第3話 枯原を黒眼おほきくして歩む

藤田湘子の指導方針は常に一貫していて具体的だった。神社仏閣を詠むな、比喩を用いるな、二物衝撃を意識せよ。「鷹」入会後間もなく藤田湘子の指導句会に出席するようになった私は、藤田湘子のそれらの教えを一言一句余さず吸収したいという気持ちで、毎月新橋の句会場に足を運んでいた。藤田湘子は句会ではいつも怒っていた。門弟の不甲斐ない作品には、怒りに任せて声を荒げることも稀ではなかった。私はいつ自分の作品が標的にされて激しく罵倒されるかと、いつも冷や汗を流していた。藤田湘子は私にとって、とても親しみを感じられる師ではなかった。いつでも恐ろしい、近寄り難い厳父であった。

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