第12話 極楽極楽

私は今 家にいる 当然一人で …

学校から家に戻ると陽は暮れていた

「...私にゃ部活は向いてないね」

玄関のノブを掴みながら、一つ溜息をついた

ふぅ…

途端に一日の疲れが全身を打った

下半身が一気になくなったかのような

基から無かったもののように 私は感じた


おかえりー


奥から声が聞こえた

何やら母がもう帰っているようだ

サンダルと帽子を玄関にしまい

習慣的に母のもとへと向かう

私の心情としてはこのまま何もすることなく

誰とも話すこともなく、布団を敷いて眠りたい気分だったが

母のもとへ。腐っても肉親

私の心境を察してとっかかりなく風呂場へ直行させてくれるはずだ…


とんとんとん

「おかえりなさい」

げっ

「うん、ただいま ‥‥もう寝るね」

「・・・んー」とんとんとん


あら 包丁と俎板まないたで返事してくれるとは 良い返しじゃないか

力の要らない返事としてはさすが我が母というべきか


こういうときは風呂に入ることさえ億劫おっくうなんだ

あぁ 帰りたい…あ 家か

季節はずれのお湯に浸る私は自然的に上を向いた

浴槽の窮屈さがそうさせるのか

湯気のゆくすえが気になりそう動くのか

とかく 人は湯船に入ると上を向いてしまうようプログラムされている…と思う

あの神に あの神にだ

ほぅ 自分の息にさえむせ返るこの空気 私は好きだ

「今日は 疲れたなぁ…」


床の支度をするまでもなくここで私の今日はおしまいだ……くぅ…

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