第15話 枯原やわれを出でざるわが言葉

新人賞は応募制であった。年間の「鷹」掲載句より五句から十句、未発表句より五句から十句を組み合わせ、計十五句にして提出することになっていた。私の場合、当然掲載句から十句、未発表句から五句という組み合わせが最も手堅い方法であった。しかし、私は敢えてその方法を取らず、全くの逆、掲載句五句、未発表句十句という組み合わせで賞を取りに行くことにした。そうしたのには、いくつかの理由がある。第一に、安全に取りに行くのは「新人賞」という名称にふさわしくないと思っていたからだ。「新人賞」というからには、若々しく火花を散らした戦いの中で、正々堂々と勝負して賞を獲得したいという意識があった。そしてもう一つは、「新人賞準賞」の際に藤田湘子から与えられた言葉が、頭の中に強く残っていたためだ。

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