十三夜
おはようございます。今日の月の出は十六時十一分。
誰かに呼ばれた気がして、初めての道に迷い込んでみました。街灯の心細い明かりを頼りに目を凝らすとそこには白い猫。あの子が私をここに導いたのでしょうか。
周りの家々からはそれぞれの明かり。微かに風に乗る夕餉の香りは幸せの色をしています。脇を通ると団欒の声が聞こえ、そこに生活する人たちの幸せを垣間見ることができました。私と同じ時を生きる、交わることのない人たち。それでも今ここで感じた生の脈動は、一人でないと思えるものでした。
ともあれ、路地裏の屋根と電線で切り取られた空は狭く、少し窮屈です。そこから見える月が、まるで網となった電線に捕らわれているように見えて、私は路地を抜けて開けた場所を探すのでした。すると外し忘れた風鈴の澄んだ金属のような音が、微かな風に乗って私の耳に届いた気がしました。さようなら、白い猫さん。またいつか素敵な月夜にお会いしましょう。
今日の月の入りは三時二十四分。おやすみなさい。
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