あたしたち二人で行けそうな依頼ってないの?」
「えぇと……」
すぐに依頼をまとめたリストをパラパラとめくりだすアリエッタ。
「すみません、さすがにお二人だけで行けるような依頼はありませんね……」
「だから言ったじゃないの。仲間見つけてギルド組むのが先だってば。」
しゅんと項垂れるアリエッタを見やりつつ、もう何度目だと言外に滲ませながらチェルナは言う。
「だってー」
「だっても何もないっ」
「だってだってだってー」
「えぇい連呼すればいいってもんでもないわっ!」
子供のような言い争いをしている二人……にオロオロしているアリエッタに、声がかけられる。
「どうしたの、アリエッタ?」
「あ、アメノさん!」
現れたのは、先ほど墓参りをしていた少女であった。
***
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