第5話 地をすこし浮き上がりたる枯野かな
藤田湘子が、私の印象ではいつもかりかりと怒っている一方で、伊沢惠はいつも穏やかでにこにこしていた。句会の後の懇親会では、酒を飲めない体質なのにも関わらず、大きな声で周りの酔人と渡り合っていた。偶然、伊沢惠の孫娘と私とが同じ歳だったこともあり、私を孫だと言って何かと目を掛けてくれた。私は藤田湘子を敬して遠ざける一方で、伊沢惠に次第に心を開いて行った。藤田湘子の前では緊張で表情が強張る私も、伊沢惠の前では気楽によく喋った。藤田湘子にとっては、それが多少は癪に障ったのかも知れない。あいつは俺になつかない。後に、藤田湘子が私のことを指して伊沢惠にそう漏らしたことがあったと、伊沢惠本人から聞いたことがある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます