第23章 軌道エレベーター
(某月某日 午前4:00 月光タワー・12F 軌道エレベーター入り口)
医務室から長い階段を上った先にあったのは、厳重なドアだった。無論、ココを通ってきた蛭子のメンバーカードで難なく開いたので、一行はその先に躍り出た。
そこは、円形の広い部屋で右横に操作パネル、そして中央に周囲が透明の強化プラスティック製の壁に包まれた、円柱のエレベーターが、ドアを閉めた状態で止まっていた。
蛭子「これが、1F~12F迄のムーンライトフロアと、101F~120F、つまりここから見るならてっぺんとなる、デイライトフロア側のエントランス迄、その間である12Fと101Fを繋ぐ、軌道エレベーターよ。私も一番に、てっぺんのエントランスに到着して、これでここに来たの」
黒崎「順番から言うなら、蛭子の次の便で与一が来て、これまで刺客に逢ってなく、ここにエレベーターが来ているなら、次の刺客がいるのは、101F以上のフロアとなるな」
スイート「いずれにせよ、次の刺客が乗る前に、こちらが乗り込んで101Fに到着するべきだな」
そういうと蛭子が、メンバーカードで操作パネルを起動して操作し、エレベーターのドアを開けた。
希「ぬこみん・・・・ステロイド・・・・ここまで来たかっただろうな・・・・」
黒崎「希、いくぞ、今は前を見るんだ」
希「あ、ああ、すまん」
一行が全員エレベーターに乗り込むと、軌道エレベーター内部の操作パネルを蛭子が操作しドアを締めた。その瞬間、体がふわっと浮く感触があり、その後、エレベーターは周りの外周エリアが残像になるほどのスピードで上昇していった。
蛭子「この12F~101Fの間はね、ムーンライトエリアとデイライトエリアの境界エリアなの。外周エリアのフロア内は、世界を制御する集積装置で埋め尽くされていて、基本的に立ち入り禁止で、外周の壁は超硬質の金属で覆われていてこちら側からの侵入は不可」
黒崎「だから、俺たちも中がどうなっているのか、詳しくは知らないし、このエレベーター空間内での戦闘など不可能だから、ここまで来れば、ある意味、101Fまでは安全のはずだ」
だが、世の中そうは巧く行かないものなのだ。このような“前例の無い場所で攻撃を仕掛けてくる”事に長けているガンナーは居たのである。
***
ちょうど、操作パネルが50Fを指したときに、事は起こった。エレベーターがゆっくりと停止していき、止まった瞬間、操作パネルに、
“予期せぬ異常により緊急停止”
と表示されたのだった。
蛭子「なに!? こんな所で攻撃を仕掛けて来られるガンナーがいるはずg」
黒崎「・・・・・・・・すまん、盲点だった。一人いた」
???「ぎゃーーーーーーはっはっはっ!!!! ちゃんとガンナー名簿くらい、調べておくべきだと思うぞ!」
その声の主は止まったエレベーターを白いワイヤーで包んでいる6機の“小さい蜘蛛型ワイヤー銃(デイライトガン「子蜘蛛」)”の中央、軌道エレベーターのドアの向こうの正面に、外周エリアにやはり白いワイヤーを張り巡らせて、“大型の蜘蛛形ワイヤー銃(デイライトガン「土蜘蛛」)“を構えて待ち構えている、ニヤニヤ笑っている男だった。
八握「蛭子と黒崎以外には、お初だな。俺は特殊戦術部門チーフの、八握 脛(やつか はぎ)だ。お見知りおきを。とりあえず、与一の情報通り、ここでワイヤー張って待っていたら、しっかり捕まえられて、何よりだ」
蛭子「忘れていた・・・・。だが、まさかこんな特殊環境で攻撃を仕掛けてきた前例は流石に無かったから、油断していた」
八握「だから、ある意味、GF十字勲章扱いの攻撃なんじゃねーの。それにこういうのがおれの部門の管轄仕事なんでな。悪く思うな」
希「思うよ。おめー、このエレベーターはお前達にも大切なものなんじゃねーの!?」
だが、八握は意外なほど自信満々で、希の方をちゃんと向いて答えた。
八握「旧式だったっけか? 安心しな。俺のワイヤーは傷1つ付けずに対象物を固定出来る。所謂、蜘蛛の糸だ。軽い粘着性のワイヤーで先も真空吸着式の吸盤だ。だから俺もこの土蜘蛛と、俺が操る子蜘蛛のワイヤーで安全にここに体を固定出来るって事だ。って、ここまで聞くと、どうやっておめーらを片付けるのか、不思議だろ? あ?」
希「だから、知りたい。今後の事も含めて」
八握は更に自信満々になって、はなたーかだかになって、更に言葉を走らせた。
八握「ぎゃぁーーーはっはっ! 蜘蛛の糸ってのはな、最強の糸なんだよ。相手を固定する時は傷をつけねーけどな、“締め付ける”となると、切れない糸に変貌するんだよ。な!? こえーだろ?」
希はとにかく、この自信過剰の輩から、聞ける情報を全て聞きだそうとした。当然、パンドリオンも聞いているからだ。
希「ああ、こえーな。だが、エレベーターは壊さない、だが、俺たちは始末する。どうやるんだよ?」
八握は最上級の高笑いと共に、最高にハイな状態で、最後の言葉を発した。
八握「こうやるんだよ!」
シュルシュル!
なんと、八握の操っている6機の子蜘蛛の銃口から白いワイヤーが伸び、エレベーターの小さい換気口の外から侵入し、内部に入ってきた!
八握「俺のメインは特殊環境下での仕事だ。こういうのはお手の物だ」
希「ああ、凄いな。情報感謝する。で、パンドリオン、なんか言い知恵あるか?」
パンドリオン「そうだな、ちょっと考えるか。ここから向こうへ撃てる侵入口は奴の情報通り、換気口だけ。エレベーターの破損は不可。ふーむ…」
さて、希とパンドリオンは、どうするのだろうか?
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