第35章 拠点『ツクヨミ』
一行は、これからの道中で必要な、携帯食、水、携帯医療用具等を補給してから、準備を整え、希が最後にココの火の元、水道のチェックをし、裏口と玄関の鍵をかけてから、アラヤドタワーに出発した。
テンニャン「厳重アルね」
希「ここは、オレの店だ。これからどうなる事になっても、終わったらココに帰ってこようと思う。それに戸締まりはココにいたときの日課だったし、別に特別な事ではないよ」
***
(某月某日 午後1:10 アラヤド公園)
一行は、特に呼び止められる事無く、地上部分が“ツインタワー”となっている目的地“アラヤドタワー”の隣にある公園“アラヤド公園”に到着した。
アラヤド地下街での“対テロリスト対策”は収束した事になっており、警察とガーディアンフェザーによる騒ぎの沈静化も徹底していたので、希達が地下街にいた時間~お昼休みまでには、いつもの平穏な街に戻っていたのである。
希「凄い事態解決能力だな。向こうにも理由があるにせよ、こういう所はガーディアンフェザーに感謝しないといけない。こうやって問題無くここまで来られた」
テンニャン「でも、なんで、公園アルか? タワーは目の前アルよ?」
そこで黒崎と蛭子が活躍するのである。
黒崎「テンニャン、残念ながら、アソコの正面ゲートから入るわけには、流石にいかない。一応アソコは“庁舎”であり、事態が収束していても、ゲートのチェックは通常通り厳しく、すぐにガーディアンフェザーへ連絡される」
蛭子「希のお母さんが“待っている”って書いた暗号通りなら、あそこのゲートの先の場所であるはずがないのよ」
そして黒崎は、公園の端にある、地下鉄の入り口を指さした。
黒崎「チェックもなく、一般の人が気軽に入れるのはアラヤドタワーの地下街、所謂ショッピングエリアだ。無論タワー内部に入るゲートは同じくチェックが厳しいから、常識的に地下街での待ち合わせとなるだろう」
そこへ、帽子を深くかぶり、紙袋を持った、風貌がちょっと汚い新聞を読んでいたおじさんが、ふらふらっと希の所に近づいてきて、小声で話しかけた。
希「な、なんですか…」
おじさん「地下街B1Fにある洋服店“STAR”で、店主に『ツクヨミの服を試着したい』と言え」
そう伝えると、おじさんはふらふらっとベンチに戻っていって、新聞をまた読み始めた。
黒崎「…どうやら組織のメッセンジャーだな。おじさんにこれ以上接触すれば、我々もおじさんも危険になる。黙って地下街に降りて、その店へ向かおう」
流石に希も、こういうシチュエーションは初めてなので、面食らったが、慣れている黒崎と蛭子の誘導により、希自身も立ち寄った事のある、“アラヤドタワー地下街”に向かうことにした。
(某月某日 午後1:15 アラヤドタワー地下街B1F)
ガヤガヤ… ざわざわ…
地下街は地下鉄や在来線の改札にも隣接しているため、とても賑やかだった。一行は、おじさんに伝えられた洋服店“STAR”を探していた。
希「俺たちが、その“場所”に行くわけだから、こう、あんまり盛況でなく、ひっそりしているはずだよね、やっぱり…」
だが、希の予想は外れていた。
黒崎「あれ・・・・か?」
女の子「やっぱ、このキャミじゃないとダメだよねー♪」
女の子「ねえねえ、このコーデ、どうかな?」
確かにお店の看板に、“ファッションブランド STAR”
と書かれている。しかも、大盛況である。
希「こ・・・ここでいいのか・・・母さん・・・・」
蛭子「そうよ! 『木を隠すなら森』よ。人だかりの方が隠しやすい…んだと思う…たぶん…」
リキュール「お母さん、大胆ね…」
黒崎「詮索しても仕方ない。とりあえず店が女性向けだから、ここは“カップル”作戦でいく。先頭を希とテンニャンにして、二人をカップル、残りはダチ、これで行く」
テンニャン「やったアル♪ 思わぬボーナスアル♪」
希「すまん、ぬこみん、ここは許してくれ…」
そういうと、先頭を腕をカップルつなぎした希とテンニャン、他は◇形で、黒崎、蛭子、スイート、リキュールが後ろを歩いて、店に入っていった。
女の子「うわー、可愛い彼女。チューカな感じぃ?」
女の子「隣のマスターみたいなカレシもイイカンジじゃない?」
女の子「後ろのイケメンと黒服も、なんかイケてるし、これ、ギョーカイの人達なのかな?」
女の子「あのバーテンの女性も、素敵…」
女の子「えー、でも、おばさん付きだよ~。たぶん、家族で来たんだよ~。それより、この服どうかな~?」
蛭子はプルプル震えて、こらえていた。
蛭子「ぬぉぉぉ・・・・・・」
黒崎「蛭子、耐えろ、ここで騒ぎを起こしたら、元も子もない…」
蛭子「こ・・・・この店の服で・・・・見返してやる・・・・」
そうこうして、希とテンニャンは、店の奥のカウンターに座っている店の女性店主に話しかけた。
希「『ツクヨミの服を試着したい』」
店主は一瞬目線を細めて希を見たが、すぐに笑顔に戻り、営業トークに変わった。
店主「それでは店の奥にどうぞ♪」
一行は店の奥、所謂バックヤードに通された。
待機店員「マスター? どうしたんですか?」
店主「お客さんが、倉庫管轄の服をご所望だから、直接見てもらいたいから、特別に通したの。ちょっとだけ席を外すから、店の方、お願いね」
待機店員「わかりました~♪」
希達と店主は、店の奥の扉を開け、倉庫に入っていった。
希「な・・・なんか・・・スパイ映画そのものだなぁ・・・・・」
黒崎「確かに、木を隠すなら森、だな。灯台もと暗し、というか…」
店主は倉庫の奥の目立たない外観の施錠された“クローゼット”の鍵を開け、扉をスライドさせた。
中には“地下へ通じる階段”だけがあった。
店主「案内する。ついてきて」
カンカンカン…
***
(某月某日 午後1:25 アラヤドタワー地下街B2F 隠し通路)
店主「ここは外部から通じていない通路。我々関係者だけが入れるエリアだ」
黒崎「ガーディアンフェザーに流石に見つかるはずだが…」
店主「周りに防音と衝撃吸収素材を敷き詰め、B2Fの店のエリアに隣接しながら通路を作ってある。ガーディアンフェザーでも、店にはやたらに干渉できない慣習がある。大丈夫だ」
そうこうしているうちに、奥の“扉”まで到着した。
店主「鍵はかかってない。ここは、希さん、あなたが最初に開けた方がいい」
希には何となく意味がわかった。なので、扉のノブに手をかけ、そして扉を開けた。
***
(某月某日 午後1:30 アラヤドタワー地下街B2F 拠点『ツクヨミ』)
ガチャ
目の前に立っていた男性と、椅子に座って待っていた女性は、希が一番逢いたかった二人だった。
希「母さん・・・・・・父さん・・・・・・」
一 文恵(以降、文恵)「望! 待ってたわ!」
一 門司(以降、門司)「良く来たぞ! 立派だ!」
希「うわぁぁあぁあああ」
ガシッ!!!!
ようやっと、ようやっとの、親子の抱擁である…。
テンニャン「私、こういうの弱いアル…」
蛭子「えぐっ、こういうの、いいよね…」
黒崎「ふぅ、やっと到着ですよ、文恵さん…」
リキュール「マスター、良かったね♪」
スイート「親子の絆、大事な物だよな、マスター」
そして、しばしの抱擁の後、中身はこれからの事となる。
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