第26話 枯原や湯気あらたかに馬の胴

その年は、「鷹」の年度賞受賞者六名のうち、四名が伊沢惠のもとで俳句を学んだ門下生であった。四人のちからで、なんとか最後に伊沢惠を安心させられたのはせめてもの救いであった。伊沢惠は、四名の受賞の報を待っていたかのように、二〇〇七年一月十日、七十歳の生涯を終えた。申し訳なかった。不甲斐ない弟子であったことが。恩知らずな弟子であったことが。不孝な弟子であったことが。ただ、申し訳ないばかりであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る