長雨

ひぐらしが旅立つ百万年

潮騒が真似る小豆の

今はまみえぬその色も

いずれは待たれる夢に似て

風鈴が唱える念仏に

風が連れて帰るだろう

匿う雨の玉響に

黄金に鳴いた玉の花

星の涙の水たまり

王冠とダイヤがよく似合う

それはいつかの川の光

明日が許した夕焼けが

見初めた緑の黒髪で

しとど稲穂がこうべたる

黄昏が実になり頬を染め

白無垢の雲を映えさせる

天才の理論を束ねた刹那には

幾星霜が愛おしい

ビードロを歪ます長雨は

境を静かに解き放つ

ただひと時の逢瀬のために

坂に集う人々の

声を隠して沈めては

聞かす坊主の念仏に

揺れる線香の煙を辿り

ようやくまみえる幽明に

待たれた夢はふと叶う

長雨が晴れたその時は

風が連れて帰るだろう

枯れの賑わい生まれて萌ゆる

今はまみえぬその色も

いずれは待たれる夢に似て

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