第16話 枯原に一本の杭愛うしなふ
「破綻をおそれず枠に収まろうとせず、いろいろ実験することを望んでおく」。私の「準賞」作に対して、藤田湘子はそのように評した。藤田湘子は私に変化することを求めている。冒険することを望んでいる。その期待に応えるにはどうするべきか。発表句を並べて無難に賞を取りにいくよりは、未発表句を十句並べて意欲的に取りに行った方が、藤田湘子は更に喜んでくれるのではないだろうか。そんな気持ちが、私の中に無駄な冒険心を起こさせてしまった。結果は、果たして私の惨敗であった。ほぼ手中に収め掛けていた「鷹新人賞」は、私の指の間をするりと抜け落ち、他の同志のもとへ渡ってしまった。それだけならばまだよかった。この時の私の応募作が、あろうことか藤田湘子の大不興を買う結果となってしまったのだった。私が意欲を見せたいと思って提出した応募作が、藤田湘子の目にはふざけている、権利を放棄していると映ってしまったらしい。これを契機に、私は藤田湘子の身辺から一気に遠ざけられてしまうこととなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます