弓張 上弦

おはようございます。今日の月の出は十三時五分。


太陽がとても眩しいですね。寝起きの目にはすこし刺激が強いほどです。意を決して空を見上げるとそこには、数日前より丸くなった月が浮かんでいました。秋色に澄んだ空に薄く白く浮かぶ姿は儚げですが、きっと数日後には真ん丸になって夜の闇を照らしてくれることでしょう。


月が高く昇ってくる頃、私は深まった夕闇の街へと出掛けます。今宵はどんな出会いがあるのでしょう。空には弓に張った弦の月。無機質ながらも冷たさと温かさが混ざり合った月明かりは、散歩している犬にも、帰宅を急ぐ人にも、談笑する学生たちにも、同じ早さでついてゆきます。少しの駆け足にだって、ほら。


いつもとほんの少し違う速さで視界を流れる街並みは、私の心を高揚させるには十分すぎるほどでした。この足取りなら、もっともっと遠くへだって行けそう。


今日の月の入りは二十三時四分。日付が変わる少し前。西の空に沈む月をずっとずっと見送ってから、今宵の私は眠るのです。おやすみなさい。

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