第9章 リキュールの過去
結局、帰宅後、サヴァイバリングでの“ぬこみんの足の怪我”の件をリキュール達に相談した結果、治るまで、ぬこみんは静養、両営業時間のウェイトレスはリキュールが担当し、リキュールのお酒関係は、多少おっさんへ客層が変わるが、ステロイドが担当する事になった。
希に関しては、ぬこみんの事が心配だろうが、3Fにいるわけだから、スタッフが交代で世話をする事にして、カフェタイムのマスターを継続して担当して貰う事になった。
その夜は遅くまで希はぬこみんの世話をしていたが、次の日の朝のカフェでは、しっかりマスターとして店に出ていた。ぬこみんからも、
“仕事はしっかりやるように“
と釘を刺されたようだった。
***
(ムーンライト居住エリア内 カフェバー『vona(ヴォーナ)』 カフェ営業時間)
希「へぇ~、リキュールのウェイトレスも、なかなか様になってるね」
リキュール「お世辞言っても、何も出ないよ」
希「いやいや、ってか、前にやってことあるでしょ?」
リキュール「わかるのか?」
希「前職の感って奴だよ」
カチャ
希は自分ブレンドのホットコーヒーをカウンター席に座っているリキュールの前に置いた。1杯奢ってくれるようだ。
リキュールはコーヒーを一口飲むと、遠い目をしながら、昔話を語り出した。ちょうど店も客もいなくて暇だった事もある。
***
リキュール「このカフェバーね、昔は私と初代マスターとステロイドと他2,3人のスタッフでやっていたの。勿論、みんな“デイライト”から堕とされた連中ばかり…」
希「? ぬこみん達が初代じゃないのか?」
リキュール「そ。ぬこみんとスイートはずっと後。テンニャンは少し後に“補充”で黒服が連れてきたの。ステロイドだけは初代」
希「あれ? もしかして、その時代の“ウェイトレス”が・・・・キミなの?」
リキュール「ご名答! 私はバーテンスタートじゃなかったの。最初はウェイトレスから。だから、初代マスター・・・・“あの人”と営業時間は、ずっと一緒だった」
希は?だった。自分はカフェタイムがメインで、バータイムのコーヒーは勉強用のおまけだったからだ。
リキュール「昔のここはね。夜遅くまでじゃなくて、カフェの後、仕込んで、そして、バータイムもカフェを定常で出していたの」
希「俺も…まだまだ修行が足らんな…」
リキュール「いえ、今のココみたいな深夜営業はしなくて、夜10:30にラストーオーダーだったから。今は両営業時間フルタイムでカフェもやるのは、流石に無理ね」
希はここで、何気なくリキュールが喋った、“あの人”、のフレーズを思い出した。もしかしたら…。
希「込み入ったことを訊くようで申し訳ないが、その、『初代マスター=あの人』って事は・・・・・要するに・・・・・」
リキュール「そ。カレが私の、『唯一のカレシ』、だったヒト・・・・・」
希は少し済まない事を訊いたと後悔した。カレは初代だ。黒服のシステムがあって、現在、俺がここのマスターをやっている、ということは、今、そのカレシは・・・・。
リキュール「そう・・・・あのとき・・・・私のムーンライトガンの腕がもっとあれば・・・・助けられた・・・・。やられちゃったの、カレ。ダークネスに。今はダークネスに落ちてしまって、もう、所在はわからないの・・・・・」
希「・・・・すまない・・・・」
リキュール「いいの。もう、あの悲しみは忘れたから。でも、カレの死を確認してないから、私はカレシを作らないの」
希「・・・・・・・」
リキュール「カレとお別れした後、私は必死でガンナーの熟練度を上げ、サヴァイバリングを死ぬ気でこなし、もう数え切れないほどのダークネスを打ち倒し・・・。熟練度約200万まで行っても、それでも貴方の1個前のマスターを、助けられなかった…」
そういうと、リキュールはルシフェリオンをホルスターから抜き取ると、カウンター席に置いた。
リキュール「それでも、みんなで、守るよ、あんたのこと。この最高レベルのムーンライトガン“ルシフェリオン”にかけて! だから、あなたも、今のLevel2の真紅の銃“ベリッサ”で更に腕を磨いてね」
希「ありがとう・・・この銃はぬこみんと共に勝ち取った銃だ。頑張るよ、俺」
リキュールとの“絆”が更に深まった、そんな気がした昼下がりだった。
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