寝待

おはようございます。今日の月の出は一九時二七分。


早めの湯を浴びたあと、気持ちの良い夜風に吹かれた私は、少しの間うたた寝をしてしまいました。湯冷めしないよう浴衣の上に羽織を着ると、芯に籠もった熱が巡ったような気がして、なんだかいつもより温かくなりました。


ころん。下駄を履いて庭に出ると、夏の星座が足早に西の空へと逃げてゆくのが見えます。東の空には昇り始めた秋の星座。目立つ星の少ない秋。ちらちらと光る星明りは、月に負けないように懸命に瞬いているようで、とても健気に思えます。


家の裏手の道へ出てみました。見慣れた表通りとは違い、寂れた空気が郷愁を募ります。するとそんな私の寂しさに気付いたのか、どこからともなく艶やかな黒い毛の猫が擦り寄ってきました。寝転がって喉を鳴らす姿に、思わずくすりと笑ってしまいます。屈んで撫でたときに伝わる少し高めの体温が気持ちよくて、いつまでもこうしていたいくらい。けれど黒猫は気紛れに、にゃん、と鳴いて闇の中へ。


今日の月の入りは九時二〇分。気ままな猫のように、私も眠ることにいたします。

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