十六夜
おはようございます。今日の月の出は十七時三十九分。
夜の帳が緩やかに下りて、静かな夜の始まりを告げました。今夜は十六夜ですね。今までと反対側に欠けた月が、昨日より少し遅くになってから顔を出しました。
夜風に乗って流れる金木犀の香りは甘く、さらさらとした秋特有の風と、そよぐ草木の音だけが夜を包んでいます。
古い家屋が連なり、少し上り坂になった道を歩くと心も弾みます。頭上から照らす月明かりが足下に落とす小さな私の影が、私の足取りに合わせてちょこちょこと舞踊を披露したように見えました。観客は月と夜の風、そして秋の花。私だけの舞台はこの先にある丘。
辿り着き開けた視界の先に、細やかな明かりを湛えた街が見えました。静かに眠る街のうねるような胎動は、まるで明日を夢見ているかのようです。街全体がひとつの有機的な繋がりを持ち、そこに住む人たちは血管内を流れる血球そのものです。
今日の月の入りは六時二十七分。おやすみなさい、今宵も胎動する街の中で。
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