第6話 いちめんの枯野や嘘のなかりけり
藤田湘子は私の本名があまり好きではなかった。「鷹」に入会してから一年間は、私は本名で投句していたが、その間に何度か俳号を付けるよう勧められた。藤田湘子に言わせれば、私の本名は戦国時代の地方の小城の城主のような名前、だったらしい。私は藤田湘子の師系に倣い、名前の終りに「子」が付く俳号をいくつか考えて藤田湘子に見せた。それらのいずれを見ても、古い、と言って藤田湘子は首を横に振った。あれこれ思案しているうちに、一九九九年も暮れになった。十二月のある寒い夜のこと、自宅の部屋で一人机に向かっていた私の脳裏に、ふとある考えが閃いた。これならいけるかも知れない。たちまちに私は確信に近い期待を心に抱いた。
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