第22章 仲間との別れ

(某月某日 午前3:30 月光タワー・11F 医務室)


 傷ついた仲間を背負って、一行は11Fの医務室に到達した。当然だが薬などを勝手に持ち出せないように、扉はロックされていたが、蛭子のメンバーカードで開けられた。それだけガーディアンフェザーの権限は大きいと言うことだ。


 ドアが施錠されていたわけなので、当然ガーディアンフェザーの刺客などは潜伏していなかった。なので、安心して医療行為に移れた。医師と看護師以外は基本24時間対応できる様に、医療装置や薬などは、いつでも使える様になっていた。


***


 黒崎は左肩を撃ち抜かれただけだったので、止血、消毒、油紙、包帯だけでとりあえず動けたのだが、正直、ぬこみんは重傷だった。撃ち抜かれた後、棚から転落した時のダメージが大きかったのだ。あれから45分経っているが、まだ気絶したままだった。


 蛭子とリキュールとステロイドの処置により、撃ち抜かれた右肩の止血、消毒、油紙、包帯の処理は黒崎と同じで、それは大丈夫だったが、全身の打ち身により、見る限りで2カ所の骨折、ねんざ、また、出血はしてなかったのだが、頭部のダメージもある。湿布薬を貼り、包帯を巻き、とりあえず医務室のベッドに寝かせてあるが、気絶状態はまだ継続していた。


 やむなく、酸素マスクをし、酸素を供給した状態で、とにかく意識が戻るのを待つことにした。


蛭子「・・・・・・すまない・・・・力不足で・・・・」

黒崎「それは、ここの全員が同じ気持ちだ。口に出さない方が良い」

蛭子「ごめんね・・・」


 希はわなわなと震える体で、握り拳を作って、思いっきり医務室の壁を殴りつけた。


 ボグン!


希「くそ・・・・・くそ・・・・・」

リキュール「希・・・自分を責めちゃだめだよ?」

希「わかってる・・・だが・・・・なんでこんな事に・・・・」

黒崎「与一のケースは運が悪かったとも言える。奴の好条件が揃いすぎた」


 少し間を置いて、蛭子が申し訳なさそうに、付け加えた。


蛭子「更に追い打ちで悪いんだけど、与一とは違うタイプの、更にヤバイ連中が、ガーディアンフェザーから刺客として放たれている。正直、ここにずっといるわけには」


 ガン!


 希はまた拳で壁を殴りつけた。


希「俺は・・・・ここで・・・ぬこみんを看病しているぞ・・・・反対は認めない」

黒崎「いや、それはダメだ。お前のパンドリオンの戦力は、さっきでよくわかった。奴らのデータベースにも登録されてなく、更に悔しいが最強だ。我々の主戦力を、ここで欠くわけにはいかない」


 希は傷を負った黒崎の胸ぐらを掴もうとして、流石にやめた。そして、もう1回壁を殴りつけた。


 ズガン!


希「・・・・・誰がここに残る・・・・・」


 10秒の沈黙が流れた後、ステロイドが挙手した。


ステロイド「俺が残る。ある程度の医療行為なら出来るし、防衛火力もある。力もあるし、意識が戻ったら、担いで下に降りて、車で店に戻る。後は、こちらで何とかする」


蛭子「お前らの店、没収されたんじゃなかったか?」


 するとステロイドが蛭子に、操作済みのスマホの画面を見せた。店と備品全てを買い戻した手続き画面だった。


ステロイド「さっきのサヴァイバリングの報酬の一部で、没収されたモノ、全部買い戻せた」


 そのスマホを持つ手を、希が包んで握った。


希「ステロイド・・・済まない・・・キミにも色々ガーディアンフェザーにはあったはず。それは俺が奴らに会ったときに、全部ぶつける事にする」

ステロイド「ああ、頼む」

希「ぬこみんを・・・・・・・・頼む!」

ステロイド「任せておけ。ぬこみんが気づいたら、スマホで連絡する。戦闘第一、連絡第二で、マスターの道を・・・・進んで欲しい!」

希「ああ、ありがとう」


 そういうと、持ち物に薬や包帯を加えて、一行は、上の階に進むことにした。


進行組:希、黒崎、蛭子、リキュール、スイート、テンニャン

待機組:重傷のぬこみん、看病のステロイド

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